【海外在住ライター直伝】世界のジビエ肉➁(ヨーロッパ8ヵ国編)

アイベックス

牛、豚、鶏以外に世界ではどんな肉が食べられているのか? 海外書き人クラブの会員とともに調べてみると、まさかの結果でした!

こんにちは。海外書き人クラブお世話係の柳沢有紀夫です。

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「肉類」といってパッと思い浮かぶのは「牛肉」「豚肉」「鶏肉」。さらに「羊肉」「鹿肉」「猪肉」「熊肉」「鴨」あたりでしょう。でも世界では他にも様々な肉が食べられています。

前回の「北中南米編」に続き、今回は「ヨーロッパ編」。さてどんな変わった肉が楽しまれているのでしょうか。

  • ※以前、別の記事で取りあげた「馬」「犬」「ウサギ」「カエル」「ヘビ」「昆虫食」はここでは含みません。
  • ※便宜上「ジビエ」と書きましたが狩猟で得られた肉だけでなく、家畜なども含みます。
  • ※透かしのない写真は「pixabay」から借りたものです。

 

スウェーデン

寒い国特有の動物を狩る習慣が昔からあります。

標的となるのは鹿トナカイ

トナカイ

大ヘラジカ

大ヘラジカ

イノシシ、雷鳥(Grouse)、鴨などです。北のラップランド地方ではトナカイを飼育して生計を立てている民族がいます。

有名な大ヘラジカは個体が減っているため政府機関の管理のもと時期、場所ともにかなり制約があり、倒した個体ごとにレポートするなど厳重な決まりをまもらなければ狩りをすることが許されていません。

(スウェーデン在住ライター 中妻美奈子)

「北米編」のカナダ同様、やはり大物! しかしトナカイも食べるんですね。まあ、年一度クリスマスイブの一日だけ働くってわけにもいかないのかもしれません。

 

スペイン

イノシシ、シカ、ヤマウズラ

(スペイン在住ライター 田川敬子)

「市場のジビエ肉店」の店頭のちょっとショッキングもあります。本文最後にお知らせする「閲覧注意画像集」のページに格納しますので、ご興味がある方はそちらをご覧ください。

 

スイス

秋から冬にかけて狩猟解禁になると、スイスではジビエを食べるのが風物詩のようになっています。

イノシシ、大鹿、キジはもちろん、大きな角を持つ山ヤギであるアイベックス

アイベックス

カモシカの仲間であるシャモア(ゲムゼ)

シャモア

という動物の肉も食べることができます。

これらのジビエをキノコや栗といった季節の副菜と一緒にいただくのが人気です。

鹿ソーセージとピンクのアイベックス肉をと季節の野菜のプレート

ⓒ小島瑞生提供。鹿ソーセージとピンクのアイベックス肉を、季節の野菜と一緒に

(スイス在住ライター 小島瑞生)

やはり「山岳地帯」っぽいジビエが多いですね。

 

オーストリア

イノシシ、鹿、キジ、ガチョウなどがメジャーです。

イノシシや鹿はシチューの定番で、ジビエ(Wild)の季節には、多くの山小屋レストランで季節メニューとして出され、そのためにわざわざ行く人も多いです。また、レストランで出されるジビエは、実際にその地域で狩猟した人が、肉をレストランに直接売ることもあるようです。

イノシシのスペアリブ

イノシシのスペアリブ

ⓒひょろ/御影実

表面がパリパリで中はジューシーで、ボリュームがあります。

鹿肉のラグー(シチュー)

鹿肉のラグー(シチュー)

ⓒひょろ/御影実提供

何とこれは病院食で出てきて驚きました。11月後半ですので、まさにジビエの季節です。

鹿肉のソーセージ

鹿肉のソーセージ

ⓒひょろ/御影実提供

ケーゼクライナーという種類のソーセージで、中にはチーズも入っています。鹿肉の独特の風味と、とろけるチーズがとてもいいハーモニーです。

また、オーストリアでガチョウの肉は特別で、聖マルティンの祝日周辺(10月末から11月中旬にかけて)やクリスマスに食べる伝統になっています。レストランも腕によりをかけて、ガチョウ目当てのお客さんを待ち構えますし、家庭でオーブンに丸ごとのガチョウを入れ、家族や親戚一同集まってガチョウパーティーをすることも多いです。

ガチョウ料理

ガチョウ料理。ⓒひょろ/御影実提供

ガチョウの丸焼き

ガチョウの丸焼き。ⓒひょろ/御影実提供

(オーストリア在住ライター ひょろ/御影実)

「妙なもの」感は全然なくて、どれもとてもおいしそうなのが特徴ですね。

 

いのしし、鹿、熊、キジ

イノシシのソーセージ。パテのような感じ

イノシシのソーセージ。パテのような感じ。ⓒバレンタ愛提供

(オーストリア在住ライター(元) バレンタ愛)

ああ、そうだ。「キジ」も日本古来のジビエですね。

 

ポーランド

イノシシ・鹿・鴨

最近、農務大臣が「ビーバーは媚薬としていいから皆で食べよう」的な発言をして国中で大ひんしゅくをかいました。

ビーバー

現法ではビーバーは保護指定動物で生存が確認された場所は土地開発が困難になるため、「増えたから撃って食え(そうすれば開発できる場所が増える)」、というメッセージを猟師たちに流したと一般的に考えられています。しかし、さすがの猟師たちも「ビーバーを撃つのはちょっと……」と思う人が多いらしく、さらに国内で有名な料理家は「ビーバーの肉はまずくて食に値しない」ときっぱりコメントしました。

(ポーランド在住ライター ソルネク流 由樹)

ビーバーは確かにあまりおいしそうではないですね。そういえばラッコも毛皮を取るだけで、肉はアンモニア臭が強くて食べられたものではないという話を聞いたことがあります。

 

ハンガリー

アヒルとガチョウはちょっとしたご馳走でレストランのメニューでもよく見かけます。どちらもレバーはフォアグラに。ハンガリーはフランスに次ぐフォアグラの生産量を誇る国です。

七面鳥は安価なので食堂や学食の定番。ちなみにアヒル、ガチョウ、七面鳥は野生ではないので肉屋に並びます

ジビエ、ハンガリー語で「ヴァドフーシュ」(野生肉)は鹿、ノロジカ、キジ、ホロホロ鳥

ほろほろ鳥

マガモ、イノシシなど。ブダペストの中央市場にはこれらを取り扱う専門の肉屋が地下でひっそりと営業しています。

(ハンガリー在住ライター 鈴木文恵)

映画『愛染かつら』の主題歌「旅の夜風」の歌詞に「ほろほろ鳥」とあって、「ほろほろ鳥ってなんだろ?」とずっと疑問に思ってたのですが、実在していたんですね(笑)。語感からして熱帯あたりに生息していそうですが、七面鳥同様、温帯の鳥のようですね。

 

ルーマニア

イノシシ、鹿、熊、鴨、鳩、キジ。

(ルーマニア在住ライター 石川寛久)

そういえば日本では鳩はほとんど食べないですよね。

 

トルクメニスタン

鹿、鴨、水鳥、人によってはイノシシも食べるそうです。これらは個人で狩るか、狩りをしている人に前もって連絡しておき、獲れた場合に届けてもらいます。食べ方は「シャシュリク」(一口大の肉を串焼き)が多いですが、カスピ海の水鳥バラック(オオバンの仲間)などのように、中央アジア各国の国民食パロフ(肉と大量の玉ねぎ、人参を炊き込んだピラフ)にしてご馳走になったことがあります。

バラックのパロフ

バラックのパロフ。ⓒギュルソユ慈提供

魚類では、カスピ海にいるチョウザメの、卵であるキャビアだけでなくサメ本体の方も食します。こちらはスーパーの冷凍コーナーで丸のまま冷凍されているのを普通に見かけます。小麦粉を振ってフライにすると、淡白ですがまぁまぁいけます。

ジビエではありませんが、日本人からみて珍しいのはラクダ肉でしょう。

ラクダ肉は女性が食べると不妊になると言われており、独特の臭いもあるため、牛や羊のように皆が好んで食べるわけではなく、どこの肉屋やスーパーでも売られているわけではありません。が、扱っているところはあり、缶詰まで売られているので、好む人も少なくはないようです。

ラクダの缶詰

ラクダの缶詰。ⓒギュルソユ慈提供

食べ方はシャシュリク(一口大の肉を串焼き)や煮込みなど様々です。

(トルクメニスタン在住ライター(元) ギュルソユ慈)

ラクダを食べるというのはさすがに中東に近い国という感じです。

 

以上、世界のジビエ肉第2弾「ヨーロッパ編」でした。次回は「アジア・アフリカ・オセアニア編」の予定です。

(文 柳沢有紀夫)

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