突然ですが、あなたは「昆虫」を食べたことがありますか?
こんにちは。海外書き人クラブお世話係の柳沢有紀夫です。世界各国で「昆虫」が食べられているか、会員たちとともに調査してみました。
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日本は少子化により「人口減少」が予想されていますが、世界的には「人口増加」による「食料危機」が懸念されていますね。そんな状況の中、家畜のように大量の餌を与えなくても済むタンパク源として注目されているのが「昆虫食」です!
というわけで世界各国に在住(「元在住」も含め)するライターに訊いてみました!
「あなたの住む(住んでいた国)では昆虫を食べますか?」
回答は23の国と地域から来ました。あなたは「食べる国」「食べない国」、どちらが多数派だと思いますか?
- ※最初にお断りしておきますが、その国全土にわたって調査したわけでも、法律的な可否を調べたわけでもなく、あくまでも現地在住者が一生活者の視線で、身の回りの状況を伝えるものです。つまり「食べない」と答えた国でも、必ずしも「食べる人は絶対に一人もいない」というわけではありません。
- ※先住民族や少数民族だけが食べている場合は「昆虫食をまだあまり見ない」に分類しました。
- ※今回は「昆虫がそもそも苦手」という方々以外にとってはショッキングな画像はないと思うので、安心してご覧ください。
1 昆虫食が「一般的にある」国と地域
【アジア】
- カンボジア (回答者 森純(長期滞在中)
- タイ (回答者 森純(元在住))
- 中国 (回答者 上沢聡子)
【北中南米】
- メキシコ (回答者 長谷川律佳)
- グアテマラ (回答者 草野あずき)
- ペルー (回答者 原田慶子)
2 昆虫食が「最近出始めた」国と地域
【ヨーロッパ】
- スイス (回答者 小島瑞生)
【北中南米】
- アメリカ(回答者 カリフォルニア州在住 前田えりか)
- カナダ(回答者 バレンタ愛)
3 昆虫食を「まだあまり見ない」国と地域
【アジア】
- インドネシア (回答者 さいとうかずみ(元在住))「インドネシアは多くの島からなるため、場所によっては毛虫や幼虫も食べるそうです。ただジャワ島(首都ジャカルタのある島)では、一般的に食べているイメージはありません」
- モルディブ (回答者 重谷泰奈)
【ヨーロッパ】
- オーストリア (回答者 ひょろ・御影実 / 元在住 バレンタ愛)
- スウェーデン (回答者 中妻美奈子)
- スペイン (回答者 田川敬子)
- トルクメニスタン (回答者 ギュルソユ慈)
- ハンガリー (回答者 鈴木文恵)
- ポーランド (回答者 ソルネク流 由樹)
- ルーマニア (回答者 石川寛久)
【北中南米】
- パラグアイ (回答者 かどまどか(元在住))
- ブラジル (回答者 マンゲイラ靖子)
【アフリカ】
- モロッコ (回答者 宮本薫(元在住))
【オセアニア・南洋】
- オーストラリア (回答者 柳沢有紀夫)「観光地などでアボリジニの伝統食として、イモ虫やアリを食べさせるところもありますが、一般的ではないです」
- グアム (回答者 陣内真佐子)
「昆虫食が一般的」対「昆虫食が最近出始めた」対「昆虫食をまだあまり見ない」は6対3対14。昆虫食は意外と少ないようです。
「昆虫食が一般的」な国々はアジアと中南米、「昆虫食が最近出始めた」国々は欧米でした。
日本でも「イナゴの佃煮」は長野県や群馬県などの山間部では昔ながらの郷土色。「ハチの子」もそうですね。私は「ハチの子」は経験がないですが、「イナゴの佃煮」はおいしいなと思います。味も食感も「小エビの佃煮」によく似ていますし。
海から遠い内陸部で、かといって野生動物の捕獲は難しい。そんな中、昆虫は重要な「タンパク源」だったのでしょうね。
さて日本では「イナゴの佃煮」や「ハチの子」がありますが、世界各国ではどんな種類の虫たちが食べられているのでしょうか?
各国の「主な伝統的昆虫食」
まず初めに昔からその国で食べ継がれている昆虫食を見てみましょう。
【バッタ・コオロギ系】
メキシコで最もメジャーな昆虫食といえば、バッタ。「チャプリネス」と呼ばれ、炒めたものにリモン(ライム)やチリ、塩をかけてポリポリと食べます。
(メキシコ在住ライター 長谷川律佳)
コオロギです。カラリと香ばしく揚げたり炒ったりしたものに、唐辛子と調味料で味つけします。食べた人によると「香ばしくて海老のよう」で結構イケるそう。ほかにゲンゴロウ、タガメ、バッタも揚げて食べます。
(カンボジア長期滞在中ライター 森純)
東北部ではよく食べますし、首都バンコクにも専門屋台があります。バッタ、コオロギのほかタガメ、赤アリの卵、蛾の幼虫など。今ほど冷蔵技術が発達していなかったころには虫も貴重なタンパク源でした。現代では、ちょっとしたおやつ。揚げたバッタを食べたことがありますが、表面はカリカリしていて、足の食感がやや気になるほかは、いやな感じではありませんでした。
(タイ在住ライター(元) 森純)
↑
イナゴの佃煮は好きなので、「バッタ、コオロギ」は全然問題なく行けそうです。そして次は……。
【アリ】
オアハカ地方の雨季にだけ現れる大きな羽アリ「チカタナ」。濃厚な味わいのあるアリで、こちらはつぶしてソースとして楽しめるそう。オアハカの皆さんは、チカタナが出る時期には手にビニール袋をもって、道々で捕まえて食べるという話を聞きました。
(メキシコ在住ライター 長谷川律佳)
ハキリアリ(葉切蟻)は雨季が始まるとオスに羽が生えて女王アリと交尾するのだそうですが、このハアリはグアテマラではソンポポ・デ・マヨ(五月蟻)と呼ばれ食用の対象となります。頭と羽をむしりとられた姿で売られていますが、これを弱火でじっくりと炒ったものに塩とレモンをキュッとかけたり、トマトソースであえてみたりと食べ方は様々。5月から6月にかけての時期限定のメニューです。
(グアテマラ在住ライター 草野あずき)
【アリの卵】
また、アリの卵は「エスカモーレ」と呼ばれ、こちらは高級食材で「メキシコのキャビア」などと称されたりもするようです。
(メキシコ在住 長谷川律佳)
赤アリの卵も食べます。
(タイ在住ライター(元) 森純)
【幼虫系】
蛾の幼虫も食べます。
(タイ在住ライター(元) 森純)
アマゾンでは、ヤシの木に生息するゾウムシの幼虫「スリ」を食べます。
丸々と太った白い幼虫で、串焼きにして食べるのが一般的。見た目はグロテスクですが、クリーミーで白子のような舌触り、味は悪くありません。日本人にはお醤油があると食べやすいかもしれません。
(ペルー在住ライター 原田慶子)
↑
「お醤油があると食べやすいかも」というかなり攻め込んだコメントが好きです(笑)
【セミ】
農村部では今でもあると思います。雲南省でさかんだそうです。広州のレストランのメニューにはほとんどありません。
中国北部ではセミを食べるそうです。(子供が木に登ってとり、あぶっておやつにするイメージです)
(中国在住ライター(広州) 上沢聡子)
【ゲンゴロウ】
ゲンゴロウを揚げて食べる習慣があり、村落部では貴重なたんぱく源です。
(カンボジア長期滞在中ライター 森純)
【タガメ】
タガメも揚げて食べる習慣があります。
(カンボジア長期滞在中ライター 森純)
タガメも食べます。
(タイ在住ライター(元) 森純)
【サソリ(正確には昆虫ではないですが)】
サソリの素揚げもあります。
(タイ在住ライター(元) 森純)
サソリをcachaçaというラム酒につけて飲む人はいます。サソリ自体は食べませんが度が強くなるとかで、農作業で拾ったサソリをお酒につけて壁にずらっと並べているお宅もあります。
(ブラジル在住ライター マンゲイラ靖子)
各国の「最近出始めた昆虫食」
次にあげるのは「将来的な食料危機対策」などの意味で、近年になった食べられ始めた昆虫食です。
【バッタ・コオロギ系】
伝統的に昆虫を食べる文化はないと思うのですが、最近、「肉よりサステイナブルでヘルシーなタンパク源」として昆虫食に注目が集まっていて、昆虫を売るスタートアップ企業がいくつか登場しています。一番人気はコオロギで、そのままスナックとして食べる商品や、コオロギから作ったプロテインパウダーなどがあります。
(アメリカ在住ライター(サンフランシスコ) 前田えりか)
一般的になって来ていると思われるものに「コオロギの粉末」があります。プロテインを摂るためにスムージーなどに入れて飲むようでスーパーにも売られています。
(カナダ在住 バレンタ愛)
一般的な昆虫食といえるものはまだないのですが、2017年5月から昆虫食がスイスで解禁になったので、それ以来昆虫食材が買い求めやすくなりました。エコや食糧危機にぴったりだという昆虫食に興味津々なスイス人は多く、現在はコオロギ、トノサマバッタ、ミールワームという甲虫の幼虫の3種類の販売が許可されています。
これらの虫を粉状にし、スパイスなどで味付けをしたハンバーグや肉団子(虫団子?)もスーパーマーケット等で買うことができます。スイスで昆虫食は現在発展途上中といった感じですね。(画像あり/スーパーマーケットで販売されている昆虫食材)
昆虫食はあの見た目がグロテスクだとドン引きする人も多いですが、前向きな人も多いです(若者とか)。
(スイス在住 小島瑞生)
【甲虫の幼虫系】
ミールワームという甲虫の幼虫も販売が許可されています。
(スイス在住 小島瑞生)
以上が「昆虫食のレシピ集」でした。結構多くのものが食べられていますね。
冒頭にも書きましたが、世界的には「人口増加」による「食料危機」が懸念されています。日本が「人口減少」だからといって他人事ではありません。
というのは世界的な食料不足になれば、輸入価格が高騰するだけでなく、諸外国が食料の「輸出禁止」という政策をとることも大いに考えられます。自国民から餓死者まで出して外貨を得ようとすれば、暴動が起こるでしょうから。
農林水産省によると日本の2017年の食料自給率は、カロリーベースでわずか38パーセント。いわゆる「フードロス」を減らしたとしても、全人口の胃袋を満たすのは容易ではありません。
「イナゴの佃煮」などの伝統食以外にも「昆虫食」を探す時期が来ているのかもしれません。
(文 柳沢有紀夫)
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昆虫食のお話、興味深く拝読しました。未来の食料を探るための注目の課題、学生など若手研究者に奨励しています。ありがとあございました。
コメントありがとうございます。若手研究者のみなさんの参考になれば幸いです。