南仏に来たなぁ〜と私がしみじみ感じるのは、通りに面したカフェのテラス席で、路上ミュージャンのアコーディオンを聴きながらのんびりコーヒーを飲んでいるときです。皆さんも旅行中、カフェでひとやすみをする機会が一度はあると思いますので、フランスのカフェについて知っておくとちょっと便利な5つのポイントをお話しします。
こんにちは。海外書き人クラブ新会員、フランス南部エクサンプロヴァンス在住のレリソン田島靖子です。
スポンサーリンク
1 イケメンのギャルソン(または美女店員さん)に会いたければ……
フランスはとにかくカフェが多くて、どこに入ればいいか分からない! そんな時は店員さんで選んでみましょう。ギャルソンという言葉でイメージするような、白くて長いエプロンをビシッと着こなした、姿勢のいい店員さんはどこにいるのか?
単純な話ですが、町の中心部の大通りにあるカフェに行くことです。私の住んでいるエクサンプロヴァンスで言うと、ミラボー通りという町のメインの通り。プラタナスの並木がアーチ状に連なる広々とした通りにカフェと噴水が並び、世界中から観光客が集まる美しい通りです。
この通りにあるカフェはどこも古き良きフランスのカフェのイメージを裏切らない素敵な店ばかりですが、そのぶん値段も少しお高め。白シャツに蝶ネクタイをつけた店員さんたちは映画のようにサマになっていて、つい見とれてしまいます。
フランス人の夫によると、「美しい店員さんがいることは、カフェにとって客を集める重要な要素。老舗の正統派カフェでは店員の採用において、顔や佇まいの美しさが重視されているのは間違いない」とのこと。
逆に大通りから一本入ったところにあるカフェには、ジーパンにタンクトップなどのラフな服装で働いている庶民的な雰囲気の店員さんがいます。値段も大通りよりリーズナブルな場合が多く、地元民はだいたいこういう店に通っています。どちらにもそれぞれの魅力があるので、好みや気分に合わせて使い分けると楽しいですよ!
2 出勤前のクロワッサン! カフェで始まる一日とは
多くの店がお昼はいったん店を閉めるフランスにおいて、朝から晩まで唯一フル稼働しているのがカフェです。コーヒー一杯で何時間居続けても決して嫌な顔をされることはありませんし、もちろんランチタイムやディナータイムにも賑わいますが、ぜひおすすめしたいのがカフェの朝食。
出勤前にカフェで朝食をとる習慣の人も多く、ほとんどすべてのカフェにリーズナブルな朝食メニューがあります。温かい飲み物(コーヒー、紅茶、ホットショコラなど)にクロワッサンとタルティーヌ(バゲットにジャムなどを添えたもの)、オレンジジュースがついて5〜6ユーロ程度が南フランスの相場です。パリではもう少し高いかもしれません。
朝、少しずつ動き出す街の様子を眺めながらテラス席で焼きたてのクロワッサンを頬張れば、あぁフランスに来たなぁ~と実感できるはず。カフェの良し悪しを朝食ではかることもできますので、フランスに来たらぜひ試してみてください。
3 老舗カフェが募集する「深夜バイト」の謎
おこもり感のある日本の喫茶店もいいですが、フランスのカフェといえばやはりテラス席。開放感あふれる外の席で心ゆくまでお喋りを楽しんだり、風を感じながら読書したり道ゆく人を眺めたり……。日が長い夏はもちろん、真冬でさえもフランス人には外の席のほうが人気なので、お店側も一つでも多くのテラス席を確保するため店の前の道にテーブルと椅子を所狭しと並べています。
さて、このカフェのテーブルと椅子、閉店後はどうするかご存知ですか? 店内に片づけるカフェもありますが、そもそも店内席よりテラス席メインに作られているカフェではスペース的に店内に入りきりません。かと言って翌朝までそのままにしておけば、治安のいい日本とは違いますから、あっという間にごっそり盗まれてしまう危険があります。
そこで登場するのが、夜のあいだテーブルが盗まれないよう見張る深夜バイト。カフェの閉店時間に合わせて出勤し、深夜じゅうテラス席をただ見張り、朝帰っていくのです。
私の住んでいるエクサンプロヴァンスや、パリ、リヨンなどの大きな町には、ひとつの通りに数えきれないほどカフェが並んでいるので、見張りのバイトも何軒かのカフェを同時に警備することもあるようです。
日本のような24時間営業の店がほぼ存在しないフランスですが、こんな深夜バイトが存在するのは予想外ですよね! ひとけのない深夜のバイトですので女性には絶対おすすめできませんが、フランス語力やコミュニケーション能力などはおそらく問われないので、興味のある方は挑戦してみてはいかがでしょうか。
4 パリ発祥じゃない? フランスのカフェの「歴史」
フランスで最初にカフェができたのは、実はパリではなく南仏マルセイユでした。マルセイユといえば港の町。東西貿易が盛んだったこの町に1644年、オスマントルコからコーヒーと陶磁器のコーヒーカップがもたらされたのを発端とし、1671年にフランス初のカフェが誕生しました。パリ初のカフェ「プロコープ」ができるのは、それよりも10年以上あとのことです。
カフェは18世紀には文学サロンとして社交場の役割を果たしたり、革命家が集まってフランス革命の発端にもなりました。ヘミングウェイやピカソ、藤田嗣治らが集まった1920年代のモンパルナスのカフェも有名ですよね(ウディ・アレンの映画『ミッドナイトインパリ』の舞台になりました)。いずれの時代も、芸術家や革命家たちが精神を集中させ議論を白熱させるためにコーヒーとカフェは不可欠だったようです。
議論大好きのフランス人、現在でもカフェで延々と討論をしていて、だいたいどこのカフェも深夜0時すぎぐらいまではお客さんがおしゃべりを続けています。
同時に気持ちを切り替え、一人で集中できる場所としてカフェを使う人も多く、コーヒーを片手に小説を読んだり手紙を書いたり、パソコンをひらいて仕事をする人の姿も見られます。数十年前から変わらず、カフェはフランス人の生活に欠かせない場所なんですね。
5 よき「常連」になるには
たとえば旅行で一週間同じ町に滞在したら、毎日違うカフェを試してみるのいいですが、何日か同じカフェに通ってみるのもフランス人の生活を体感するいい機会になると思います。カフェの中に自分のお気に入りの席をみつけ、究極的にリラックスしてこそカフェの良さがしみてきます。旅行中の身であっても、3日間あればあなたもきっとよき常連になることができますよ!
そのコツは、店員さんと良い関係を作ること。そんなこと言ったってフランス語できないよ、と思った方もいるかもしれませんが言葉が分からなくても全く問題ありません。覚えるべき挨拶はたった2つ、ボンジュール(こんにちは)とメルシー(ありがとう)のみ。店員さんの目を見て、この挨拶をするだけです。
単純なことですが挨拶をするのとしないのでは店員さんの対応が全く異なります。カフェに限らずフランスで忘れてはならないことは「客と店員は対等である」ということ。よい接客をしてもらえるかどうかは客の態度次第です。
日本では、店員さんがいらっしゃいませと全力であいさつして、客は無言で店内に入るのは普通ですが、フランスでは肉屋でも洋服屋でもお客さんがボンジュールとあいさつして店内に入ります。
カフェの場合は店員さんが忙しそうなら自分で席を見つけて勝手に座っても構いませんが、目があったら必ずボンジュールと言いましょう。また、コーヒーを持ってきてもらったとき、忘れずに目を見てメルシーを言うことが大事です。
逆にこの二つさえ守れば、店員さんの態度はぐっとやわらかくなるので、そのほかの注文や会計などはフランス語ができなくてもなんとかなります。片言の英語でも、指差しでも、自分のできる方法で意思を伝えればよいでしょう。
フランスのカフェの店員さんはどんなに忙しそうにしていてもよく客の顔を見ています。目を見て挨拶が出来れば、2回目に行ったとき顔を覚えていてくれる場合も多く、3回目にはあなたも晴れて常連の仲間入りです。
以上、フランスのカフェについて知っておきた5つの秘密でした。
【文と写真 レリソン田島靖子】
- 海外在住ライターを使いたい方も、なりたい方も。
- ページ下部の【海外書き人クラブの紹介】をぜひ。
- ⇓⇓⇓⇓⇓⇓⇓⇓⇓⇓⇓⇓⇓⇓⇓⇓⇓⇓⇓⇓⇓⇓⇓⇓⇓⇓⇓⇓⇓⇓⇓⇓⇓⇓⇓⇓⇓⇓
スポンサーリンク
スポンサーリンク
にほんブログ村