連日新型コロナウィルス関連ニュースが絶えませんが、ついに感染者が増え始めてしまった日本の対策や現状を見ていると、中国在住の私が言うのもなんですが、気になって仕方ありません
海外書き人クラブ会員で中国海南省在住の林由恵です。
さて中国の最南端の島、ある意味、僻地の海南省では今どうなっているのか? 実際にここで生活をしている私の目線で、海南省がどういう対策をして現在どうなっているのかを紹介したいと思います。
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1 中国の海南省とは?
海南省とは中国の最南端の島、ハワイと同じ緯度にある南国のリゾート地のことで、湿度もあり、気温も高いため、一般的にウィルスが広がり難い環境にあります。しかしそのリゾート地という特性から、冬、特に春節には中国大陸から富裕層を中心とした多くの方々が避寒に訪れる島でもあります。そのため武漢からの観光客も多く、結果2020年2月20現在、感染者168人になっています。
それでも大都市の感染者数と比べるとはるかに少なく、しかも独立した「島」という特性上、隔離しやすくウィルスが入り難い状態と思えます。
では、そんな海南省はどんな対策をして、現状どうなっているのでしょうか?
2 いつもと違う静かな春節
中国の今年の春節は1月25日、多くの会社は23日~29日までお休みになります。コロナウィルス情報が流れ出し、警戒を呼びかけられ始めたのもこの頃。それでも人々は春節に入る前までは、マスクは着けるものの、レストランで食事をしたり、親族で春節を祝ったりと、おだやかに過ごしていました。たださすがに、爆竹や花火は例年になく少ない、静かな年越しとなりました。
翌、春節一日目、外は人が少なく「ウィルスの影響かな~」などと思いつつ、近所のスーパーに行くと、いつもなら夜まで営業しているはずのスーパーが18時で閉まっていて入れず、翌2日目に行くと、野菜の棚が空になっていて、お米の棚もほぼ空になっていました。嫌な予感がして、近くの市場に行くと、数は少ないもののちゃんと野菜が売られていてホッと一息でした。
買い物帰りに公園を通り過ぎると、大人だけマスクをして子供は外している家族、マスクを手に持って散歩している人、あごにひっかけている人等々、平和な様子でした。
しかしだんだんと「マスクをしないと非国民、外出して食事なんてもっての他」という空気感になり、SNSでは連日コロナニュースでもちきりになりました。
中国では、テレビのニュースよりSNSの方が早く正確な情報を掴めるので、みな携帯を手放しません。最新ニュースはすべて携帯から知ることが出来るのです。感染者ニュースは出身地、性別、年代、行動経路、すべて発表されます。そして感染者が出た場所を検索するサイトもあります。サイトは常に更新され、最新情報をすぐに確認出来るのです。
旅行で海南島に訪れた人も春節2日目には観光地が閉まってしまった為に、ホテルで過ごすしかなかった、と言います。生活に必要な食材を売る市場とスーパーだけは営業を続けていますが、春節休みで閉めた多くの店のシャッターは、その後も開くことはなくなりました。
3 春節休みが終わっても街はゴーストタウン
本来30日から仕事再開の予定だった多くの会社は、春節休みを延長し、早い所で3日から、多くの会社は10日からの再開となりました。また再開と言っても時短営業、交代での出勤、オンライン業務のみなどの対策となり、閉まったままのレストランは、2月20日現在、いまだに再開しません。もちろん映画館など娯楽施設はまったく再開のメドが立っていません。
KFCなどのファーストフード店は、店内飲食禁止、テイクアウトと配達のみの営業です。
入り口では体温検査、そして手渡しせずに、店員がテーブルの上に置いたら、お客は時間差で取りに行く、というシステムになっていました。
街に出るとまさにゴーストタウン状態、車も最低限しか走っていないため、日ごろ渋滞で困るメイン通りもガラガラで走りやすいです。
用事があって出向いた郵便局は11:30-15:00までという時短営業。中に入ると局員のおじさんがたった一人マスクをして座っていました。利用者も私一人だけでした。
4 2月に入ってからさらに厳しい対策に
1月末の時点ですでにマスク着用、不要不急の外出不可、大人数の集まりは禁止等々、様々な対策が取られていますが、さらに2月から始まったのは、マンションの外出制限。場所により違いますが、厳しいところでは2日に1回のみ外出可、午前中のみ可、一家族に一人だけ可、許可証を持っている人のみ出入り可、等々の制限が加わりました。もちろん入る際は必ず体温検査を行います。
そして時々調査員のような人が「いつから住んでいますか?」「最近武漢に行きましたか?」等々聞き込みに来られるようになりました。
そして以前は、マンション内の宅配ロッカーまで運んでくれた宅配便のお兄さんもマンション内に入れなくなり、入り口の警備室周辺に荷物を置きっぱなしにして、住民が自分で取りに行くようになったのです。マンションの消毒作業もかなり徹底しています。数時間おきに消毒しているらしく、エレベーターのボタンなどはいつも濡れていて消毒の臭いがします。
薬局では、店内に入れず、店頭で注文、店頭で受け渡しとなり、街角では無料健康診断や体温測定の場所が設けられるようになりました。
もちろんマスクや消毒液はどこに行っても買えません。とはいえなぜか持っている人はいるので、私などはそういう友人から譲って頂いたりしていました。
ある日、海南省の外事処が海口在住の働いている外国人に無料マスクを配ってくれることになり、パスポートと外国人就労許可証を持って政府のビルに行きました。すると配られたのは「日本のマスク」。
ここで、日本のマスクが貰えるとは思いませんでした。日本からマスクや衛生用品の寄付のニュースはよく見ていましたが、本当にあるんだなぁ~と、有効利用されていることにちょっと嬉しくなりました。
5 ピークを越えてさらに厳しい対応に
そして毎日見ているSNSでは、2月上旬をピークに、感染者数の増加が少しづつ緩やかになり始めました。これは良い傾向では?と私自身は少しの安堵を感じましたが、政府はさらに対策を厳しくしたのです。
会社や店が少しづつ再開している事もあり、ここで油断してはもとのもくあみ、といったところでしょうか? マンションの出入りはさらに徹底し、私が住んでいるマンションは体温検査のみで自由に出入り出来ていたのに、急に通行証制度になり、薬局では「風邪薬や解熱剤販売禁止」となったのです。そして「体調が悪い人は薬局でなく、病院に行くように」という通達がでました。
検査や2次感染が怖くて薬を飲んで誤魔化す人を防ぐためかもしれません。
この徹底ぶりは、ある意味感心です。「絶対にこのまま収束させるぞ!」という政府の意気込みが見られます。
6 すべての学校が「オンライン授業」で新学期再開
多くの学校が2月中下旬、遅い学校も3月から新学期を迎えます。しかし春節で故郷に帰っている学生は戻る許可が出ません。学校からは、「許可が出るまで帰校禁止」という指令。そして先生方は皆ネットを介した授業の準備にとりかかりました。
さらに海南省では、省外から入境した人は全員、14日間の隔離生活を強いられるのです。これはホテルや自分の住まいで大丈夫ですが、一歩も外に出てはいけないというもの。ですから学生がもし帰ってきても、2週間は動けないのです。しかも中国は多くの大学が学校内で寮生活なので、おそらく完全に安全になるまでは学生を戻さないでしょう。
7 海南省と日本を比べてみると
そんな状態の中国海南省で生活していると、「今の日本、大丈夫なのか?」と非常に気になります。
街でもマスクしている人、していない人がバラバラで、そして日本の場合、恐ろしいまでの満員電車があります。感染経路不明の感染者も出ている状態で、明確な政府からの指示はなく、真面目な日本人は多少の体調不良では仕事を休まずに働き続けています。
海南省ではここ最近(2月中旬)、5日間で感染者1名しか増えませんでした。それでも「ここまでするのか?」という対策はさらに強化され続けています。
いつ収束するか見えない現状ではありますが、今は日本に帰らず、ここ中国海南省で収束を待とうと思います。
(文と写真(冒頭の画像を除く) 林由恵)
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