毎年6月は「プライド月間」。LGBTQIA+のコミュニティーが一丸となって自由と平等の権利を訴え、世界各地でイベントやパレードが開催されます。
トロントでも去る6月30日にカナダ最大のプライドパレードが行われ、国内外から多くのサポーターや観光客が集まり、年に一度の祭典を盛り上げました。
そんなトロントには、国内最大のLGBTQIA+コミュニティー「The Gay Village」があります。カナダの多様性を象徴する街として観光名所にもなっているカラフルタウンを、海外書き人クラブ新会員のトロント在住ライターfuseがご紹介します。
LGBTQIA+をサポートする「プライドパレード」
毎年6月になると街中にレインボーフラッグが掲げられ、トロント市全体がLGBTQIA+のサポーターとなります。
そして100万人規模となるプライドパレードには、市長をはじめ著名な政治家(かつてはトルドー首相も)も参加。フェスティバルのフィナーレを飾り大行進します。
パレード当日には電車やバスの中、そして街中でレインボーカラーの洋服や小物、アクセサリーなどを身につけてパレードを応援しに行く人々で埋め尽くされ、まるで絵具でペイントされた別世界のように街が変身するんです。
そして多くの企業や団体がサポーターとして参加し、LGBTQIA+の人々、同僚、または、その家族などが思い思いの衣装を身にまとい、ノリノリのダンスミュージックに合わせて「ハッピープライド!」と叫びながら踊りまくり行進するさまは、まさに圧巻です!
また通りの両脇で大勢のサポーターや見物人たちが拍手や歓声を上げながらパレードを盛り上げ、参加者と一体となる瞬間はフェスティバルのクライマックス、アドレナリン爆発状態に。
プライドパレードに興味があり、6月末にトロントを訪れるチャンスがある方は、ぜひトロントニアン(トロントの住人)と一緒になって、この興奮を体験してみてください!
「映える」個性的な街並みに圧倒される?!「ザ・ゲイヴィレッジ」
そんなプライドパレードの主役たちが暮らすエリアが、トロントの中心地にあります。
ダウンタウンを南北に走るメインストリート「Yonge Street(ヤングストリート)」の東側に位置する「Church Street(チャーチストリート)」と「Wellesley Street(ウェルズリーストリート)」が交わる一体が「The Gay Village」と呼ばれるLGBTQIA+のコミュニティーです。
長い間、偏見と差別の中でセクシャルマイノリティーの存在は軽視され、常に命の危険にさらされていました。しかし1981年に起きた警察によるゲイ浴場の襲撃をきっかけに、チャーチストリートを中心に政治的な活動を開始し、コミュニティーを形成していきました。
通りには至る所にレインボーマークが描かれ、ユニークな街並みを作っています。カラフルな人々が集うエリアとして、そしてセクシャルマイノリティー(性的少数者)が自分に自信をもって、自分らしく暮らせる街として、今では観光スポットにもなっています。
オシャレなカフェやレストランでカラフルな人々とふれあう
The Gay Villageには小学校や教会、グローサリーストアなどもあり、家族連れも行き交う日常を垣間見られます。
そこには、私たちと同じ普通の生活があり、人権を無視した悲しい歴史の痕跡は今では見当たりません。
通りにはオシャレなレストランやカフェも建ち並んでいて、ナイトライフはちょっと勇気がいる……という方は、昼間にふらっと街歩きするだけでも、トロントのカラフルな人々とのふれあいを楽しむことができますよ。
時代の変化とインフレの影響で移り変わる街並み
トロントにおけるセクシャルマイノリティーの聖地とされてきた「The Gay Village」ですが、時代と共にトロント全体がLGBTQIA+コミュニティーに対してオープンになり、特定のエリア以外でも楽しめる場所が増えてきました。
また近年では、Village内でも大手のカフェチェーンやレストランが進出してきて、地元の店が次々と閉店するなど街の様子も変化してきています。
その上、昨今のインフレの影響でトロントの賃貸が高騰し、LGBTQIA+の若者たちが近隣や他の地域に移り住むようになりました。
そのため現在は、かつての活気が消えつつあります。しかし、毎年プライドパレードの出発地点として、今なおコミュニティーの存在を強くアピールしています。
カナダの「ダイバーシティ(多様性)」を体感してみよう!
カナダは2005年に世界で4番目に同性婚を合法化しました。
人種、国、宗教、そして性的少数者などの垣根を超えて多様性を受け入れ、共存共生を目指すカナダの中でも、トロントは特にLGBTQAI+フレンドリーの都市として知られています。
「The Gay Village」はトロントのダイバーシティ(多様性)を象徴する一つでもあり、移住しても、また旅行で訪れてもカナダの「フリーダム(自由)」を体感できる場所であることに間違いありません。
トロントで「みんな違ってよい!」って心から思える体験をしてみませんか?
(文・写真 fuse)