「カヤックで旅するヨーロッパ」ドナウ川沿い8カ国のおススメスポット

はじめまして。海外書き人クラブの佐藤ジョアナ玲子です。

「世界各大陸の川を下りたい」という夢を胸に旅を続けている私が、ヨーロッパ大陸編として旅したのがドナウ川。頭の中を流れるのはあの名曲、「美しく青きドナウ川」だけど、本当のドナウ川は青くないんです。茶色いんです。

今回はヨーロッパを貫くドナウ川を半年近く旅して出会った、川沿い8カ国のディープスポットをご紹介します。

ドイツ・カヤックで滑るウォータースライダー

カヤック

ドナウ川の旅といえばクルーズ船のツアーが有名ですが、今回私が選んだ交通手段はカヤック。1つの大きなバックパックに収まる折り畳み式のカヤックで、飛行機の預け荷物にできるんです。えっ、カヤック?だって、人力で進めば交通費はゼロだし、川岸にテントを張れば宿泊費もゼロでしょう?貧乏旅行にピッタリなんです。

とはいえ、カヤックでドナウ川を旅する時に問題になるのが、水門。あちこちに水力発電所があって、発電に必要な水の落差をつくるため、川がせき止められています。モーターボートやクルーズ船などは水門を開いて通過しますが、カヤックの場合、もう一つ方法があります。ウォータースライダーです。

カヤックで滑るウォータースライダー

こちらはドイツのレーゲンスブルグ手前の水門に併設されたウォータースライダー。少し勇気が要りますが、カヤックに乗ったままここを通れば一瞬でスポーン!と水門の向こう側に下りることができます。気分はまるで流しそうめん!

 

オーストリア・ヴァッハウ渓谷のワイナリーと修道院

ドナウ川沿いに国境をドイツからオーストリアへ抜けると、ヴァッハウ渓谷に辿り着きました。渓谷の川沿いの村々に多数のワイナリーが点在しており、夏場はこれらの場所を巡り試飲をしたりするツアーが大人気。残念ながら私が訪れたのは冬場のため、ブドウの木は休眠状態で、あたり灰色の寒々しい世界。そんな中、ひときわ目を引いたのがこちらの建物です。

オーストリア・ヴァッハウ渓谷のワイナリーと修道院

この時の気温はマイナス。見てほしいのは、朝起きるといろんなものが凍っている家代わりのテント、ではありません。私が指さしているキャンプ地の対岸にある建物なのですが、すみません、遠くて見えませんね。

オーストリア・ヴァッハウ渓谷のワイナリーと修道院

鮮やかなオレンジ色の外壁がまるでお城みたいですが、正体は修道院。中にゴシック建築を極めた大聖堂があって、床も壁も天井も、隙間なく装飾が施されています。電気もなくロウソクしなかった時代にこれを見せられたら、その圧倒的な迫力に神の存在を認めるしかないだろうな、と思わせられる豪華建築は一見の価値ありです!

 

スロバキア・安くて美味しい黒ビール

旅行者には痛すぎる円安と物価高のヨーロッパですが、東ヨーロッパ地域に入るとグンと安いお値段でヨーロッパの味覚を堪能できます。特に首都ブラチスラバの旧市街には楽しい飲み屋さんが並んでいます。

スロバキアのパブ

中でも印象に残っているのがこちらのお店、その名もKGBパブ。社会主義をテーマにした強烈な内装です。マニア心をくすぐられない人もいるかもしれませんが、そんな人でもご機嫌になってしまう飲み物があります。

スロバキアの黒ビール

こちらの黒ビール、1杯2ユーロ30セントと良心的な価格ながら、濃くて美味い!海外では「黒ビール以外は本当のビールじゃない」なんて言う人もいるくらい人気なのです。

 

クロアチア・廃工場を歩く

クロアチアといえば海沿いのキレイなリゾート地が有名ですが、内陸部のドナウ川沿いにはまた別の表情が隠されています。それは、クロアチア紛争の傷跡。1991年から1995年にかけて、旧ユーゴスラビアからの独立を目指すクロアチアがセルビアと戦った紛争です。両国は川沿いに国境を接しており、クロアチア側では今も当時の弾痕を壁に残したまま人が暮らしている住宅が多数あります。

そういった歴史的背景が影響してか、廃墟や廃工場も多いのがクロアチア。レンガ工場の窯など、廃墟好きにはたまらない建物がたくさんあるのです。

クロアチアの廃工場

 

セルビア・新国家リベルランドを訪問!?

先ほど紹介したように、複雑な歴史を抱えているクロアチアとセルビアですが、実は両国の間には国境がハッキリしていない地帯があるのです。基本的には、ドナウ川を境目に国境を定めている両国ですが、川というのは、長い時の流れとともに土砂を削り、少しずつ形を変えていくもの。もともとセルビア側にあったのがクロアチア側に行ってしまったり、その逆の現象が起こった土地があり、一体どの国の持ち物なのかハッキリしないまま「無主地帯」になっているのです。

森

驚くことに、その無主地帯に勝手に新国家を建設しようという人たちがいます。国の名前は、自由を意味する「リベルランド」しかし政府による監視が厳しく、基本的に誰もリベルランドに上陸できない不自由な状況。そこでリベルランド関係者らは対岸のセルビアの町アパティンに土地を買い、姉妹都市となる「アークビレッジ」の建設に乗り出しました。

船と人

そして彼らのもう一つの活動拠点は、移動式の船です。奇想天外な行動力を持つリベルランドの人たちから聞いたディープなお話は、とてもここでは書ききれません。

 

ハンガリー・蚤の市ならぬ泥棒市

ドナウ川の旅するまで、私は海外のことを「欧米」と呼び、しかし「欧」と「米」の違いがよくわからないでいました。カヤックで各地へ行ってわかったのは、「欧」といっても、東ヨーロッパと西ヨーロッパで全く別の雰囲気があるということ。川沿いに旅をした結果、ヨーロッパの東西の分岐点はハンガリーにある気がして、興味を持った私は実は現在ハンガリーに留学しています。

そんなハンガリー某所の蚤の市で見つけたのがこれ。

泥棒市

もしかしてこれは、誰かの郵便物…?

袋の中身は何なのか、売っているお兄さんに尋ねても「ただの袋さ」としか答えてくれません。これじゃまるで、泥棒市。

 

ブルガリア・上機嫌なカヤッククラブ

スポーツやレジャーとしてカヤックが定着しているヨーロッパでは、川沿いのほとんどの町にカヤッククラブと呼ばれる施設があります。地元の人が自分のカヤックを預ける倉庫や、シャワーやトレーニング設備、キャンプグランドを備えた場所も少なくありません。そんな中、私がブルガリアでお世話になったのは、コンテナのカヤッククラブです。

カヤック

「泊まっていきなよ」というお言葉に甘えて、壁を見ると手作りの時計が掛けてありました。文字盤の目盛りは4つだけ。漕ぐ時間、宝くじが当たる時間、お酒を飲む時間、掃除する時間。しかしクラブのメンバー曰く、時計の針が掃除の時間を示すことは無いそう。その言葉の通り、室内にはお酒の空きビンとタバコの吸い殻がたくさん。

バーベキュー

「泊まっていきなよ」と言われても、正直これでは長居できないな、と最初は思いました。でも、お昼はバーベキュー、夜は毎晩飲みに誘われて、なかなか朝起きられず、出発できない…。陽気な酒飲みたちにつられて、ズルズル長居してしまうカヤッククラブでした。

 

ルーマニア・ドナウ川の終わりを見てみよう

 

黒海

ドナウ川の終わりはルーマニアの黒海です。ドナウは青くなかったし、黒海も黒くありませんでした。ではまたいつか、どこかの川でお会いしましょう。

(文・写真 佐藤ジョアナ玲子)

 

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