アメリカのブランドコンサルティング会社インターブランドが、「ブランド価値によるグローバル・ブランドランキング」を発表しました。2000年からスタートして、2017年の今回が18回目です。
今回はそのランキングを見るとともに、それに対する日本の新聞の反応や我々が考えるべき点についても書いてみたいと思います。
こんにちは。海外書き人クラブお世話係、オーストラリア在住の柳沢有紀夫です。
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1 ブランド価値によるグローバル・ブランドランキング」とは?
今朝(2017年9月26日)、各新聞社のインターネット版を眺めていたら、興味深い記事を見つけました。産経新聞の「世界企業ブランド順位、トヨタは7位に後退 6位浮上の韓国サムスンに抜かれる」です。
この、「ブランド価値によるグローバル・ブランドランキング」というのは会社の規模などを表したものではなくて、各グローバル企業の「ブランド力」がどれだけ強いかを表したもの。別の言い方をすれば、「世界の人々がそのブランドに対してどれだけ魅力を感じているか」のランキングです。
2 日本の各新聞社の反応
この産経新聞の記事を読んで、いろいろ気になることがありました。一つは「あれっ、他の新聞社のインターネット版で取り上げていたかなあ」ということ。
早速調べてみることにしました。調査したのはその産経新聞と朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞です。
日本時間の午前5時過ぎの時点でトップページに記事が掲載されていたのは、産経新聞のみ。サイト内検索をして、記事が見つかったのが日本経済新聞。一方、朝日新聞と読売新聞は、少なくともこの時点ではサイト内検索で記事はひとつもヒットしませんでした。
私がこの「世界のコトなら」で発表した【「世界一住みやすい都市ベスト10」2つを比較してみる】【「世界の大学ランキング」3つを比較してみる】といった記事でも書いたように「世界でのランキング(海外からの評価)を異常なくらい気にする」日本人なのに、ちょっと不思議な気がしました。まあ、このあとアップされるのかもしれませんが……。
3 「トップ10」と「100位までに入った日本企業」
ではまず「トップ10」と「100位までに入った日本企業」を見てみましょう。
カッコ内は前年度順位です。
- 1位(1)アップル
- 2位(2)グーグル
- 3位(4)マイクロソフト
- 4位(3)コカ・コーラ
- 5位(8)アマゾン
- 6位(7)サムスン
- 7位(5)トヨタ
- 8位(15)フェイスブック
- 9位(9)メルセデスベンツ
- 10位(6)IBM
- 20位(21)ホンダ
- 39位(43)日産
- 52位(42)キヤノン
- 61位(58)ソニー
- 75位(68)パナソニック
こういったランキングに食らいつくのが大好きな猛犬(笑)の私でも、まあ、納得できる感じがしました。
4 各新聞社のコメント
さて、このランキング記事を乗せた2つの新聞社の見出しです。
産経新聞は先ほども書いたように、「世界企業ブランド順位、トヨタは7位に後退 6位浮上の韓国サムスンに抜かれる」。……まあ「産経らしい」といえばらしいですよね。
一方、日本経済新聞は「企業ブランド価値 アップル、5年連続首位 トヨタ、6%減7位 17年、民間調べ」。結構淡々としています。
5 気にすべきなのは「日本の新興企業がランクインしていない」こと
産経の「韓国に抜かれて悔しい」という気持ちもわからないではないのですが……いちばん気にすべき点は、そこではないと私は思います。
ではどこなのかというと、「日本生まれの新興企業が入っていない」点です。
トップ10各社と「100位までに入った日本企業」の創業年を並べてみましょう。
- 1位(1)アップル 1976年
- 2位(2)グーグル 1998年
- 3位(4)マイクロソフト 1975年
- 4位(3)コカ・コーラ 1886年
- 5位(8)アマゾン 1994年
- 6位(7)サムスン 1938年
- 7位(5)トヨタ 1937年
- 8位(15)フェイスブック 2004年
- 9位(9)メルセデスベンツ1926年
- 10位(6)IBM 1911年
- 20位(21)ホンダ 1957年
- 39位(43)日産 1933年
- 52位(42)キヤノン 1937年
- 61位(58)ソニー 1946年
- 75位(68)パナソニック 1935年
一目瞭然だと思います。100位以内の日本企業で最も創業年が新しいのはホンダの1957年。60年前です。ところがアメリカの企業は40年ほど前のアップルやマイクロソフトが老舗に見えるほど、若い企業がランクインしています。アマゾンは23年前、グーグルは19年前、フェイスブックに至ってはわずか13年前の起業!
確かに日本でも新しい企業は次々生まれていますが、「世界ブランド」になっているところはそれほど多くないですよね。もちろん海外「にも」進出している企業はありますが、トップ100に入っている日本企業のように「海外こそが主戦場」の会社がどこまであるのか。もちろん企業形態によっては海外に出にくいところもありますが……。
日本経済は相変わらず「失われた10年」を過ぎても相変わらず低迷していますが、海外進出型というか「世界のトップに立とう」という意志のある企業が新たに生まれてこないのも一つの原因なのかもしれません。
株式会社インターブランドジャパン(つまり日本法人ですね)のサイトで、100位までのランキング(英語)と日本語解説が発表されているので、ご興味のある方はぜひ。
https://www.interbrandjapan.com/ja/data/BGB2017_PressRelease.pdf
※今回の記事は私、柳沢有紀夫の個人的な解釈で、海外書き人クラブの公式見解ではありません。
※追記
姉妹記事として
日本企業の売上高ランキングトップ50。でも驚くのはそこじゃない!
を発表しました。こちらもぜひご覧ください。
【文:海外書き人クラブ 柳沢有紀夫】
(「海外在住ライターを使ってみたい」と思われている方。「海外在住ライターになりたいと思われている方。耳寄りな情報があります。ぜひこのページの下のほうまでご覧ください)
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