ピラミットの印象が強いエジプトは、漢字で書くと「埃及(あいきょう)」。「埃(ほこり)」という文字から砂漠の砂の舞う様子が連想できます。
では実際エジプトは埃が舞う国なのか? エジプト人の主食は何か? 今回はエジプト在住の海外書き人クラブ会員・橋本千鶴そんな素朴な疑問にお答えします。
埃が舞う国なのか?
砂漠のイメージの強いエジプト。でもカイロの空港に着き主要都市へと車で移動していると「本当に砂漠の国なのか?」と疑問に思うほどです。なぜなら道路は綺麗に舗装されており、道幅も広い。一般道路にまるで高速道路のようにジャンクションがあります。さらに建物は数十階建てのものも多い近代都市なのです。
車の中から砂漠やラクダを探しても一向に見つからない。「エジプトは砂漠どころか砂もないのか?」と思うほどです。
でも街を歩くと「埃が舞う国」の意味が身に染みてわかります。首都カイロの道路は、どこもかしこもコンクリートで綺麗に舗装されているのですが、道の端にはゴミとともに砂が目立ちます。あちこちで急激な首都開発に伴う工事がされていることもありますが、砂漠の砂のような薄黄土色の砂が小さな山を作っています。
砂漠の国には木がない?
砂漠には水辺や木々のイメージはないと思います。でも首都カイロは砂漠から離れているのであちこちに木々を見ることができます。
強い日差しを避けるためか木々が植えられて大きく育っていますが……その葉に注目すると日本の新緑とは違う色に見えるのです。葉っぱはなんと砂でコーティングされたようなくすんだ緑色! これも砂の影響でしょう。
生活の中で一番砂の威力を感じる場所は自宅のベランダです! 毎日掃き掃除をしても数日すればベランダの床が真っ白になるのです。
でもベランダにいても「砂が舞い込んできた」と感じることはありません。宙に舞う細かな砂がいつの間にか舞いこむようです。その証拠に耳掃除は3日に1回必要になりました。埃ではないですが、砂の舞う国には間違いないと確信するのです。
砂漠はどこに?
では砂漠はどこにあるのでしょうか? カイロの中心街から車を1時間も走らせると砂漠が現れます。中心地から少し離れたカイロ空港の周辺や有名なギザのピラミットの周辺には、観光案内でよく見る写真のような見事な砂漠を見ることができます。
大都会の摩天楼から砂漠の地へ来ると、現代から古代へタイムスリップしたような感覚になります。
エジプト人の主食は何か?
さて次にエジプトでの食べ物について話をすすめましょう。エジプト人の主食は「パン」と言えるでしょう。パンと一言で言っても色々な種類があるので、ここでエジプトで一番よく食べられるパンについて詳しく書いていきます。
それはアラビア語で「アイーシュ」という名前のパンです(ホブズと呼ぶ国もありますがエジプトではアイーシュと呼ぶことが多いです)。「アイーシュ」の語源には、生きるという意味もあり、パンそのものがエジプトの人々が生きるために、欠かせない食べ物であることが文字からも伝わってきます。
アイーシュとはどんな物なのか。それはこちらです。
一見堅そうですが、色々な種類があり、カリカリの食感のもの、柔らかいもの、白いもの、大きさも様々で、顔よりも大きい物から手の平サイズのものまであります。作り方はとてもシンプルで小麦粉をこねて、大きな釜で焼くだけ。
街のあちこちにパン屋さんがあり、アイーシュの他にはクッキー、チーズ入りのパン、パイなどが売られています。種類はお店によって違いますが、共通していることはお店で焼いているのでどこもとても良いに匂いがするということです。前を通るとつい買いたくなります。
アイーシュの食べ方・その1「サンドウィッチ」
さて、アイーシュはどのように食べるのでしょうか。主に2通りあります。
1つはサンドイッチにすること。アイーシュを半分に切ると中が空洞になります。その中に卵やサラダ、揚げ物などを挟んで食べます。このサンドイッチはエジプト人の朝ごはんになります。
エジプトの街を朝歩くと、屋台のサンドイッチ屋さんが見られます。職場で朝食を食べる人が多いエジプトでは、その屋台で朝食を買ってから出勤します。
注文方法は様々ですが、サンドイッチの中身は選べます。フール(豆を煮たもの)、ターメイヤ(そら豆のコロッケ)、サラダ(トマトとキュウリにドレッシングをかけたもの)、チーズ(種類は様々)、ポテトフライ(ポテトチップスもある)、ゆで卵、生タマネギなどなどその日の気分によって中身が選べるというシステムです。値段はお店や地域によって様々ですが3~5エジプトポンドほどです。
アイーシュの食べ方・その2「料理をすくったりつまんでりして」
もう1つのアイーシュの食べ方は、ちぎって具材をすくったりつまんだりするというもの。
レストランなどに入ると前菜と共にアイーシュが提供されます。この場合はアイーシュを小さくちぎって前菜をつまんで食べることになります。
前菜もお店により若干異なりますが、サラダ(トマトやキュウリ)、ナスのソース、豆のソースなどです。もちろんメインの料理も、好みに合わせてアイーシュでつまんで食べることもできます。
レストランにも欠かせないアイーシュは、まさにエジプトには欠かせない生きるために必要な食べものなのです。
以上、エジプトの「砂」事情と「パン」についてお伝えしました。砂漠やピラミッドやスフィンクスや古代王朝は有名ですが、それ以外はあまり知られていないエジプト。そんな「知られざるエジプト」をあれこれ紹介していきたいと思います!
(文・写真(トップの画像を除く) 橋本千鶴)