
カナダのアルバータ州にあるドラムヘラーという街は、恐竜好きにはたまらない聖地です。世界最大級の恐竜博物館をはじめ、まるでタイムスリップしたかのような絶景が広がるバッドランドなど、見どころが満載!
この記事では、カナダ在住の海外書き人クラブ新会員のそらが、ドラムヘラーの魅力をたっぷりとお伝えします。
ドラムヘラーの歴史や風景
かつて炭鉱の街だったドラムヘラーは、20世紀初頭に恐竜の化石が多く発見され、科学者や考古学者の注目を集めました。1985年にロイヤル・ティレル古生物学博物館が開館し、観光地として発展。現在では「恐竜の谷」として世界中から訪問者を引きつけています。
日本から行く場合は、カルガリー国際空港(YYC)への直行便またはサンフランシスコやバンクーバーからの乗継便を利用し、カナダのアルバータ州にあるカルガリーという街へ。そこから観光バスやシャトルバスに乗って120キロ、約2時間ほどでドラムヘラーに到着します。日本に住んでいた頃、この博物館についてのニュースを見て、いつか訪れたいと思っていました。そして今年ついにその願いが叶いました!
バスでドラムヘラーに向かいましたが、この街に入った途端、周囲の平坦な大地から「バッドランド」と呼ばれる渓谷が広がる地形に変わります。独特な風景は、約7000万年前の白亜紀に堆積した泥や砂が長い年月をかけて形成されました。氷河期後に侵食が進み、恐竜の化石を含む地層が露出されたからです。この地に足を踏み入れることで、恐竜が生息していた時代の環境を垣間見ることができます。
さらに博物館の周りにもこの渓谷を楽しめるハイキングコースがあります。博物館とハイキングの両方を楽しむ際は、時間に余裕を持っていくことをおすすめします。
ロイヤル・ティレル古生物学博物館の大迫力の恐竜化石たち
博物館に入ると、そこはもう恐竜たちの世界! 入館してすぐに目の前に現れるのは、カナダで見つかった、最も保存状態が良いトリケラトプスの頭骨「Calli」です。この頭骨は、全長1.8メートルを超える巨大なもので、約6900〜6800万年前に生息していたとされています。
Calliは2014年に発見されましたが、岩石を取り除く綿密なクリーニング作業など、一般公開までに7年かかったそう。こんなに綺麗な形で残ってるなんて、思わず息を飲みました。
次に目に留まったのはティラノサウルス科の一種であるゴルゴサウルスの骨格標本。世界で最も完全なティラノサウルス科の骨格としてギネス記録に認定されています。
驚くべき保存状態で、ほとんどの骨が揃っており、特に首が曲がり、手足が体に折りたたまれた「死のポーズ」で保存されているのが特徴。約11歳、全長5. 5メートルとのこと。
またこの恐竜のいとこにあたるティラノサウルス・レックスの化石も。
こちらは1億1000万年前に生きたボレアロペルタ・マークミッチェリという、厚い装甲板と棘で覆われた、鎧をまとった体を持つ草食恐竜の化石です。時空を超えて現代にやってきたかのような保存状態でした。全長約5.5メートル、体重1400キロのこの恐竜は、偶然の発見から約7000時間かけて復元されました。装甲だけでなく、胃の内容物まで化石化しており、胃の中には最後の食事であったシダの葉がそのまま残されていました。このことから、この恐竜が何を食べていたのか、そしていつ死亡したのかが詳しく判明したそうです。
海の生物の化石にも注目!
恐竜の化石だけでなく、海に生息していた生物の化石も多く展示されているのでそちらも紹介しましょう。
まずはプラセンチセラス(Placenticeras)。アンモナイトの一種で、7400万年前のこの化石は虹色に輝く美しさが有名です。
その鮮やかな輝きからまるで化石が今も生きているかのような錯覚に陥り、大地の歴史以外にも、海の歴史を感じることができました。
海の生物の化石で個人的に好きだった展示品の1つはこちら。捕食者の頂点に君臨した大迫力ダンクルオステウスです。
3億6500万年前のデボン紀後期に生息。体長は10メートルに達し、体重はゾウ3頭分に相当したそうです。歯がなかったにもかかわらず、顎の骨がギザギザでカミソリのような鋭い刃になっており、獲物を噛み切るのが得意だった模様。その巨大な顎を見て、大昔に起こった激しい生存競争を想像しました。
化石以外にも見所いっぱい
最新の科学研究を元にした展示や解説も充実しており、進化の過程などについても深く学べます。館内にはインタラクティブな展示も多く、化石発掘の体験ができるプログラムや、実際の研究施設を見学できるツアーもあるようです。
この写真のアルバータサウルスは、インタラクティブな展示の一つで、首の中には映像パネルが組み込まれており、そこから7200万~6800万年前のアルバートサウルスの視界を体験できます。この恐竜がどのように「狩り」をしていたか、画面を通して学ぶことができます。他の恐竜と同様に色覚を持っていたアルバートサウルスですが、獲物を狩る時に匂いも利用していたようです。
さらに、どうやって発掘したか、土の状態やクリーニングの仕方なども丁寧に解説してくれるコーナーもあります。実際に作業している場所などもガラス越しに覗くことができました。
化石以外にも、冒頭の写真のようなリアルな恐竜の模型や骨格レプリカなども圧巻でした。展示品の説明文に「Cast」と記載があるものは鋳型という意味であり、オリジナルを模したレプリカです。
このコーナーで特に楽しめたのは、骨格レプリカの背景にある実際の恐竜や生物のイラスト。骨格を見ただけでは想像がつかないけれど、イラストを見ればどんな生物だったのかを想像ができるが嬉しかったです。
街中でも恐竜に出会える
恐竜の街ドラムヘラーでは博物館以外のあちこちでも様々な形で恐竜を見つけることができます。ダウンタウンのアイスクリーム屋さんでも恐竜のイラストが。
どでかいアイスの上に、かわいい恐竜のグミをのせてくれました!
恐竜をテーマにしたおもちゃや書籍、Tシャツなどが豊富に揃っているお土産ショップもたくさんあります。特に人気なのはリアルな恐竜フィギュアや化石のレプリカ。日本ではなかなか手に入らない限定グッズも多く、ここでしか買えない特別なアイテムを見つけることができるかもしれません。
最後に、ダウンタウンには「世界最大の恐竜像」を誇るティラノサウルスの「Tyra」が佇んでいます。高さ25メートルにも及ぶ、圧倒される大きさです!
ちなみにこれ、外から眺めるだけではありません。体の中にある106段の階段を登ると、Tyraの口の中からドラムヘラーの絶景を見ることができます。
写真では少し分かりづらいかもしれませんが、足元に両手を大きく広げている米粒サイズが著者です。Tyra像がいかに巨大か、感じていただけると嬉しいです。
ドラムヘラーは、自然と歴史が織りなす不思議な魅力でいっぱいです。初めて知ることばかりで、普段では味わえない特別な体験ができ、本当に楽しかったです。今回はハイキングまで手が回りませんでしたが、いつかまた訪れたいと思っています。
恐竜好きはもちろん、自然を愛する人にとっても、きっと忘れられない場所になるはずです。大人から子供まで楽しめる街ドラムヘラー、恐竜の楽園にタイムスリップしたくなったらぜひ訪れてみてください!
(文・写真 そら)