海外書き人クラブがお届けする『死語辞典』。「1950年代以前」に流行った死語とは? そのうち「ハ行」から始まるものの意味と用例・用法をまとめました。
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ハゲチョビン/ハゲチャビン
筆者はこの原稿を書く直前まで、「ハゲチョビン」とは単に「ハゲをかわいく言ったもの」だとばかり思っていた。だが今、ハタと気づいた。語源はもしかしたら「ハゲ+ちょっと鬢(びん)」なのではないかと。「鬢」とは、頭部の左右にある髪の毛のこと。前頭部から頭頂部まで月代(さかやき)を剃った残りの部分とことだ。
つまり、今で言う「スキンヘッド」、当時の言葉で「ツルッパゲ」の場合は「ハゲチョビン」にあたらないのではないか、と。たとえて言うなら、サザエさんの波平さんのヘアスタイルこそがまさに「ハゲチョビン」と言えるものなのではないか、と。
ただ「ハゲチョビン」ではなく、「ハゲチャビン」という言い方もある模様。で、今調べてみたらどうやら「ハゲチャビン」が正式で漢字で書くと「禿茶瓶」。つまり「ハゲ頭の形を茶瓶になぞらえた表現」らしい。茶瓶とはやかんとか土瓶とか急須のことらしいが……そんな形の禿げ頭というのが、ちょっとどういうものか想像がつかない。ちなみに「茶瓶頭」という類義語もあるらしい。
用法はツルッパゲの校長先生に向かって「ハゲチョビンってどういう意味ですか?」とか。……友だちにウケるためなら、廊下に1時間立たされることも厭わなかった小学校3年生のころの私は、確かに勇者だった。「1クールのレギュラーより1本の伝説」をモットーとする江頭2:50さんくらいチャレンジャーだったと思う。
今の小学生にもそういう気概をもってほしいね。うまく生きるだけが人生じゃないよ。大人の小型版になるのが子ども時代にするべきことじゃないよ。
【関連語】 「ドビン、チャビン、ハゲチョビン」「ドビン、チャビン、ハゲチャビン」
バタンキュー
(主に酒を飲みすぎて)バタンと倒れる、眠りこむこと。「バタン」は倒れたときの擬音だろうが、「キュー」はおそらく勢いでつけられたのではないか。または「急」なのかもしれない。ちょっと赤塚不二夫さんの匂いがする「ニャロメ~」なフレーズ。
用法は、「徹夜明けで飲んだから、ビール一本も空けないうちに、バタンキューですよ」。ただ、バタンキューという言葉だけではインパクトに乏しいから、江頭2:50分さんの「エガちゃん倒立」的な動きを伴うといいと思う。
発展家
トーマス・エジソンやドクター中松のような「発明家」ではないが、ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブのように世の中の「発展」に寄与した人……という意味ではもちろんない。
性的なことに関して進歩的な人。特に女性を指す。「自由奔放で素晴らしい」という肯定的な感じよりも、「性的にだらしない」という否定的なニュアンスを持つ。若い男なら一度はお世話になりたいが、一生世話してやりたいとは思えないタイプの女の子。
用法は「まあ、あの子は発展家だからね」。
【類義語】 (お)マタがユルい
【関連語】 ネンネ
パッパラパー
「バカ」の意味。
用例は「ああ、あの子? つきあうのはどうかと思うぞ。顔はかわいいしスタイル抜群だけど、頭の中身はパッパラバーだから」。
しかしこの時代は「ののしり語」が豊富だなあ。これだけ並べると、自分が非常に性悪なんじゃないかという気分になってくる。
【類義語】 クルクルパー 左巻き
左巻き
つむじが左巻きの人はバカという俗説から生まれた言葉。もちろん完全な俗説。「鼻がでかい人はアレも……」以上に根拠が皆無。でも幼稚園児のころ、真剣に「つむじが左巻きでなくて良かったぁ」と安心した記憶がある。
用法は、「アイツ、左巻きだからな」。
1973年に大ヒットした麻丘めぐみさんの『わたしの彼は左利き』の替え歌で、「わたしのわたしの彼は~ 左巻き~」と歌ったいけない子は、日本全国で1000万人以上にのぼるだろう。
話は飛ぶが『わたしの彼は左利き』のヒットで、「左利きってカッコいいよね」といった風潮ができあがった。左利き用グッズも多数売れられるようになり、鉛筆や箸を右手で使うように「矯正」されることは、これ以降格段に減ったはず。草野球少年だった私が左打ちを始めたのも、この歌の影響だった。
【類義語】パッパラバー クルクルパー
ヘベレケ
足腰が立たないくらいの泥酔状態のこと。語源は諸説あって不明だが、非常に雰囲気は出ていて、私は好きな言葉。拙著にサインを求められたとき、ときどき揮毫として書く。
ハナモゲラ語(タモリさんらがつくり出した「外国人による日本語のモノマネ」という言葉遊び)が本格的に登場する前に生まれた、その息吹を感じさせるフレーズ。用法としては、「オジサンは、ヒック! もう、ヒック! ヘベレケですよ~」。言われなくて100パーセント明白であることがほとんど。
【類義語】 ベロンベロン グデングデン
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