日本全国に住むライター・カメラマン・イラストレーターなどを組織して、出版社などのクライアントと結びつける「全日本書き人クラブ」。出版・新聞・広告・マーケティングなど、マスコミ各業界の有力企業をクライアントに持つ「海外書き人クラブ」の姉妹組織として誕生しました。
今回はその狙いと、「クライアント」や「クリエイター」両方のメリットを、お世話係の柳沢有紀夫がインタビュー形式でお伝えします。
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――そもそもどうして「全日本書き人クラブ」をつくろうと思ったのですか?
きっかけは数年前から出展している「クリエイターEXPO」です。これはクリエイターたちがブースを出し、来場者である出版社などのみなさんと商談する場です。
ここではライターよりもイラストレーターの方々の出展で多いのですが、かなりの割合で地方から来ている方がいました。そういうイラストレーターたちは口々に「地方にいては東京のクライアントと知り合う機会すらない。出展料にプラスして、往復の新幹線代、3~4泊の宿泊費など20万円近くかけてもメリットは大きい」と教えてくれました。
私も日本で広告代理店に勤めていたころ大阪支社に5年ほど勤務した経験があり、そのとき出版業界が東京一極集中であることは痛感していました。関西やその他の地方にもテレビ局や新聞社、さらには大手企業の本社もありますが、出版社だけは極度に東京に集中しているのが現状です。
つまり地方在住のライターやカメラマンでも、地元の出版社との仕事だけでは生活が成り立ちません。東京の出版社との仕事が必要なのです。
とはいえそれなりの実力と実績のある人でなければ、クリエイターEXPOに出展して20万円を回収するのはむずかしいのもまた現状です。駆け出しのライターで1回目の出展で「思うような効果が挙げられなかった」と去っていく仲間を数多く見てきました。
そこで地方在住のクリエイター、特にライターやカメラマンを東京の出版社と結びつける組織をつくろうと思い立ったのです。
幸い海外書き人クラブで20年近くの経験と実績があるので、ノウハウは持っています。また多くの得意先と太いパイプがあります。
――クリエイターにとって入会するメリットはなんでしょうか。
まずは先ほども言ったとおり、普通はなかなか知り合えない東京の出版社などとつながれることでしょう。一人で東京に行って知り合いのいない出版社に飛び込みで営業活動しようと思っても、編集者の人たちも忙しくて門前払いされるだけですから。そもそもそんな度胸、なかなか持てませんよね(笑)
それからこれは海外書き人クラブですでに実証されていることですが、仲間が集まると仕事が生まれるんです。
――仲間が集まると仕事が生まれる? どういうことですか?
たとえば私はオーストラリア在住ですが、「オーストラリアに住む小学生の様子を書かせてください」と編集者に企画を提案しても、「そんな単発の企画ではなあ」とまずは通らないでしょう。
でも「オーストラリアだけでなく、アメリカやフランス、中国やインド、エルサルバドルにトルクメニスタンなどという国も含めて数十ヵ国でリレー連載できますよ」と伝えれば、編集者としても毎号の目途も立ちます。巻頭特集みたいなものは仕方がないにしても、その他のページまで毎号毎号いちいち最初から企画を考えるのは大変ですから、編集部の方々にしてみたら長く続けられる連載企画を提案されるのはうれしいものなのです。
そうして何年も続いている企画が、姉妹団体の「海外書き人クラブ」のほうにはいくつもあります。それができるのは世界各国にたくさんの仲間がいるからです。
これが「仲間ができると仕事が生まれる」の意味です。
これと同じことが「全日本書き人クラブ」でも、そのうちできるのではないかと考えています。たとえば「全国隠れご当地グルメ」とか。
そのためには全国各地に会員が増える必要があります。早く48都道府県すべてを網羅したいですね。
――その一方で出版社などのクライアントには、「全日本書き人クラブ」を使うのにはどんなメリットがありますか?
まずは経費ですね。東京から金沢とか盛岡とか片道3時間前後の日帰り出張にライターを派遣するとなると新幹線代が往復で約3万円かかります。現地在住のライターなら余分な交通費がかかりません。
それにたとえ15分のインタビューを、1時間ほどで短い記事にまとめられるような小さな仕事だとしても、丸1日の拘束ですから、それなりのギャランティーを支払わなければならないでしょう。そう考えると現地在住のライターのほうが交通費だけではなくギャランティーのほうでも少し抑えられかもしれません。
また東京から送るライターが宿泊になれば、宿泊費も別途かかりますよね。でも現地在住のライターならたとえ数日にまたぐ仕事でも宿泊費は一切かかりません。
――ギャランティーや経費といった金銭面以外でも、クライアントが「全日本書き人クラブ」を使うメリットはありますか。
はい。いくらネット社会とはいえ、現地の人でしか知らない情報はたくさんあります。
またネットで調べたことをベースにして取材しても、どこにでもあるありきたりな薄っぺらい記事になりがちだと思います。
それとじつは地方には関係ない記事を、地方在住のライターに書かせるメリットもあります。たとえば東京在住のライターに依頼するよりもギャランティーが抑えられるかもしれません。
――それはどういうことですか?
東京は家賃などが高いので、東京在住のライターはそれなりのギャランティーを求めるでしょう。一方で家賃の支払いなどを抑えられる地方在住のライターなら少し低くてもやってくれる可能性はあります。
同じクオリティーの仕事をしてくれるのであれば、ギャランティーが低いほうが助かりますよね。もちろん私たちとしては極端にギャランティーを下げられると困るのですが(笑)
もちろん「東京港区の隠れた老舗を探せ」みたいな話は地方在住者では無理ですが、たとえば「あるIT系のシステムの紹介記事を書く」とか「ある医療品のメリットを掛け合い漫才風におもしろおかしく紹介する」といった話であれば、どこに住んでいるかはまったく重要ではなく、その話題に関する専門知識や執筆スキルだけが問題になりますよね。
――最後にひとこと。
書く仕事というのは本当におもしろいものです。それが東京に出てこなければできないというのはおかしいと思っています。好きな土地で住む権利はありますし、家庭の事情などによって東京に進出できない方もいるでしょう。
私自身も書く仕事が好きなので、そういう同じ思いを持ち、かつやる気のある人たちにチャンスを提供できればと思っています。
出版社やクライアントのみなさんも、ぜひ協力してください。地方にはまだまだ人材が埋もれていると思います。
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