イギリス・ロンドンで一番有名な観光地である大英博物館。ツアーでも必ず立ち寄るこの巨大な観光施設、人生で一度は行ってみたいと思っている人も多いのではないでしょうか。今日は現地在住ライターの私が、その「穴場」を大公開します。
こんにちは。海外書き人クラブ新会員、イギリス・ロンドン在住の塚田沙羅です。
広々としたメインホールから、第1室「Enlightenment」、アッシリア文明、ロゼッタ・ストーンのある古代エジプト文明、古代ギリシャ・ローマ文化を回るのが代表的なコースで、ツアーやガイドブックではよく紹介される目玉の観光スポットです。
それ以外にも、貴重品や珍品が展示されている部屋は数多くありますが、あまり知られていません。この記事では、そんな「大英博物館の穴場展示室」を、ロンドン在住の筆者が5つ選りすぐって紹介します。人が少ないこともありじっくり楽しめるので、2度目に訪れる人、珍しいコレクションに興味がある人はぜひ参考にしてください。すべて鑑賞無料です。
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第3室:入口すぐ横にある朝日新聞社の展示室
実は、朝日新聞社は自社ギャラリーを大英博物館に所有しています。
メインエントランスを入ってすぐ右に曲がったところにあるこの小さなギャラリー(第3室)では、定期的に展示替えを行っており、ジャンルを問わず様々なテーマを扱っています。筆者が今まで見たものでは、ワニのミイラの展示、アフリカの少数民族の文化についての展示、日本の漫画展などがありました。漫画展では、ちばてつや氏の作品群、『レインマン(星野之宣)』『聖☆おにいさん(中村光)』の3種類が紹介されていました。
『聖☆おにいさん』については、違う時期に日本文化展示室でも展示されていたので、この漫画が好きな学芸員の方が大英博物館にいるのではないかと私は思っています。
第27室:マヤ・アステカ文明の秘宝が見られるメキシコ展示室
第1室「Enlightenment」から直接つながっているのに、あまり人が入らない第27室。
ここでは古代から1600年代までのメキシコ文化の展示を見ることができます。マヤ文明、アステカ文明に作られた、宗教に関連する遺品、装飾品、彫刻は大変ユニークです。特にターコイズをモザイク状に組み合わせて作られた双頭の蛇や仮面などの工芸品は、美しい反面、魔術にでも使われていそうな怪しげな雰囲気があります。
これらの工芸品は、1500年代にアステカの君主がヨーロッパ人と接触したときに、彼らに宝物として贈り、ヨーロッパに伝来したと考えられています。500年以上の時を経て私たちが目にすることができるとは、なんともロマンですね。
第39室:豪華絢爛な時計が並ぶ時計展示室
時計の歴史を学ぶことのできる展示が、4階の第39室にあります。
西ヨーロッパで現在の時計のメカニズムが生まれた1300年代から現在までの、様々な時計が品評会のように並んでいます。時計塔に使われていたような巨大なもの、ミニサイズの懐中時計、また彫刻やジュエリーの装飾が施されたラグジュアリーな時計も紹介されています。
写真の金色の船も、1585年に作られた機械仕掛けの時計です。テーブル上で楽しんだものらしく、中世のガレオン船をモデルにした船の上で、決まった時間が来ると内部のミニオルガンから音楽が流れ、船がテーブルの上を動き出すそうです。最後には船の大砲が発射(!)するとか。展示室では動いているところは見られませんが、この繊細な造りと高級感溢れる装飾はそれだけで見る価値があります。
第90室:ミケランジェロの素描が見られるドローイング展示室
5階にある第90室は、有名画家のドローイングを集めた部屋です。
ここにルネサンスの巨匠ミケランジェロの巨大な素描が展示されています。この作品は、たった2つしか現存しないミケランジェロの素描のうちの1つです。中央に描かれた女性は聖母マリア、その足元に座っているのが生まれたばかりのイエス・キリストです。ミケランジェロはこの作品の構成を何度も描きかえており、よく見ると違う絵が描かれていた筆跡が確認できます。
もともとはこの絵は、生まれたキリストを祝福しに3人の賢者が訪れた「東方三博士の礼拝」をテーマにした作品であったと言われています。この素描のタイトルもそれにちなんでつけられています。
第34室:地下にひっそりとたたずむイスラム文化展示室
地下1階にある第34室は、イスラム文化に特化した展示品を見ることができます。
イスラム文化はイスラム教が広まった地域で発達してきた文化で、この展示室は大英博物館の中で唯一、宗教文化のカテゴリでまとめられている部屋です(つまり、キリスト教文化、仏教文化、ヒンドゥー教文化などの展示室はないということです)。イスラム教というと中東の国々のイメージが強いですが、その歴史を紐解くと、スペインやエジプト、中国にも広まった過去があります。
イスラム文化の代表的なものとして、建築物や工芸品を埋め尽くす幾何学文様の装飾、書道芸術(カリグラフィー)などです。幾何学文様や書道芸術が生まれた背景には、イスラム教の偶像崇拝禁止という戒律が関係しています。キリスト教がイエスやマリアの人物像をよくテーマにするのに対し、イスラム教はアッラー神やムハンマドを偶像化してはいけないので、絵ではない文様や文字の芸術が発展しました。これを知ると、この展示室に並べられた装飾的な工芸品や石板の数々が、彼らにとってのアートだということが見えてきます。
いかがでしたか? 王道の見どころから少し脇に逸れて、「隠れたお宝」を紹介してきました。どの展示室も小さめなので、短い時間でも見て回れます。古今東西すべての貴重品が集まっている大英博物館を、惜しみなく堪能するためのお役立ちになれば幸いです。
【文:海外書き人クラブ 塚田沙羅】
(この記事を書いている海外書き人クラブの紹介が、ページの一番下にあります。ご発注やご入会をお考えの方、ぜひご覧ください)
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