ニュージーランド(以下、NZ)への駐在や移住、留学が決まったら、気になるのは家探しですね。NZ在住10年、国内最大の商業都市オークランドで4回の引越しを経験し、現在5軒目の家を賃貸中の海外書き人クラブの会員・森野みどりがNZでの部屋探しについて、10のポイントをご紹介します。
1.治安
NZは治安の良い国です。治安が良いとは言っても、車上荒らしや空き巣といった軽犯罪は珍しくありません。地域によっても状況は変わるため、不動産会社や大家さん、可能であれば現地在住の人の評判を聞いてみましょう。
契約する前には、できれば実際に足を運んで周りの環境を目で見て確認することをおすすめします。周辺の家や庭、道路や人々の様子を観察しましょう。同じ地域でもストリートによってガラリと雰囲気が変わることも。お手入れが行き届いているか、芝刈りがされているかなどチェックしてみてください。
2.家賃
NZの家賃は決して安くありません。地域にもよりますが、オークランドでは東京の家賃と比較しても同程度か、高く感じられることもあります。
例えばオークランドの中心部、シティと呼ばれる場所にあるアパートメント(日本のマンション相当)で2ベッドルーム、1バスルームの部屋を借りようとすると、2022年2月17日現在、620軒の候補がでてきます。週の家賃を見ると最低で週310ドル(23,250円)、最高で週1,200ドル(90,000円)です。
1人暮らしやカップルで、複数人と同居のルームシェアが選択肢になるのであれば、予算を抑えることもできます。また、シティから離れた地域の相場はもう少し低めです。
NZの家賃の支払いは週単位です。上記は1週間の家賃なので、1ヶ月にするとおよそ4倍になります。
*為替は1NZドル=75円で計算しました。
3.電気・ガス・水道
NZでは電気代や水道代が家賃に含まれることがあります。特にシティのアパートメントでは、水道代が家賃に含まれるケースが少なくありません。
都市ガスは普及しておらず、キッチンやシャワーの給湯に電気を使う物件が圧倒的に多いです。ガスを使う場合にはプロパンガスを手配して、空っぽになったら取り替える必要があります。業者に依頼すれば、満タンのボンベを持ってきて、空になったものと取り替えてくれます。
コンロもガスレンジよりIHの割合が圧倒的に高いと考えて間違いありません。写真右は古いタイプの電気コンロと電気オーブンです。キッチンのシンクは、左の写真のように小さいサイズが多いです。
*お湯についての注意点
給湯は電気を使って水をわかし、わいたお湯をホットウォーターシリンダーと呼ばれる金属製の大きなボトルにためて、キッチンやバスルームで使う仕組みになっています。このため家族が続けてシャワーを使うときには注意が必要です。長時間使ったあとはホットウォーターシリンダー内のお湯が減って、最後の人がシャワーを浴びるときにはお湯が足りなくなるかもしれません。
4.家具・家電・カーテン
シティのアパートメントでは家具や家電、カーテンが備え付けられている物件が多いです。我が家が初めて住んだ部屋にはソファやベッド、冷蔵庫、電子レンジ、TV、掃除機のほか、オーブントースターまで用意されていました。カーテンに関しては、付属されていない部屋はほとんどない印象です。
初めはシティ中心部に住み始め、少しずつ郊外に移っていった我が家の経験では、シティから離れても冷蔵庫と洗濯機が備えられている物件が少なくありません。我が家でベッドを購入したのは2軒目に引っ越したタイミング、冷蔵庫と掃除機を買ったのは3軒目のとき、洗濯機は4軒目でした。
カーテンはこれまで、買ったことがありません。
5.バスルーム
NZの住宅では、シャワーとトイレが同じスペースにあるスタイルが基本です。2ベッドルーム以上であれば、独立したトイレが別で付いていて、トイレが合計2つかそれ以上という物件もあります。
バスタブが付いている家はあまり多くありません。シティのアパートメントではほぼ皆無、郊外にある一戸建てでバスタブ付きをちらほら見かける程度です。
運良くバスタブ付きの物件を見つけた際の注意点は、バスタブにお湯を張ったあとにお湯が出なくなってしまう可能性があること。上記3でご紹介したように、電気でお湯をわかすことが多いことから、バスタブに大量のお湯を使ってしまうと、ホットウォーターシリンダーにお湯がたまるまでに時間がかかるのです。
6.ゴミ収集
生活が始まったらすぐに必要なのが、ゴミ収集についての情報ですね。ゴミは「可燃」「リサイクル」にわけて、ラビッシュビンと呼ばれるふた付きの四角くて大きなプラスチック製のゴミ箱に入れます。
可燃は赤いふた、リサイクルは青いふたです。
可燃の回収は毎週1回、リサイクルは2週間に1回のペースで、曜日は地域ごとに決まっています。収集日の朝8時までに敷地前の道路にラビッシュビンを出せばOK。
アパートメントであれば地下や1階に住民用のゴミステーションがあって、いつでもゴミを捨てられるシステムです。
ちなみにNZのゴミ収集車の側面には、運転席からコントロールできる2本のアームが付いています。道路に置いてあるラビッシュビンをアームでつかみ、収集車の上部にある開口部に中身を空けたら、ラビッシュビンを道路に戻して完了。下の3枚の写真で想像していただけるでしょうか。
7.芝刈り
路上や個人の庭、公園、公共施設の敷地などあらゆる場所に芝が敷いてあり、芝を伸び放題にしておくことは許されないようです。
賃貸の家の敷地内に芝が敷いてある場合、芝刈り費用が家賃に含まれるケースと、自分達で芝刈りをするケースがあります。芝刈り費用が家賃に含まれるのか自分達で刈るのか、自分達で刈るなら芝刈り機は借りられるのかなどの確認が必須です。
夏場は1週間か最低2週間に1度は芝を刈る必要があるので、慣れるまで少し大変かもしれません。
8.駐車場
シティであれば自家用車を持たなくても生活できるかもしれませんが、郊外に住むようであれば、1台は車を持つことになるのではないでしょうか。
敷地内に車を停めるスペースがない物件では、敷地の前の道路に路上駐車することが前提となっています。
ただし路上に黄色い線が引いてあるスペースは駐車禁止です。
9.日本の家との4つの違い
NZの家と日本の家とを比べて、大きく違う点を4つ列挙してみましょう。
・網戸がない
網戸に関しては新築の家では付いていることもありますが、一般的な家にはあまり網戸が付いていません。付いていても一部だけということが多く、夏場はハエに悩まされます。
・玄関がない
最近新築された家では状況が変わってきているようですが、日本の住宅のように玄関ドアを開けて靴を脱ぐスペースはなく、いきなりキッチンやリビングスペースにつながっているのが基本です。靴を置くスペースの確保には工夫が必要かもしれません
・日当たりがいいのは北向きである
NZは南半球に位置するため、日本とは逆に北向きの部屋が日当たりがいいのです。
・食洗機が標準装備されている
キッチンのシンクが小さいせいなのか、古めの物件に住んでも食洗機はほとんど標準で装備されています。
10.家の探し方
(出典:Property | Trade Me)
最後にご紹介するのは、部屋の探し方です。NZでの部屋探しは、Trade Me と呼ばれるサイトが便利です。
大手の不動産屋さんから小さな不動産屋さん、個人で家を貸している人のお部屋まで、さまざまな条件での検索ができます。希望の地域やベッドルーム(個室)とバスルームの数、戸建やアパート、タウンハウス、ユニットなど借りたい物件を検索してみてください。
タウンハウスとユニットって何? と思われるかもしれません。タウンハウスは昔の長屋と呼ばれる家のように、壁をはさんで複数の世帯が入居できる細長い作りの住宅です。2階建ての建物が多く、1世帯で縦に1階とその上の2階部分を占有します。
一方、ユニットは1世帯で1フロアのみを占有する、タウンハウスよりも小さな部屋を指します。ただしタウンハウスとユニットの違いについて調べたところ、現地の人の間でも議論になることがあり、定義はあいまいなようです。
家を探すときに気をつけるのは、入居できる日付です。すでに空室になっていて今すぐ入居できる家もありますが、数日〜数週間後に借りられることもあります。また、犬や猫を飼っている方は、ペット可なのかどうかも前もって確かめておきましょう。
NZは豊かな自然に恵まれ、親切で優しい人が多い国です。この記事が、安全で快適な家探しをする一助になりましたら幸いです。
(文・写真 森野みどり)