1万3千以上の島々から成り、約300の民族が住むとされる、世界一の島国インドネシア。それぞれの民族がそれぞれの言葉を持っているため、国家独立の前後に国の統一を目指し、マレー語を母体として誰もが使える簡単な言語が作りだされました。それがインドネシア語です。そのため、「世界一簡単な言語」といわれているのです。日本人からしても、英語より発音も文法もずっと簡単なので、覚えやすいといえるでしょう。
こんにちは。インドネシア・バリ島在住の田尾蓮果です。
私は海外書き人クラブに所属しており、現在はフリーランスでライター、エディター、イラストレーターなどをやっています。私がインドネシアに来たのは1992年。ジャワ島中部の古都ジョグジャカルタにあるガジャマダ大学に1年間の語学留学をしたのがきっかけでした。ここではそこで学んだこと、バリ島に移り観光業界で学んだインドネシア語などをお話したいと思います。
スポンサーリンク
1 挨拶はSelamat(スラマッ)が基本
インドネシア語で「おはようございます」は「Selamat Pagi/スラマッ パギ」になります。昼間の「こんにちは」は「Selamat Siang/スラマッ シアン」、夕方は「Selamat Sore/スラマッ ソレ」、「こんばんは」は「Selamat Malam/スラマッ マラム」です。
Pagi(パギ)=朝、Siang(シアン)=昼、Sore(ソレ)=夕方、Malam(マラム)=夜という意味で、これに安全や平和を祈る言葉Selamat(スラマッ)をつけることで挨拶になります。
地元の人たちは家族や友人、同僚など、近しい間柄の人にはスラマッを省略して「パギ!」「シアン!」などと言いますが、仲良くなるまではスラマッをつけた方がいいでしょう。
ほかに、別れの挨拶(さようなら)として「Selamat Jalan/スラマッ ジャラン」=残る人が旅立つ人に、「Selamat Tinggal/スラマッ ティンガル」=旅立つ人が残る人にかける言葉もあります。Jalan(ジャラン)は道という意味で、「道中お気をつけて」とか「良いご旅行を」とかいう感じ。Tinggal(ティンガル)は住むとか残るとかという意味なので、旅立つ人が残る人の安全や平和を祈る言葉になります。
このように挨拶には相手の安寧な生活を祈ってスラマッをつけるのが基本です。覚えておきましょう。
ちなみに、Selamatの最後のtは発音しません。ほかの単語でもtやkで終わるものは日本語の「ッ」で終わらせるか、単語によっては発音しないようにしましょう。たとえばバリ舞踊の中でも人気のKecak Dance(ケチャッ ダンス)は、ケチャックではなくケチャッもしくはケチャと読むのが正しい発音に近くなります。ただしスラマッには必ず「ッ」入れてください。「スラマ」だと別の単語になってしまいますので。
2 「ありがとう」と「ごめんなさい」は必須
どこの国に行くのであっても、最低限ありがとうとごめんなさいは絶対必要というか、覚えて行くのが礼儀だと私は思っています。
インドネシア語のありがとうは「Terimakasih/トゥリマカシー」。これは結構有名ですね。なかには「テリマカシー」と書いてあるものもありますが、インドネシア語のeは「エ」と発音する場合と「ゥ」と発音する場合があります。日本語のカタカナに置き換えるのは難しいのですが、「エ」の口をして「ウ」と発音するといちばん近いと教わりました。ちょっと難しいという人はどちらでもいいので、自分で発音しやすい方を選んでください。地名にもBenoaというところがありますが、日本のガイドブックでは「ベノア」になっていたり、「ブノア」になっていたりします。日本語表記では表せない発音なので、バリ式で細かいことは気にしないでいきましょう。
ちなみに、TerimakasihというのはTerima(受け取る)とkasih(愛情、慈悲)がくっついた言葉です。トゥリマカシーで「あなたの愛情や慈悲を受け取りました」という感謝の言葉になるなんて、美しくステキな言葉だと思いませんか。
これも近しい間柄の人には略して「マカシー」と言うことがあります。インドネシアに仲良しの友だちができたら使ってみましょう。
また、丁寧に感謝の気持ちを伝えたい時やすごく感謝している時などは、たくさんという意味の「Banyak/バニャッ」をつけて「Terimakasih Banyak/トゥリマカシー バニャッ」と言います。
相手からトゥリマカシーと言われたら、「Sama-sama/サマサマ」と答えます。「どういたしまして」という意味ですが、同時に「お互いさま」という意味もあります。覚えやすい良い言葉ですね。けれど私の場合、お店とかでトゥリマカシーと言われたら、返事はやっぱりトゥリマカシーです。お店の人から言われる前に言うこともしばしば。「ありがとう」と言ってお店を出ればお互い気持ちいいですから。
次に、ごめんなさいは「Maaf/マアフ」です。胸の前で合掌して「マアフ」と言うと、ごめんなさいという気持ちがより伝わります。ただ、バリ島南部の観光地域やジャカルタなどでは、英語の「Sorry/ソーリー」を使う人も多くいますので、忘れてしまった時などはソーリーで代用することも可能です。
3 バリ人の合言葉Tidak apa apa(ティダ アパ アパ)
インドネシア、特にバリの人たちがよく使う「Tidak apa apa/ティダ アパ アパ」という言葉。バリ島旅行をしたことのある人は旅行中に何回か聞いていると思います。これは日本語では「大丈夫」と訳されることが多いですが、沖縄の「なんくるないさ」や英語の「ノープロブレム」の方がニュアンス的に近いでしょう。沖縄の人たちの「なんくるないさ〜」という感じを思い出してください。そう、ちょうどあんな感じなのです。
たとえば、あなたが何かしでかしてしまったとして、相手に謝るとたいていのバリ人は「ティダ アパ アパ〜」と言って笑ってくれるでしょう。略して「ティダ アパ〜」という時もあります。Tidak(否定の単語/英語のノー)とApa(なに)をくっつけて「なんでもないよ」くらいの感じです。Apaを2回繰り返すことによって強調しています。おおらかなバリ人らしい言葉です。あなたももし相手に謝られることがあって、それが許せる程度のことならティダ アパ アパと笑ってあげましょう。落ち込んでいる相手を励ます時にも「気にするなよ」という感じで使えます。
4 Saya(サヤ)とAnda(アンダ)を覚えましょう
インドネシア語で「私」は「Saya/サヤ」で、「あなた」は「Anda/アンダ」です。これも非常によく使う言葉になります。
男性でも女性でも自分のことはサヤと呼ぶのが正式ですが、くだけた言い方だと「Aku/アク」、もしくは略して「Ku/ク」。友だち同士でなくても時々こういった言い方をする人がいますが、ビジターの私たちは使わない方が賢明です。相手が「アク〜」と言ったら、ああ自分のことを指しているんだなと思ってください。
一方、アンダというのはちょっとかしこまった言い方に聞こえます。けれど、インドネシア語でほかに適切な言葉がないため、やはり「あなた」は「アンダ」と言うのがいいでしょう。ほかに、「Kamu/カム」というのがありますが、これは「おまえ」に相当するくだけた言い方です。自分からは使わないようにしてください。
一般的には「あなた」と呼びかけるのではなく、目上もしくは仕事先の男性には「Bapak/バパッ」、同じく女性には「Ibu/イブ」と言います。年下の場合はバリ人、ジャワ人、華僑などによって呼び名が変わり、覚えるのが大変なのでアンダにするか、目上、目下かかわらず子ども以外の男性はバパッ、女性はイブと呼んだ方が無難です。名前がわかっている相手なら名前で呼びましょう。呼び捨てはちょっと、というのであれば、◯◯さんと、さんづけで構いません。観光業界にいる人たちは日本人がさんづけで呼び合うのを知っていますから。
5 質問はApa(アパ)?
なにかを尋ねる時にいちばんよく使うのが「Apa/アパ」でしょう。「なに?」という意味で、相手の言ってることがよく聞き取れなかったりした時にも「え?」という感じで「アパ?」と聞き返したりします。誰かに話しかけられた時も「な〜に?」という意味で「アパ?」。アパは便利な言葉なんです。
そのほかにも、「Apa ini ?/アパ イニ?」と訊けば「これ(ini)はなんですか?」になります。わからないものを指さして気軽に訊いてみましょう。「それ」の場合は「Itu/イトゥ」です。レストランやショップなどでも使い勝手がいいですよね。
6 トイレはどこですか? トイレを貸してもらえますか?
これはまず絶対と言っていいほど必要な言葉です。覚えておいて損はありません。
「どこ?」と訊く時は「Di mana ?/ディマナ?」を使いましょう。manaが場所を表す言葉で、diは「〜に、〜で」になります。「トイレ」は「Kamar kecil/カマルクチル」。kamar(カマル)=部屋、kecil(クチル)=小さいで、直訳すると「小さな部屋」ということですね。やはり御不浄なので、インドネシア語でも遠回しな言い方をしています。さてそこで、「トイレはどこですか?」と訊きたい時は「Di mana kamar kecil ?/ディマナ カマルクチル?」が正解です。インドネシアに行く方は必ず覚えておいてください。
レストランなど、トイレがあるのがあたり前、貸してくれてあたり前のところでは、「トイレはどこですか?」と訊けば、すぐに教えてくれますよね。でも、たとえばショップや人の家などでどうしても我慢ができなくなってしまい、「貸してほしいんですけど〜」という時にはどうしましょうか? そう、「トイレを貸してもらえますか?」とお伺いをたてますよね。そういう時にはBoleh(ボレ)を使いましょう。「Boleh saya pinjam kamar kecil ?/ボレ サヤ ピンジャム カマルクチル?」です。bolehは「〜してもいいですか?」という意味で、pinjam(ピンジャム)は「借りる」になります。これも必ず覚えておきましょう。
ちなみに、pinjamは無償で借りる場合のみに使います。レンタカーのように有償で借りるのはsewa(セーワ)といいます。
7 試着してもいいですか?
ボレを使った文章をもうひとつ。これはショッピングなどで役立ちます。
「boleh saya coba ini ?/ボレ サヤ チョバ イニ?」。coba(チョバ)は「試す、試着する、試食する」などの意味です。よって、ブティックなどで気に入った服を指差しながら言えば「これを試着してもいいですか?」ということに。スーパーなどで量り売りのお菓子などを指差しながら言えば「これを試食してもいいですか?」になります。まったく同じ文章ですが、シチュエーションが変わることによって、意味も変わるんですね。
ボレもそうですが、チョバというのも、ものすごく便利な言葉です。友だち同士でごはんを食べている最中、自分の注文したものがすごくおいしかったので、友だちに「ちょっと食べてみなよ」という場合も自分のお皿を指差して「チョバ、チョバ」と言ったりします。語感もかわいらしいし、すぐに覚えられますね。
8 値段を訊いてみましょう
バリ島でも近年は定価制の店が増えました。けれどまだ値段のついていない商品を売っている店もチラホラあります。そういった店では売り手と買い手が値段交渉(つまり値切り)をして商品の価格が決まります。この交渉は初級クラスのインドネシア語では難しいので、値切りたい時は紙に値段を書くか、電卓を見せて話しましょう。ここでは定価制の店での値段の訊き方を説明します。
「いくら?」と訊く時は「Berapa ?/ブラパ?」を使います。商品を指差してブラパ?と訊くだけでいいのです。これにini(これ)をつけて「Berapa ini ?/ブラパ イニ?」にすれば、なお良いですね。値段に納得して購入する時は「Ya, saya ambil ini/ヤー、サヤ アンビル イニ」となります。「OK、これを買います」という意味です。ambil(アンビル)は本来「取る」という意味。「ちょっと、そこの本を取って」という時にも使いますが、「これを買います(持って帰ります)」という時にも使われる言葉です。
ところで、インドネシア語の数字は覚えましたか? これはレストランでもショップでもホテルでも絶対必要になります。観光エリアのスタッフは英語がしゃべれる人が多いので、わからないという顔をするとすぐに英語で値段を言ってくれますが、ここはひとつインドネシア語でコミュニケーションをとってみませんか。そこで、数字については次の項でゆっくり説明することにします。
9 数字は丸暗記するしかない
インドネシア語は文法が簡単な分、単語勝負といわれています。単語を丸暗記さえすれば、あとは簡単な文法をいくつか覚えるだけで、まぁどうにかなるということです。なかでも最たるものが数字。こればっかりは頑張って暗記するしかありません。めんどうですが、損をしないためにもしっかり覚えましょうね。
- 0 = Nol(ノル)、1 = Satu(サトゥ)、2 = Dua(ドゥア)、3 = Tiga(ティガ)、4 = Empat(ウンパッ)、5 = Lima(リマ)、6 = Enam(ウナム)、7 = Tuju(トゥジュ)、8 = Delapan(ドゥラパン)、9 = Sembilan(スンビラン)、10 = Sepulu(スプル)
ここまでは簡単です。問題はここから。
- 11 = Sebelas(スブラス)、12 = Duabelas(ドゥアブラス)
13〜19は、ティガブラス、ウンパッブラス……のように、ブラスの前に1桁目の数字を入れます。つまり、11から19は「◯◯ブラス」になり、◯◯に右側の数字を入れればいいのです。
- 20 = Duapuluh(ドゥアプル)
30、40……90は、ティガプル、ウンパップル……のように、プルの前に2桁目の数字を入れます。つまり、20、30、40、50、60、70、80、90は「◯◯プル」になり、◯◯に左側の数字を入れる事になります。
- 21 = Duapuluh satu(ドゥアプル サトゥ)
21〜99は、20、30などの数字を読んでから1桁目の数字を足します。例:32 = ティガプル ドゥア、58 = リマプル ドゥラパンなどです。
1から99まではこんな感じです。おわかりでしょうか? 次に100以上の数字です。
- 100 = Seratus(スラトゥス)、200 = Duaratus(ドゥアラトゥス)
もうおわかりですね? いちばん左の数字にラトゥスをつけると100のくらいになるのです。300、400……900は、ティガラトゥス、ウンパッラトゥス……のように、ラトゥスの前に3桁目の数字を入れてください。
では、128は?
128 = Seratus duapuluh delapan(スラトゥス ドゥアプル ドゥラパン)です。100のくらいの数字から順に読んでいきます。340はTigaratus empatpuluh(ティガラトゥス ウンパップル)です。
さぁ、1000のくらいにいきましょう。インドネシアの通貨は桁が大きいのでたくさん覚えることがあります。頑張りましょう。
- 1000 = Seribu(スリブ)、2000 = Duaribu(ドゥアリブ)
はい、これも100のくらいと同じです。いちばん左の数字にリブをつければいいのです。3000、4000……9000は、ティガリブ、ウンパッリブ……のように、リブの前に4桁目の数字を入れてください。ちなみに10より大きい数字で、いちばん左が1の場合はSatu(サトゥ)と読まずにSe(ス)と読みます。サトゥリブではなくてスリブというのはそのせいです。
- 1万 = Sepulu ribu、2万 = Duapulu ribu
万のくらいはpulu ribu(プルリブ)です。日本語と違って10,000の「,」で区切って読みます。つまり、10(pulu)+1000(ribu)なんですね。考えようによっては、日本語よりずっと簡単なシステムです。
はい、では10万はなんですか? 100,000の「,」で区切って読んでみましょう。答えはSeratus ribu(スラトゥス リブ)です。100を読んでから1000を読めばいいんですね。
同じように100万も読んでみましょう。1,000,000です。実はここからちょっとシステムが違ってきます。100万はSatu juta(サトゥジュタ)といい、スリブリブにはなりません。リブリブだと変ですものね。100万はサトゥジュタと覚えてください。200万はドゥアジュタです。Rp.1,000,000は日本円で1万円もしません。だからけっこうよく使う金額なんです。覚えないと損しますよ〜。
旅行で使う数字はだいたいこれくらいでしょうか。たくさんあるので大変ですが、1〜10までの数字と法則さえ覚えてしまえばこっちのものです。
10 バリ島大好き!
だらだらと書いてしまいましたが、最後に、「好き」という単語をひとつ。これも日本人にとって覚えやすい単語です。Suka(スカ)といいます。「バリ島が好きだ!」と言いたい時は、「Saya suka Bali !/サヤ スカ バリ!」でOKです。嫌いなものがあった時も「嫌い」という単語はあまり使わずにTidak suka(ティダッ スカ)=好きではない、と言いましょう。「ちょっと苦手」とか「あまり好きではない」という時は「Tidak begitu suka/ティダッ ブギトゥ スカ」になります。
どうかあなたがバリ島やインドネシアを好きになってくださいますよう、この記事が微力ながらお手伝いになれればと思っています。
長々と読んでいただき、ありがとうございました。楽しいご旅行を! Selamat Jalan !
【文:海外書き人クラブ 田尾蓮果】
(国によって事情は様々。変なものが高かったり安かったり。そんなお値段からお国柄を紐解いた本の告知が一番下にあります。ぜひご覧ください)
スポンサーリンク
スポンサーリンク
インドネシア語はすごく響きが簡単なので、楽しいですね。
数字がネックです・・・
https://japanesia.net/のサイトは結構役に立つので重宝しています。が、御年59歳、最近ものわすれが、好きこそもののといいますが、やればやるほど、忘れている今日この頃です
yosio様、コメントありがとうございます。人生100年時代ですから、まだまだお互い楽しみましょう。(海外書き人クラブお世話係・柳沢有紀夫)
半年前マレーシアへ、今回インドネシアジャワ島へ。少し会話や単語を覚えて行きそれなりに通じたのは楽しいことです。こちらのbroken Indonesiaにも微笑みながら相手をしてくれるのは嬉しかった。特にインドネシアの方がよりパワーアップして臨んでいたので、旅の充実感をより強く感じました。もちろんこのページも役立ちました。
hoshi-ha-subaru様
コメントありがとうございます。海外書き人クラブお世話係の柳沢有紀夫です。
英語が国際語になりながらも、いや、なればなるほど、
自分たちの国の言葉で話そうとしてくれる外国人観光客というのは、うれしいものなのでしょうね。
hoshi-ha-subaruさんの姿勢はずはらしいと思います。それでこそ国際交流です。
今後とも「世界のコトなら」をよろしくお願いします。
柳沢有紀夫