今回紹介するのは、ドイツのちょっと変わった名前の食品10選。日本語訳を最初に、そして写真を最後に載せますので、どんなものなのか想像しながらお楽しみください! ちなみに写真の「ブレッツェル」は、その形状からラテン語の「腕」(腕組み)が起源だそうですよ。
はじめまして。海外書き人クラブ会員・ドイツ在住ライターのひろこです。
1 氷山サラダ : Eisbergsalat (アイスベルクザラート)
ドイツ語でSalatは「サラダ」の意味もありますが、第一の意味はサラダの主要な葉野菜「レタス」。「氷山サラダ」とはレタスの仲間の中で生産量が最も多い「玉レタス」のことです。
名前の由来は、まだ冷蔵輸送技術が未発達だった20世紀初頭に、鮮度を保つため大きな氷のかたまりの上にこの玉レタスをのせて運んでいたことからだそう。英語でも同様のネーミングです。
2 牛乳米:Milchreis (ミルヒライス)
「牛乳米」として売られている米は、ドイツ在住の多くの日本人が求めてやまない、モチモチした日本の米にとても近い種類の米です。主食として食べるよりも、ミルクと砂糖で煮込んだスイーツに使われることを想定しているから、「ミルヒライス」。プリンなどデザート類の売り場に置かれることもあるそうですよ。
3 北海道:Hokkaido (ホッカイドー)
このあざやかなオレンジ色のかぼちゃ「Hokkaido Kürbis (ホッカイドーキュルビス)」は、食用のかぼちゃの中でも多くドイツの市場に出回っています。今から30年ほど前に、ミュンヘン在住の日本人が故郷の北海道から種を輸入して広まったそうですよ。ドイツでホッカイドーと言えば、かぼちゃ!
4 木のケーキ:Baumkuchen (バウムクーヘン)
カタカナで読めば馴染みのあるお菓子ですね。ドイツ語のBaum は「木」。このケーキ独特の年輪のような切り口にちなんだ名前です。
およそ100年前、第1次世界大戦の捕虜として広島に収容されていたドイツ人ケーキ職人が日本で初めて焼いて以来、日本で広く愛されているバウムクーヘンですが、本場ドイツではこの東部ドイツ発祥のケーキを知らない人も多数!
ただ現在ではクリスマスの時期に、チョコレートでコーティングされたバウムクーヘンが季節ものとしてスーパーにも並び、知名度が上がっているかもしれません。でも日本のバウムクーヘン愛にはまだ及びません!
5 学生のエサ:Studentenfutter (シュツデンテンフッター)
ぎょっとする名前で新しいジャンクフードかと思いきや、数種類のナッツとドライフルーツを一緒に詰めた健康的なおやつのこと。そして意外にも17世紀からの歴史があるのです。当初レーズンとアーモンドの組み合わせがこう呼ばれたとのこと。後に他のナッツやフルーツも加わりました。授業の合間のおやつにぴったりですね。
6 口袋:Maultaschen (マウルタッシェン)
南ドイツのギョウザともラビオリとも言えそうなこの料理。小麦粉を練った生地の袋(タッシェ)の中に肉やほうれん草などの餡が入っています。一説にはかつてキリスト教の戒律で肉食を禁じられた期間にも肉を食べたくて、袋の中に肉を隠せば神様もきっと見過ごすだろうと考案した料理とか。
Maul(マウル) は「口」の意味ですが、犬など人以外のけものの口を指します。筆者が想像するに、禁を犯した人はその食欲をけもの並みだと自虐したのかもしれませんね。名前の起源は諸説あるようです。
写真のようなできあいの品は、ゆでてスープに入れたりソースをかけたりしていただきます。焼き目をつけるのもおいしいですよ。
7 神々のデザート:Götterspeise (ゲッターシュパイゼ)
こんな壮大な名前がついた食べ物って何だろう!? 実は何のことはない、派手な色に着色したゼリーのことでした。当初は米国で発売され、欧州に伝わって人気を博したそうです。そこでドイツ語でつけた素敵な(?)名前が、これ。新発売当時はなめらかさとプルプル感が新しく、神々しかったのかもしれませんね。写真の左手に写るゲッターシュパイゼは、上からかけるソース付きです。
8 猫の舌:Katzenzungen (カッツェンツンゲン)
これ、知ってる! 薄いビスケットのラング・ド・シャ! ……と思った人もいるかもしれませんが、おしい!
確かに同名のフランス菓子がありますが、ドイツの「猫の舌」は薄く丸みを帯びたチョコレートでした。さすがチョコレート生産量世界トップクラスの国ドイツ! 形状もなかなかリアルです?
9 柱:Stollen (シュトレン)
日本でも徐々に知名度があがってきたシュトレンは、白い粉砂糖をまとったずんぐりした飾り気のないケーキ。クリスマスを心待ちにする時期に食べます。
「支柱」を意味する古ドイツ語のStolloに由来するといわれる名前。建物を支える柱か一里塚のようにどっしりとしたたたずまいで、中世あるいはそれ以前の時代から脈々と受け継がれてきた伝統の焼き菓子です。
10 自転車乗り:Radler (ラードラー)
ビールをレモネードで割ったアルコール飲料。居酒屋に次々に押し寄せる自転車乗りたちがビールを大量に飲んだため店のビールが底を尽きそうになったとき、店主がとっさにこの飲み物を考案して振舞うと自転車乗りたちに大変気に入られたという説があるそうです。
ここに挙げた10選意外にも、まだまだ面白いネーミングの食品がありますよ。ドイツにいらしたら、スーパーに足を運んでじっくり見て回ってはいかがでしょう?
(文・写真 ひろこ)