17世紀以前の美しい街並みが今でも楽しめるオランダの古都ライデン。オランダ最古の大学もありオランダ史に欠かせない街ですが、日本ゆかりの地でもあります。散策するだけでも十分に楽しい場所ですが、海外書き人クラブ新会員の根井啓がより楽しめるスポットを紹介いたします。
オランダといえば風車! 「デ・ファルク風車博物館」(Molen De valk Musum)
「オランダといえば風車!」のイメージそのままの姿の「デ・ファルク風車」。なんと今から280年前の1743年に建てられ、1964年まで実際に使用されていました。
さてここでみなさんにクイズです。風車の中ってどうなっているかご存じですか?
特に何もないけれども灯台のようにらせん階段があって、いざ修理が必要なときには上までのぼれるようになっている?
いえいえ、じつは普通に「家」などとして使われていたのです。
というわけでこの「デ・ファルク風車」、現在は博物館として公開されています。当時の人が風車の中でどんなふうに暮らしていたのかがわかるよう、キッチンやリビングの様子が再現されていたり、実際に使われていた臼や資料などが展示されたりしています。
昔ながらの建物だけあって階段がほぼ梯子みたいに急になってはいますが、7階まである上部まで見学できます(降りるときはご注意ください)。
途中の5階部分から展望バルコニーに出ることができ、ライデンの街を全方位から眺めることができます。展望バルコニーは風車の羽根がすぐそばまで来ているので回っている時は一部エリアでは入場が制限されるのですが、代わりに風車が回っている様子を間近で見ることができます。
なお、すぐ近くにあるレンブラント橋の脇に建つ「デ・プット風車」(Molen De Put)は1987年に再建され、今でも現役で稼働している風車なので比べてみるのもおすすめです。
ここでまたみなさんにクイズです。オランダの風車ってなんのためにつくられたかご存じですか?
再生可能エネルギーとして風力発電も盛んになっていることから、「発電のため」と思われた方も多いかもしれません。でも正解は海に堤防をつくって干拓して国土を広げたオランダで、「干拓地の水をくみ上げるため」です。
デ・ファルク風車博物館はライデン中央駅から徒歩5分ほどとアクセスも良好ですので風車が気になるようでしたらぜひ行ってみてください。
デ・ファルク風車博物館 (Molen De valk Musum)
- 営業時間 火曜~土曜 10時〜17時
- 日曜 13時〜17時
- (最終入館16時半)
- 休館日 毎週月曜、1月1日、4月27日、10月2日、3日、12月25日
- 公式サイト https://molenmuseumdevalk.nl/
モダンな建物と展示物に圧倒される「ナチュラリス」 (Naturalis Biodiversity Center)
ナチュラリスの愛称で親しまれている国立の自然史博物館。ユニークな外観の建物のエントランス部分は大きな吹き抜け構造になっており、壮大でありながら柔らかい雰囲気で来館者を出迎えてくれます。
館内では迫力ある恐竜の化石の展示や陸の生き物、海の生き物の剥製の展示など量も豊富で圧倒されます。
「地球」(Earth)という展示コーナーでは鉱石がたくさんみられるのですが、入り口には日本をイメージしたものが置かれています。
日本とは異なるアプローチの展示も多く、「死」(Death)のコーナーで車に轢かれて死んでしまった動物をテーマにしたもの。「性」に関する展示などもあります。
ナチュラリスに限らずオランダのミュージアムでは見るだけでなく触る、体験できる展示内容になっているものが多く、子供だけでなく大人も夢中になれます。加えて主に子どもを対象としたワークショップも頻繁に催されており、様々な形でアートや科学に触れ合えるように工夫されています。ワークショップは週末に開催されることが多いので、土日は特におすすめです。
ナチュラリス生物多様性センター (Naturalis Biodiversity Center)
- 営業時間 10時〜17時
- 休館日 基本的に年中無休(詳細は公式ページをご確認ください)
- 公式サイト https://www.naturalis.nl
オランダ独立の歴史を感じる 「ライデン要塞」(De Burcht)
街の中心部にある人工の丘に11世紀に建造された小さな円形の「ライデン要塞」。要塞といっても円形の小さな展望台という感じで今では公園として解放されており、天気の良い日は城壁の周りの原っぱでくつろぐ人たちの姿をよく見かけます。
14~15世紀頃にはすでに要塞としては使われなくなっていたそうですが、16世紀に起きた80年戦争にてライデンの街がスペイン軍によって包囲された際には大活躍。ライデンの市民たちは1年以上にも及ぶスペイン軍の包囲に耐え抜き、これがオランダ独立への契機ともなりました。
この場所に立つとこんな小さな要塞でよく市民たちは耐え抜くことができたなとその凄さを実感できます。
要塞内に入れるだけでなく城壁にも登れるようになっており、そこからの眺望もおすすめです。
ライデン要塞(De Burcht)
- 営業時間 8時〜20時
- 休館日 基本的に年中無休
日本とオランダの架け橋「シーボルトハウス」(Japanmuseum SieboldHuis)
鎖国時代の日本に、医者として来日したシーボルトがオランダ帰国後に過ごした住居を改装した博物館「シーボルトハウス」。彼が日本から持って帰った日用品や仏具に絵画などが展示されています。
連れて帰った物の中にはカワウソやニホンザル、愛犬サクラなど生き物も含まれており、それらも剥製として展示されています。日本にちなんだ企画展もしばしば開催されており、日本とオランダをつなぐ博物館として機能しています。
イベントの際のホールとして使われる地下室は、シーボルトが住んでいた当時、食品などの貯蔵庫として使われていたままの姿で残っており、食べ物を吊るしして保存するためのフックやデルフト焼きと呼ばれるオランダの焼き物のタイルが貼られた壁を見ることができます。
さてここでまた問題です。どうして食料品などをフックに吊るして保存したのでしょう? ヒントはオランダの「地形」にあります。
はい、「ネズミなどから守る」という意味もあるのですが、河川が氾濫した場合の浸水対策なのです。たとえ地下の床が水浸しになっても、フックのあるあたりまで水は来ないことが多いのでしょう。運河の多い街ならではの目から鱗の保存方法ですね。
なお同じく市内にある「国立民族学博物館」(Rijksmuseum Volkenkunde)には、シーボルトが日本から持って帰ってきた収集品の展示や来日時に滞在した出島のミニチュアなども展示されています。
この博物館は世界各地の民俗学の資料をたくさん展示しており見応えがあるのでお時間あるようでしたらこちらにもぜひ足を運んでみてください。
シーボルトハウス(Japanmuseum SieboldHuis)
- 営業時間 火曜~日曜 10時〜17時
- 休館日 毎週月曜、1月1日、4月27日、10月3日、12月25日、12月26日
- 公式サイト https://www.sieboldhuis.org/ja
文化が薫る「壁の詩」
ライデンの街を歩いているとしばしば文字が書かれた建物の壁を見かけます。実はこれ詩なのです。オランダ語、英語、アラビア語など様々な言語で書かれた詩の中には日本語の作品もあります。
詩だけでなく国立ブールハーフェ科学博物館(Museum Boerhaave)の壁にはアイシュタインによる数式が書かれているなど、美しく文字が連なるものならなんでも良いという印象があります。
ちなみに日本語の作品は詩、俳句、短歌と計3つほどあるのですが、一番見つけやすいのはシーボルトハウスすぐ近くの松尾芭蕉の俳句。シーボルトハウス訪問と合わせてぜひ探してみてください。
また街の目ぬき通りには、お雇い外国人としてこの街から明治時代の日本で活躍した人物にちなんだレリーフが埋め込まれているなど、街を歩いていると想いもかけぬ形で日本語と出合うことがあります。
ライデンの街の壁に描かれた詩は下記から場所を探せます。
https://muurgedichten.nl/nl
あんな橋こんな橋。ライデンの橋巡り
ライデンはオランダの中でも運河が多く、大小様々な橋が街のあちこちに架けられています。船が通れるように跳ね橋になっている古い橋から、歩行者だけが渡れるモダンな階段状の橋などデザインも様々です。
毎年9月には市内に架かる100の橋を駆け抜ける約20キロのランニングイベント「100ブリッジラン」(100Bruggen Loop)が開催されます。
筆者も今年参加しましたがタイム計測などはない代わりに直前までエントリーでき、10キロのコースやウォーキングのカテゴリーもあって幅広い層が気軽に参加できる大会になっていました。
完走者には素敵なメダルが記念にもらえます(メダルのデザインは毎年変わるそうです)。
大会に参加できなくても公式ホームページからルートマップがダウンロードできるので、それを片手にライデンの橋巡りなんていかがでしょうか。
100ブリッジラン(100Bruggen Loop)公式サイト
100bruggenloop
ルートマップはこちらからダウンロードできます。
Route Map
ライデンはオランダの玄関口であるスキポール空港や首都アムステルダムから電車で30分ほどの場所に位置しており、ライデン中央駅から街の中心地へも徒歩で行くことができます。
古い街並みだけでなくナチュラリスのようなユニークでモダンな建物もありますし、詩の書かれた壁、バラエティ豊かな橋など様々な楽しみ方ができます。また猫の多い街でもあるので猫好きの方にもおすすめです。
(文・写真(但し、シーボルトハウス展示写真を除く) 根井啓)