(海外書き人クラブがお届けする『死語辞典』が、1980年代に流行った「ネクラ/ネアカ」の意味を解説します)
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「ネクラ」は本来「(表面上は明るくふるまっているが)根は暗い人」の略語だったが、徐々に「根っから暗いヤツ」という意味に変わっていった。「みんなと楽しく過ごすよりは、一人で本を読んだり、ゲームをしたりするほうを好むヤツ」という意味。今でいう「オタク」に近いかもしれない。
用法は「今度の合コン、人数一人足りないんだけど、田中でも誘う?」「やめとけよ。アイツ、ネクラなんだから」とか。
「ネアカ」は「ネクラ」の反対語で、「根っから明るいヤツ」(=能天気なヤツ、楽天的なヤツ)というよりも、「みんなと明るく楽しく過ごせる人」という意味。大学生で言えば、女子大との合同のテニスサークルに入って、春から秋はテニス、冬はスキー、そして年中コンパなんかをしているタイプ。今で言うと、ケータイに何百人もの友だち(なのか「ただの知り合い」なのか知らんけど)の番号が登録されているっていうタイプね。または大学生なのにSNSの友だちが5,000人いるとか。
「マル金/マルビ」同様の秀逸な二元論だが、圧倒的に後者が多かった「マル金/マルビ」と違い、こちらのほうは「ネアカ9割:ネクラ1割」程度の比率だったと思う。つまり、「ネアカであらずんば人にあらず」的なところがあって、みんな強迫観念に駆られていた感じだ。バブル期の大学生もそれはそれで大変だったのだよ、他人に合わせなきゃいけないという意味で。
でも、どちらかと言えばネクラな感じがする主人公が登場する村上春樹さんの小説なんかが当時も人気(『世界の終りとハードボイルドワンダーランド』が1985年、『ノルウェイの森』が1987年)だったから、「ネアカ」のフリをすることに、みんな疲れていたのかもしれない。
【関連語】 マル金/マルビ