「獲って食べる」が基本! アラスカの四季の味覚をご紹介

「最後のフロンティア」と呼ばれるアラスカ。みなさんはアラスカの暮らしというと、どのようなイメージがありますか? 今回はなかでも「食」に焦点を当て、アラスカの生活の一年をご紹介します。

はじめまして。海外書き人クラブ会員、アメリカ・アラスカ州在住ライターのEricaです。

私の住んでいる町には「セーフウェイ(Safeway)」という本土にも展開する大手スーパーがあり、食料を買うのに困ることはありません。しかしアラスカには大自然が育んだ美味しい食べ物がたくさん! 労力を惜しまなければ新鮮な食材が手に入ります。

それではほんの一部ですが季節ごとに代表的なアラスカの幸を見てゆきましょう。

 

1 春は山菜!

長い冬が終わり春を告げるのが山菜です。

「デビルズクラブ」という植物の新芽は、天ぷらにするとタラの芽にそっくりの味「ヤナギラン」の新芽はアスパラガスに似た味で、別名を「貧しい人のアスパラガス(Poor man’s asparagus)」とも言います。

また「トウヒ」の新芽は煮出した汁に砂糖を加えジャムにすると、ほんのりレモンのような香りがあってとっても爽やか。他に、「カモミール」や「エルダーフラワー」などのハーブも自生しています。

この時期、私がたくさん収穫するのが「コゴミ」

コゴミ

英語では先端の渦巻きがバイオリン(Fiddle)の先端(Head)に似ていることから「フィドルヘッド(Fiddlehead)」と呼ばれています。アラスカでは、軽く湯がいてピクルスにするのが主流。乾燥させれば日持ちするので、サラダやナムルにと重宝しています。

「モレルマッシュルーム」は春を代表するキノコで、欧米では高級食材として人気なのだそう。

モレルマッシュルーム

アラスカでは山火事が度々発生しますが、その翌年の山火事跡に生えるので、人々は服を煤で汚しながらもキノコ狩りを楽しみます。香りがよく、バターソテーにすると絶品です。

 

2 春はシシャモも旬!

樺太シシャモ

春は山の幸だけではなく、海の幸もあります。太平洋で長い旅をしてきた「樺太シシャモ」が、川へ産卵のため遡上してくる季節。英語では「キャンドルフィッシュ(Candlefish)」と呼ばれ、かつてネイティブアラスカンの人々は樺太シシャモから採れるたくさんの油を使ってキャンドルを作ったとか。

獲り方は至ってシンプルで、河口で遡上してくる魚を網で掬うだけ。タイミングが良ければ大群に当たって、ひと掬いで何十匹も獲れちゃいます。

樺太シシャモは日本でも販売されているので、みなさんお馴染みなのではないでしょうか。新鮮な子持ちシシャモのから揚げは、美味しくてついつい食べ過ぎてしまいます。

 

3 夏はいろいろなベリーを収穫!

ブルーベリー

アラスカの人々が待ちに待った夏! 日照時間が長いので、畑作業や釣りなど大忙しの季節です。獲ったものを乾燥や缶詰などにして、一年分の食料を備蓄します。

アラスカの食生活に欠かせないのがベリー類。冬は新鮮な野菜や果物が手に入りにくいため、大切なビタミン源です。ちょっとハイキングを行けば、カンタンに見つけることができるので、ベリー摘みは大人から子供まで夢中になれるアクティビティでもあります。

様々な種類のベリー

アラスカには食用のベリーが約20種類もありますが、やはり人気なのは「ブルーベリー」や「ラズベリー」といった甘味が強いもの。特にブルーベリーは味が濃く美味。

他にも、「スグリ」や「クランベリー」、スイカの味がする「ウォーターメロンベリー」など、様々なベリーを摘んでは一年分のジャムを作ります。

 

4 サーモン釣りは夏のアラスカの風物詩

キングサーモン

夏の人気のアクティビティと言えば釣り! 特にサーモン釣りが人気で、5月から9月くらいにかけて楽しむことができます。アラスカには5種類のサーモンがいますが、なかでも釣り人に人気なのが「キングサーモン」。その名の通り全長約100cmもある大型のサーモンで、脂がたっぷりとのっているのが特徴です。

シンクに収まりきらなかった大きなキングサーモンは捌くのも一苦労でした。

サーモンの遡上と合わせて行われるのが、「ディップネット(Dip net)」という獲り方。在住者にのみ許可される漁法で、直径1m以上もある大きな網を持って河口に立ち、遡上してくるサーモンを待ち構えます。

ディップネットで獲ったサーモン

特にテクニックは必要ありませんが、胴長靴を履いているとはいえ、冷たい水のなかに立っているのは重労働。しかし、アラスカの人々は一年分の食料となるサーモンを獲ろうと半日を費やすことはザラで、なかにはキャンプしている方もいるんですよ。

獲ったサーモンはスモークサーモンや缶詰、また一度冷凍すれば寄生虫の心配なく刺身としてもいただけます。100%天然のサーモン、かつ自分で獲ったとなると味は格別です。

 

5 秋はベリー摘みとキノコ狩り

9月の後半になると肌寒くなり木々が紅葉してきます。だんだんと緑が少なくなりますが、ハイキングに行けばまだまだ山の幸がさくさん。ベリー類のなかには寒くなった後に熟すものがあり、「リンゴンベリー(コケモモ)」や「ローズヒップ」を見つけることができます。

リンゴンベリー(コケモモ)

私はたくさん摘んだら一部を乾燥させて保存しています。ハーブティーにすると甘酸っぱくて美味。これから迎える長い冬のティータイムに最適です。

また秋といえばキノコ狩り。初心者でも判別しやすいのが、森の中で鮮やかなオレンジ色が目立つ「チキンオブザウッズ(Chicken of the woods)」です。

チキンオブザウッズ

「森の中の鶏肉」という変わった名前の理由は、食べると納得。なんと味や食感が鶏肉にそっくりなんです。鶏肉と似た味なので、ガーリックバターソテーやから揚げなどにするととても美味しく頂けます。

 

6 秋はハンティングシーズン

秋はアラスカの人々が待ちわびたハンティングの季節。多くの野生動物が生息するアラスカには狩猟対象の動物もいて、なかでも「ムース(ヘラジカ)」はその代表格です。ムースは大型のシカの仲間で体重約400~500kgもあり、一匹仕留めれば家族一年分の肉量を賄えます。

ムースの親子

私はまだ狩猟はしたことはなく、庭に来るムースをただ眺めているだけですが、たまにご近所さんが仕留めたムースのおすそ分けをいただきます。仕留めた後、肉を肉屋にもっていくと真空パックやソーセージなど加工してくれるのだそう。

パックされたムース肉

味は脂身の少ない牛肉といった感じで、シチューや煮込み料理にするのがオススメです。

 

7 冬も自然の恵みに舌鼓!

アラスカの冬は長く厳しく、農作物はなかなか育ちません。しかし海では日本でもお馴染みのホタテやタラバガニを始め、「ロックフィッシュ」や「スケソウダラ」などの冬に旬を迎える魚介類の漁が行われています。

特に私の住むエリアでは「ハリバット(オヒョウ)」と呼ばれる大型のカレイが有名で、自分で釣ったり、ご近所から頂くことがよくあります。こちらではフライにして食べるのが人気ですが、私は煮つけにして日本の味を楽しんでいます。

ハリバット

雪深くなってくると、家にこもりがちで時間もあるので保存食を作って過ごしています。ご近所では毎年雪が積もる前にリンゴの収穫があり、アップルパイやジャムを作るのがお決まり。今年もたくさん頂いたのでワインを作りました。寒さが本格的になるころには、夏に採ったベリーで作ったワインも完成します。

自家製アップルワイン

アラスカというと何もない極寒の地を想像されるかもしれませんが、実は四季折々の豊かな食で溢れています。観光でいらした際は、魚を釣ったり、ベリー摘みをしたりとアラスカの幸をぜひ味わってみてください。

(文・写真 Erica)

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