インド、中国、タイという地域を代表するグルメ大国に挟まれたミャンマーには、周辺国から様々なレシピが流れ込み、料理人たちが独自の食文化を築き上げてきました。この国ではその結果、日本ではほとんど知られていない多数の麺料理が存在しています。ここではそのほんの一部を紹介します。
こんにちは。海外書き人クラブ新会員、ミャンマー在住の北角裕樹です。
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ナマズの出汁のコクが病みつきになる「モヒンガー」
ミャンマーの定番の朝食と言えば「モヒンガー」。ナマズの身や骨をすりこぎで砕いて出汁をとるという個性的な伝統料理です。米の細麺にその場でスープをかけて提供される屋台がヤンゴンの街角では至る所に目につきます。
豆のかき揚げやアヒルの卵などトッピングを選ぶ形式は、ファストフードとして手軽に食べることができます。麺料理なのにミャンマー人はれんげで食べるところが、慣れるまでは違和感があります。
1000チャット(約80円)以下と庶民の財布にやさしい料理として親しまれている一方で、近年は高級モヒンガーを提供する店も現れています。
スープは魚介系にほのかなカレーのようなスパイスを合わせた味と表現するのが良いでしょうか。こってり味のヤンゴン風や、すっきりした味わいのミャウンミャ風など、地方によっても特色があります。
中華風のモツ満載「チェイオー」
中国系料理屋などで名物となっているのが「チェイオー」です。地場チェーン店の「YKKO」などが有名です。
米の細麺に半透明のスープを合わせるもので、豚肉のチェイオーにはミンチ肉のほか、モツやレバーなどの内臓が満載で、ほろ苦い味わいが口に残ります。生卵を落とすことも一般的。3000チャット(約240円)以上する店も珍しくないなど、緬料理の中では高級品ですね。
人気急上昇中の少数民族の味「シャンヌードル」
ミャンマー東北部のシャン州に住むシャン民族の麺料理です。シャン民族の食文化は中国の影響を強く受けており、ミャンマーの中でも麺料理が豊富。代表的なこの「シャンヌードル」は米を打った緬ですが、腰の強いタイプもあります。
スープありとスープなしがあるのですが、スープなしで食べる方がミャンマーでは一般的。鶏肉と豚肉を選べる店が多く、ミンチ肉をスパイスなどをペースト状にしたソースをかけて提供されます。伝統的に箸を使う文化があるシャン族の料理のため、多くのミャンマー人も箸で食べています。
世にも不思議な黄色いペースト「トーフヌエ」
同じくシャン料理の中でも、とても奇妙な麺料理が「トーフヌエ」です。トーフという名前から想像される通り、豆腐の麺料理なのですが、日本の大豆で作った四角く白い姿からは想像もできない黄色っぽいペースト状の食べ物なのです。黄色いのはひよこ豆で作っているためで、温かいペースト状のまま緬に絡めて食べます。
スパイスの効いた醤油のようなソースと一緒に食べるため、コクが出ます。熱いうちに早く食べないとペーストが固まってしまいおいしくないのでお気をつけて。日本人には想像しがたい食べ物ですが、慣れると病みつきになる人も多いですね。
70年大阪万博にも登場! 「シュエタンカオスエ」
ミャンマー中部のシュエタン村発祥の麺料理。鶏肉とココナツをベースにしたミルキーな味わいのソースを絡めて食べるものです。ほのかにスパイスが効いており、テイストはタイのカレーに似ています。
この料理が世に広まったのは「オーサカ・シュエタンカオスエ」という店がきっかけです。その名の通り、当時の独裁者ネウィン革命評議会議長の肝いりで、1970年の大阪万博のビルマ館に出店し人気を得たという日本とも縁のある麺料理です。今でもヤンゴン西部の同店では、大阪万博当時と変わらぬ味が楽しめます。
きなこと和える「ナンビャートウ」
細麺や丸麺が多いミャンマーでは珍しい平麺の料理です。小麦の平麺を常温のまま、きな粉やスパイスソースと和えて食べます。きな粉がスープの水分を吸い込んで緬に絡まるのが美味。
足が速いこともあり、朝食のみ提供する店も珍しくありません。同種の食べ物に丸緬を使った「ナンジートウ」があります。
これらの麺料理の多くは、軽食店や喫茶店で提供されています。
英国の植民地時代にインドから紅茶の文化が広まり、町中の喫茶店では甘いインド風の紅茶を飲みながらスナックや緬をほおばるミャンマー人をよく見かけることができます。ヤンゴンに旅行の際には、パゴダ巡りだけでなく、こうした庶民の食生活を味わってみてはいかがでしょうか。
(文と写真 北角裕樹)
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