各ライターの「仕事ぶり」だけでなく、「人となり」をご覧いただく【海外ライターに12の質問】。
第3回は、南アフリカ共和国在住のバンベニ桃さんの登場です。ケープタウンなどの大都会ではなく、トランスカイ地方にある「村」に住む彼女。さてさて、どんな暮らしぶりなのでしょうか。
1 これまでの略歴を教えてください。
私は人生で3年弱に渡り世界を放浪した経験があります。最後に陸路でアフリカを目指す旅を決行したのは2006年。45リットルのバックパックに最低限の洋服と画材、そしてカメラを詰め込んで、ユーラシア大陸横断、アフリカ大陸東西南北とヒッチハイクと民泊で駆け巡りました。その時に肌で感じたこの美しい地球と、そこで生きる多種多様な暮らしをしている人々に、それまでの価値観を一気に覆されました。それからは自分の目で見たものを、人に伝えていきたいとノンフィクションライターとして活動しています。旅する前は広告デザイン事務所でデザイナー兼コピーライターをしておりました。専門学校では写真を学んでいます。
現在は旅の末、たどり着いた南アフリカのトランスカイ地方で、なるべく自給する暮らし、ゴミのでない暮らし、工夫を凝らして作り出す暮らし、リサイクルをする暮らしなど、シンプルで地球と循環できる暮らしを目指し実践中、またその暮らしをウェブマガジンや自身のブログで発信中です。
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2 Youは何しにその国に?
当時は旅の途中で、アフリカを縦横無尽に駆け抜けた後、南アフリカで旅の資金を少し稼いでから、インドに飛ぼうと考えていました。そしてケープタウンに少しの間、滞在をすることにしました。
その時に頼りにしていたバンクカードの期限が知らぬ間に切れ、20ランド(当時200円程)しかポケットに入ってないというトラブルに見舞われ、飛び込みで雇ってもらったシーフードレストランでウェイターをしながら働きました。そして休暇をもらって南ア最大のアートフェスティバルへ行き、革製品を作る今の夫と出会います。
アパルトヘイト(人種隔離制度)の色濃く残った混乱の最中にあるケープタウン。アフリカの旅を終えたばかりの私は、当時どうしても受け入れ方がわからずにいました。そして私はバックパックに荷物をまとめ、ケープタウンを出て、トランスカイへ移る決心をし、彼の元で革製品作りや自然素材で作るアクセサリーを学びます。
ここトランスカイは有名なネルソン・マンデラや全大統領ダボン・ベーキなどの出身地で、旧独立国です。そのためアパルトヘイト時代に他の地域では文化が剥奪されますが、この地は今でもコサ族の文化が残っています。2010年の結婚を機にウムタタという町に移住、今は二児を授かり、「子育て」というよりも「親育て」だなぁと痛感する毎日です。
3 ライターの仕事を始めたきっかけは?
コピーライターとして働いていたので文字を書くことは好きでした。本格的に今の形でライターとして仕事を始めたきっかけをくれたのは、10年前の3年弱に渡る旅です。旅の末、日本では得ることのできなかった価値観や、考え、そして私たち現代人が忘れかけている日本人の大切な文化や、アフリカの文化を通じて日本人へ伝えたいメッセージなどが心にふつふつと湧き上がるようになりました。そこから私の暮らしやメッセージを寄稿したり、またおもしろい社会貢献をしている人や、偉業を成し遂げた人、芸術家、工夫を凝らした自給自足の暮らしをしている人などにインタビューをしてウェブマガジンに寄稿しています。そのメッセージにはシンプルな暮らしの良さや、冒険の楽しさ、マイノリティの目線、工夫する暮らしの面白さ、外から見た日本などを散りばめています。
4 ライター以外の仕事はしていますか? それはどんな?
私の暮らしは「シンプルな暮らし」という柱の上に立っています。その活動の中にもちろんライターも含まれていますが、自然素材を使ったアクセサリー作りというものがあります。南アフリカの自然や街路樹から採った種や木の実、自分で食べたアボカドの種やビワの種やオリーブの種などの素材を使って、アクセサリーやキーホルダーを製作し、日本のフェアトレードやオーガニックのものを扱うお店や、マクロビ料理のレストラン、アフリカ雑貨を扱うお店など、縁のあったお店に不定期で置かせていただいております。
またトランスカイ地方で取れたコサ族に伝わる天然のお香「ンペポ」という浄化作用のあるスピリチュアルなお香を収穫、花と葉を手作業で摘み、日本と南アで販売しています。夫の祖父が伝統薬剤師だったことから、夫は伝統薬草に詳しく、私もその知識を学ぶチャンスがあります。このンペポというお香はその中でも私が一番気に入って使っている草です。
伝統薬草でもあり、リラックス効果、抗うつ作用、クリスタル浄化、空間浄化(空気の殺菌作用)もあり、日本でも徐々に広まっていっています。
日本へ帰国の時はトークライブなどをさせていただき、アフリカでのシンプルな暮らしをお話しさせてもらっています。
5 世界一好きな場所はどこですか?
これはとっても難しい質問ですが、「好き=居心地」を選ぶなら自分でDIYでリフォームしている我が家だと思います。
また旅の中で心を打たれた美しい場所の一つにサハラ砂漠があります。モーリタニアを旅していた時、出逢った遊牧民のガイドの友達と共に、6日間で120km、サハラ砂漠を歩きました。砂丘と砂丘の間をひたすら歩くのですが、砂丘は刻一刻と形を変えていて、その砂紋がサラサラと動く様子などがとても美しいのです。
夜は砂丘の上に寝袋をポンっと置いただけ。夜中に目を覚ました時、目の前に広がる星屑に吸い込まれそうになりました。あの6日間は夢のようで、今も思い出すとなんだかとても不思議な気持ちになります。
6 いちばん好きな小説はなんですか?
星野道夫の「旅する木」。彼のアラスカで暮らし、出会う人々や、動物のことを彼の独特の鋭い観察力と、自然への愛、静かで美しい言葉の選び方がとても好きです。
7 会ってみたい人は誰ですか?
私の哲学や思考はレゲエミュージックからもとても影響を受けています。世界的に有名なボブ・マーレィやピーター・トッシュはもう亡くなってしまっていますが、もし叶うのならボブ・マーレィ&ウェイラーズ(ピーター・トッシュもバンドの一人です)のライブを見て、彼らの哲学や知識を語って欲しいと思います。
8 趣味や余暇の過ごし方を教えてください。
「趣味」「家事」「仕事」にあまり境がない暮らしです。ライターのお仕事にしても、アクセサリー作りにしても、趣味にしても、家事にしても、子育てにしても、クリエイティブに工夫を凝らして楽しみながらしています。
家庭菜園で、コサ農法と自然農法を合わせた野菜作り。南アフリカは多肉植物が自生しているので、自然の中で見つけたものを、ちょっとだけ頂いて我が家に移植したりと、ガーデニングも楽しんでいます。
トレーラーハウスで暮らしているので、DIYで我が家を常にリフォーム中。好きな色にペンキを塗ったり、捨てられているタイルでモザイクタイルを貼ったりしています。
小さな頃から好きだったイラスト。今でもちょっと仕事の合間に落書きをしたり、詩を描いて、イラストを添えてブログに載せたりしています。
アフリカの旅で音楽が大好きに。ギターはここ3年前に始めました。焚き火を囲み、父が若い頃使っていたクラシックギターで好きなレゲエミュージックを弾いています。アフリカを旅していた時からやっているパチカというアフリカの楽器も音を組みわせて遊んでいます。音楽はレゲエ、ワールドミュージック、時々ロックが好きです。アコースティックな音が好きです。
家畜と一緒に暮らすのもコサ族の文化です。我が家は町の家と村の家がありますが、町では犬と鶏と豚と暮らし、村では山羊と羊が暮らしています。動物が大好きな私にとって、家畜と共に暮らすことは喜びです。そして最後はそのお肉を食べることになりますが、そこでいつも大切な命に感謝して、美味しく頂いています。
子供たちの食べるものもなるべく手作りで。お菓子やパンを焼いています。日本人が私しかいないこの町では、日本食がなかなか手にはいらないので、手打ちうどん、納豆、味噌作りなどにも挑戦。できることは楽しく手作りで、工夫することに面白さを感じて暮らしています。
9 仕事場はどんな感じですか?
基本的に我が家のリビングルームで執筆しています。音楽を聴きながら、カタカタ仕事をしています。
10 使っているSNSはなんですか? いつから?
フェイスブックを2011年頃からやっています。主に書いた記事の更新や、アフリカの暮らしをアップしています。ツイッターは今年に入って始めましたが、まだまだ勉強中。
11 生まれ変わったら何になりたいですか?
最近、6歳になる息子にも「ママ、生まれ変わるとしたら、なんの動物になりたい?」という同じような質問を受けました。その時少しだけ考えて「イーグル(鷹)。」と答えました。
トランスカイではふと空を見上げると、空高く飛ぶイーグルを見ることができます。その大きな翼を広げ、風を自由自在に操る姿は悠々としており、見るたびに、「あんな空高くからこの大自然を見下ろすことができるなんて、なんて気持ちいいんだろう」と羨望の眼差しで見てしまいます。
12 最後に一言!
南アフリカはアフリカ一の経済大国ですが、ここトランスカイはコサ族の文化の残る貴重な場所です。自然とつながりの中で生きるコサ族の暮らし、薬草、儀式、サンゴーマ(シャーマン)などの伝統が根強く残っています。また私の住むウムタタの町は南アフリカ独特の多民族文化が味わえます。
ライターのお仕事は、クリエイティブな発想を大切に、読者に面白く、尚且つ深い情報を提供することをモットーに取り組んでいます!
≪バンベニ桃さんの「世界のコトなら」執筆記事≫
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