すでに3回お届けした外資系用語解説。でも今までのはまだまだ序の口です。今回の「肩書き」がわかれば、怖いものはありません。なお、CEOやCCOのようにすでに一般常識になっているものは今回は除外してあります。
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基礎編
1 タイトル
「バンタム級王座」とか「(将棋)名人」ではなく、「肩書き」のこと。外資系の特徴の一つの、「とにかくタイトルを乱発する」というのがある。
2 バイス・プレジデント
訳すると「副支社長」。普通の会社は一人いるかいないかだと思うが、外資系の場合、乱発されることがある。私が在籍した社員500名くらいの会社では、「筆頭バイス・プレジデント」が一人、「シニア・バイスプレジデント」が数名、「(普通の)バイス・プレジデント」が10数人と、合わせて20人くらいいたときもあったように記憶する。正直言ってペーペーの新入社員よりも副社長のほうが多かった。
用例:石を投げればバイスプレジデントにあたる
まあ、理由はアメリカやイギリスから極東の島国に駐在させるのに、それなりの肩書きと給料を用意する必要があったからだろう。用法は、「新しく来たガイジンのタイトル、何?」「ただのバイス・プレジデント」「なんだ、ヒラかよ」。……平副社長って、何?
3 アカウント・エグゼクティブ/メディア・エグゼクティブ
「エグゼクティブ」なんてつくからすごく偉~い人のように見えるが、約一ヵ月の研修期間後、営業局と媒体局に配属された新入社員が最初に手に入れる肩書きがこれ。世間一般でいう「エグゼクティブ」では、全然ない。肩書きの乱発が得意な広告会社ならではだが、世間でも「ヤング・エグゼクティブ(略して「ヤンエグ」)なんていう言葉が流行ったからいいか。しかし学生時代の友だちと名刺交換したら、ビビらせることはできるよね。名刺にいきなり「エグゼクティブ」だもの。
ちなみに、制作局に配属されても、「クリエイティブ・エグゼクティブ」とはならず、普通に「コピーライター」や「アートディレクター」だった。……正直言って釈然としないものがあった。
4 コピースーパーバイザー
①コピーライター⇒②シニアコピーライターと昇格したあとに来るのが、③コピースーパーバイザー。という肩書き。「シニア」がとれた分、②よりも下に見える気がする。あと、なんとなくスーパーバイザーのクローンみたい感じも。
5 プロマネ
クライアントの「プロダクト・マネージャー」の略。または、CM制作会社の「プロダクション・マネージャー」の略。
前者の場合は、その商品の一応の責任者。会社によっては20代後半くらいの若者がなる場合もある。マーケティングや広告はもちろん、新製品の場合、商品内容もまで統轄する。責任のあるポジションだが、その分、責任を取らされることも多い。
後者は「マネージャー」と名ばかりの「雑用係」。だがプロマネがどれだけ優秀(機転が利いて、フットワークがいい)かどうかで、事前準備や撮影、編集現場の雰囲気まで、変わってくる。縁の下の力持ち。
応用編
6 ~さん
外資系では「苗字+肩書き」では呼ばない。理由はこんな事態が起こりうるからだ。「ええっと、どの案がオススメなのかな? 篠崎アートスーパーバイザー」「私としてはこの案で行きたいんですがね、大田アソシエイトクリエイティブディレクター」「ふむ。でもこっちの案もいいよね。和田エグゼクティブクリエイティブディレクターはどう思われますか?」なんてやってたら、いつまで経っても会議が終わらないから。それとタイトルが多すぎていちいち覚えていられないから。もう一つ挙げるなら、「肩書きで仕事してんじゃねえぞ」みたいな気概があったから。
ただ、日本企業相手のプレゼンでも社長や重役を「さん」付けで呼んで、まわりの空気を非常に緊張感の高いものにしてしまったことも、たまにある。
ちなみに私は元直属上司の社長だけは、基本的には「○○社長」と呼んでいた。「おまえ、『シャチョーさん、シャチョーさん、こっちこっち!』っていうキャバレーの呼びこみみたいな気分で、オレのことシャチョーって呼んでるだろ?」と、喜んでくれたからだ。というわけで、重要な話をするときだけは「○○社長」ではなく「○○さん」と話しかけ、それが「冗談合戦ではなく、今日は真面目な話です」という合図になっていた。
7 ~ちゃん
いわゆるギョーカイ人っぽく「~ちゃん」と呼ぶオヤジもいるにはいたが、1990年代後半には絶滅しかけていた。たま~に「~ちゃん」かつ「猫なで声」で話しかけられたら、ほぼ100パーセント、無理難題を押し付けられる前兆なので、「すっ、すみません。今から外出なんで」とか「あっ、もうミーティングが始まるんで」とか言って、尾崎豊のように行き先もわからぬまま、慌てて席を立つのが処世術だ。
8 ゲシュタポ
もちろんそんな役職名はない。「統制国家の秘密警察」から転じて、「ガイジンの衣を借る日本人」くらいの意味。
9 窓際族
本来は「閑職」を意味する。だが欧米人は窓がない閉鎖的なオフィスよりも、開放的なほうを好む傾向があるため、外資系では「窓際に個室を持つこと」または「窓を背にして座ること」は一つのステイタスとなる。
10 キーパーソン病
自分をキーパーソン、つまり主要人物だと思いこむこと。またはまわりにそう思わせたがること。実際の仕事をなーんにもしていない人間に限って、こう思いたがる。
特に外資系では、日本語がわからない偉いガイジンに対しては、「こいつはキーパーソンだ」と思わせることが出世の上で大切になってくるらしく、呼びもしない会議にやってきて大テーブルの真ん中にドンと座ったり、ミーティングの内容なんてまったく知らないのに呼ばれなかったと怒る輩が多い。
あなたはいくつわかりましたか? 「外資語到達度チェック」
- 9~10問正解 明日にでも外資系に入れます。入りたいかどうかは別にして
- 7~8問正解 すぐに外資系に溶け込めます
- 5~6問正解 外資系と取り引きしても途中でふきだしたりせずに過ごせます
- 3~4問正解 「外資系ごっこ」で遊ぶことができます
- 0~2問正解 もう少し努力が必要です。……何のために?
「外資系用語シリーズ」全4回。他もぜひお楽しみください。
【文:海外書き人クラブ 柳沢有紀夫】
(「海外在住ライターを使ってみたい」と思われている方。「海外在住ライターになりたいと思われている方。耳寄りな情報があります。ぜひこのページの下のほうまでご覧ください)
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