近年のミスコン/ビューティ・ページェントは容姿だけでなく知性も重要な要素となっているとはいえ、とかく批判も多いのも事実です。その批判の内容は女性差別である、女性を見世物にしている、既成の女性観を押し付けて女性の社会進出をはばんでいる、などですが、しかしこれは少なくともフィリピン女性には当てはまらないといえるかも知れません。ではなぜそういえるのか? そこに迫るのが実は今回の「フィリピン女性の強さの秘密」の眼目なのです。
こんにちは。海外ライター集団「海外書き人クラブ」所属、フィリピン・マニラ在住のOkada M. A.です。
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世界四大ミスコンといえば、ミス・ユニバース、ミス・インターナショナル、ミス・ワールド、ミス・アースと言われますが、フィリピンは2013年から昨年2016年までの過去四年間のそれらの大会に、なんと6回の優勝を果たして「世界一の美女」を輩出しています。
- 2013:ミス・ワールドhttps://en.m.wikipedia.org/wiki/Miss_World_2013
- 2013:ミス・インターナショナル https://en.m.wikipedia.org/wiki/Miss_International_2013
- 2014:ミス・アースhttps://en.m.wikipedia.org/wiki/Miss_Earth_2014
- 2015:ミス・ユニバースhttps://en.m.wikipedia.org/wiki/Miss_Universe_2015
- 2015:ミス・アース http://www.wheninmanila.com/philippines-angelia-ong-crowned-as-miss-earth-2015/
- 2016:ミス・インターナショナル https://www.miss-international.org
そんな絶好調のフィリピン女性の活躍にはやはり、それなりの理由があるはず。今回はその強さの秘訣と思しき5項目に迫ってみます。
その1. フィリピンは世界でも有数の男女平等社会で、女性の社会進出は当たり前
世界経済フォーラム(WEF)は、世界の国々の男女格差(ジェンダー・ギャップ指数)を測るためにその格差の度合いを数値化し毎年発表していますが、2016年のジェンダー・ギャップ指数の格差の少ない国別順位ではフィリピンは世界7位です。アジアでは1位であり、アジア2位のシンガポールなどは世界では55位となっていますので、男女格差が根強く残るアジアではフィリピンは抜きん出ているといえます。(因みに日本は144ヵ国中111位)フィリピンは未だに経済では開発途上国に分類されますが、男女格差については北欧諸国などの福祉先進国についでのランクとなっていて、女性の社会進出、教育、健康福祉について良好に保証されているということになります。
(参照URL)
その2. フィリピンの海外出稼者は人口の一割超にあたる世界有数の約一千万人、その内の半数以上、65%は女性
主な海外出稼ぎ先は米国約350万人、中東諸国約250万人となっています。単純計算すると650万人程のフィリピン女性が海外で稼いで母国に送金していることになります。中東地域などは私達が想像するに、宗教・文化のギャップがフィリピンとの間には甚だしくあると思いますが、それにもめげず家族の為に送金する、その逞しさには感心するばかり。
(参照URL)
- 外務省ホームページ
- ジェトロHP:貧困と海外就労│フィリピンの事例から
その3. 1・2で見られるようにバリバリに国内外で仕事をしているにもかかわらず、フィリピン女性の平均生涯出産児数は約3.1人と多産
フィリピンの社会を見ていると、その子供の多さにすぐ気が付きますが、フィリピン女性の平均の出産開始年齢は23.1歳で、それだけに生涯の出産回数も多いのですが、実際には十代ですでに既婚、未婚にかかわらず子持ちである場合が珍しくありません。ところが就学などでも、本人に学業を続ける意思がある限りは、例え出産の為に休学した場合でも、また、経済的な問題で休学・復学を繰り返したとしても、特に卒業まで問題は生じない様に社会の暗黙の合意がある様に見えます。就職時も卒業証書さえあれば、就学年数が問われることは普通ありません。またフィリピンは基本的に大家族主義ですので、母子が孤立するということが無いように血縁を中心とした社会の構造が出来ているようにも見えます。この辺りのことは、私の詳しい記事が下記にありますので参照していただければ幸いです。
- 日経Dual:「世界の子育て事情」フィリピン
(参照URL)
その4. 「未婚の母」でも社会進出に障害が少なく、チャンスがある
私自身の経験からで恐縮ですが、私はマニラで三回転職をしましたが、その度に持参の履歴書とはまた別に会社のフォームで個人情報を記載する書類を作成しなくてはいけませんでした。その時の既婚・未婚・死別の記入の場合、フィリピンは法律で離婚が許されていないので、既婚か未婚か死別の選択肢しかなく離婚後のシングルで子持ちというカテゴリーはないのですが、既婚・死別の欄だけでなく、未婚の欄にも当たり前のように扶養する子供の情報を記入する様になっており、別にこれで就職差別がある訳でなく、税制や福利厚生にこの情報が使われるようになっています。
未婚の母であることが特に大きな障害にならず、オフィスには子持ちの未婚女性は沢山います。フィリピンは母系家族の傾向が強く、生まれて来た子供は父親の所在や存在に拘わらず一様に大切にされる伝統があります。未婚の母でもチャンスが掴める環境がある訳です。
その5. 国民の多くが英語を話せるお国柄で、自己アピールが英語でできる
世界に出稼ぎにどんどん出ていけるのも、世界一の数を誇るコールセンターにどんどん就職できるのも、ミスコンのプレゼンテーションで自己アピールできるのも、世界で4番目に多い英語話者数を誇る、フィリピン人の英語力の賜であるといえます。普通、高校の卒業レベルで日常英会話が、大学の卒業レベルで基本のビジネス英語が可能。
(参照URL)
近年の経済の発展によって益々フィリピン女性の社会進出が盛んになり、また育児や炊事でそれを支えるフィリピンの大家族主義が後押しがあり、その中で逞しく生きているフィリピン女性の象徴が、近年輩出するミスコンの世界一の美女達だといえるのかも知れません。そして更に一つ付け加えると……。
番外:その6 「第三の性」やゲイの人々への格差も少ない
そして実は、男女間の平等だけでなく、フィリピン社会には、トランスジェンダー、同性愛者などの人々への社会的な差別も少なく、実際私のオフィスにはそれらの人々が大勢います。少ない数ではありません。外見だけからいっても女装の男性、男装の女性も平気でいますし、それらも就職時に差別されることは少なくなっています。こうなると、正にフィリピンには元々のナチュラルなダイバーシティがある、という事が可能でしょう。もしも男女の格差だけでなく、これらの人々を含めた真の意味でのジェンダー・ギャップが考慮されれば、フィリピンは更に国際的な順位を上げるのではないでしょうか。
これらの環境があればこそ、強い女性達が高らかに女性としての美しさを誇ることも可能であって、それこそが「世界一の美女」を輩出する理由である、と私は考えます。
【文:海外書き人クラブ Okada M. A.】
(「海外在住ライターを使ってみたい」と思われている方。「海外在住ライターになりたいと思われている方。耳寄りな情報があります。ぜひこのページの下のほうまでご覧ください)
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