パリにせっかく行くのなら外せないのは、やっぱり古き良きフランスを自分のものにできちゃう「蚤の市」。今回はパリの有名骨董市の一つ、「ヴァンヴの蚤の市」を起点に、その周辺の知る人ぞ知る隠れ家的なスポットを、現地在住の海外書き人クラブ会員モリマリコがご紹介します。
パリは言わずと知れた観光都市。観光3~4日目ともなると、観光地中心部の賑わいにどっぷり疲れたという経験は付きものです。
そこで今回、パリ南部14区に位置するヴァンヴの蚤の市とその周辺をご紹介! 「観光地のちょっと先」にある、パリジャンのリアルな日常が垣間見える憩いスポットを開拓してみませんか? では早速行ってみましょう!
ヴァンヴの蚤の市(Marché aux puces de la Porte de Vanves)
パリのやや南西部、治安も比較的良いとされる14区のヴァンヴで開催される蚤の市は、規模感もちょうど良く、毎週末、朝早くからそれぞれのブースが所狭しと軒を連ねます。世界中から観光客がやってくる大人気スポットとして、さらに地元の常連さんも足繁く通う場所として、パリ名物の一つになっています。
定番のアンティーク絵皿に水差し、ガラス製品、カトラリー。高級感と親しみやすさが一堂に会するデコの数々。さらにビジュー(宝石や装飾具)や衣類まで! 見ているだけでも飽きない品揃えです。
個人的に、蚤の市で購入するお勧め品は、軽くて持ち運びやすいリトグラフやポスター、絵葉書きなど紙製品のアート。中にはどうみても私物であろう白黒写真や、筆跡生々しいスケッチなんかもあったりします。様々な絵柄、サイズのものがあるので、自分の部屋を飾ったり、好みを知る家族や友人に送ると大変喜ばれます。
線路上を歩けちゃう!?プティット・サンチュール(La Petite Ceinture du 14e)
さて、ここからはほとんど観光客はやってこないというほどの穴場中の穴場をご紹介。
突然ですが、皆さんは、パリの街をぐるっと囲むように鉄道が通っていたという歴史、そして今もその線路がそのまま残っているということをご存知ですか?
1851年に、貨物輸送の手段として鉄道を開通させたパリ。万博が開かれた1900年には、3900万人もの乗客を運んだ実績があるものの、同時期に開業したメトロの台頭著しく、1934年には完全に閉鎖に追い込まれてしまったという過去があります。この鉄道跡地をリニューアルして、パリ市が始めた新事業が、今からお話しするパリジャンの新しい憩いスポットとなる遊歩道。
ヴァンヴの蚤の市を楽しんだ後、すぐ歩ける距離にあるトラム(路面電車)のディド駅(Tram T3 Station Didot)に隣接するディド通り(Rue Didot)から入ることができます。
入り口を降りていくと、気持ちいいほど一直線に伸びる線路がつづきます。この景色だけでも圧巻。線路の両端は木々で覆われており、先ほど歩いていたパリの小道の喧騒はどこ吹く風。静寂と言ってもいいほど雰囲気がガラリと変わります。鳥のさえずりが聞こえ、空気も心なしか澄んでいるように感じます。
年中無休で開放しているこちらは、平日はマダムがゆっくり歩きながらおしゃべりを楽しんだり、犬を散歩したり。週末は恋人や家族連れが全長約2キロメートルの道のりを思い思いのスピードで楽しんでいる光景が見られますよ。
旧駅舎を改造したおしゃれなカフェ兼レストラン「ポワンソン」(Poinçon Paris)
続いては、一つ前にご紹介の線路上の散歩道からも繋がっているおしゃれレストランへ。
このレストラン、実は19世紀後半から20世紀前半まで「モンルージュ・サンチュール」という駅だったのです! 旧駅舎を改造して作られたカフェとバーも併設するこちらのお店。そのオシャレな佇まいに心奪われる方も多いのでは。内装もとっても素敵なんですよ。
週末はブランチをいただけ、外のテラスは地元の人で大賑わいです。店内はさすが旧駅舎、天井が高く開放感ある空間。毎日ではないものの、食事しながらのジャズコンサートが楽しめたりもします。ブランチやランチをしにきたり、サクッとお茶だけでもOKな楽しい場所です。パリの秘めた歴史に身を浸しつつ、ぜひパリジャンの如くお喋りに華をさかせてみてください。
パリ14区内にある世界大学都市って!? (Cité Internationale Universitaire de Paris)
続いてのパリ14区のおすすめスポットは、ズバリ「シテ・ユニベルシテール」こと、世界大学都市です。14区の中に更に都市? 14区に大学がいっぱいあるってこと? と不思議に思うかもしれません。
実はこちら、世界中から若者(学生や研究者、アーティストなど)を迎え入れ、広大な敷地内で共に生活し、学ぶことを目的としたキャンパスなんです。
40以上の寮を有し、居住者間の国際交流はもちろん、フランスの国際・公共政策の実験場、言い換えれば多様な学術や文化の生成を促進する実践的な場所としての位置付けもあるようです。
世界的にも珍しいこちらのキャンパス、一般に開放されているので、地元の人たちは散歩やピクニックのためのスポットとして重宝しています。我が家の子供たちも、しょっちゅうサイクリングやサッカーをしに訪れます。
季節によっては、友達を集めて芝生でのバースデーパーティーを開いたり、ギター片手にオリジナルソングを奏でにきたりと、自由そのものな光景が広がります。
またこちらの魅力の一つが、寮となっている建物の建築巡り!! キャンパス内の43戸の寮は、国ごとのパビリオンという形態で、「日本館」や「イギリス館」、「アルゼンチン館」などと名前が付けられています。
さらにスイス館は、近代建築の巨匠コルビジェが、イラン館(現在はアヴィセンヌ財団に名称変更)はフランスの建築家クロード・パランがというように、世界的な名建築家のエスプリを目の当たりにすることもできるのです。建築好きな方も、そうでない方も見に来る価値あり!のお勧めスポットです。
現地の人も足を止めるユニークな石畳の小道 (Square de Montsouris)
最後にご紹介するのは、世界大学都市からも歩いて行ける、全長200メートルほどのこぢんまりとした石畳の小道。
入り口には私有地と書かれていますが、一般の住宅街同様通行可能で、知る人ぞ知る隠れた名所なんです。パリの街並みの典型であるオスマン建築とも言われるアパルトマンの連なりとは異なり、こちらの道に並ぶ建物は全て一軒家。アール・デコ、アール・ヌーボー様式で建てられており、それぞれの外観がまるで違う。1戸1戸の家を見ては足を止めてしまう不思議な空間です。
1922年からあるこちらの住宅街は、多くのアーティストたちを魅了し、また彼ら自身の邸宅でもありました。パリを拠点に活動した日本人画家、「フジタ」こと藤田嗣治も、こちらに居を構えていたことがあるとか。
海外のガイドブックにはほとんど載らないような場所ですが、パリでも珍しい、こうした界隈を散歩することで、自分の観光そのものがグッと深掘りされ、オリジナリティ溢れるものとなることでしょう。
(文・写真 盛真理子)