「推敲は誤字脱字や文法的な間違いを探す作業」と思っているあなた。それは大間違いです。
推敲とはただの「素材」でしかない最初の原稿を、きちんとした「作品」に仕上げるための大切な作業。取材やネタ集めがホップだとしたら、執筆がステップ。その後のジャンプである推敲をしっかりしなければ、どんなダイヤモンドも原石のままなんです。
そんな大切な推敲なのにまったくしていなかったり疎かにしている人が多いこと。だからこれから数回にわたり、推敲の仕方をお伝えします。
こんにちは。海外書き人クラブお世話係の柳沢有紀夫です。
じつは文章を書くという行為は、水彩画や油絵を描くのと同じなんです。「最近絵なんて描いてない」という方は、中学時代の美術の時間を思い出してください。
あなたはまず何をしますか?
おそらくほとんどの人が、鉛筆でのデッサンから始めます。最初から絵の具のついた絵筆を持つ人はほとんどいません。巨匠と称される人たちも同様です。
文章も同じです。まずは大まかなデッサンをする。そのあときちんと仕上げる。そうすることで、今までよりもずっと読みやすく、力強く、心にしみる文章をものにすることができます。
文章だって「急がば回れ」。つまり推敲こそが、いい文章を書く鍵なのです。
でもどうやって推敲したらいいかわからない?
そんなあなたのために、何回かに渡って「推敲の仕方」をお伝えしたいと思います。「文章読本」の類は世の中に多いですが、もしかしたら初めての「推敲読本」かもしれません。
第一回の今回は「文章全体の推敲」の仕方についてです。
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ポイント1 一つひとつ文は短くする
とにかく一度、速読でいいのでご自身の文章に目を通してください。そして「長すぎる文」を探してください。一行40字だとして4行にまたがっていたら明らかに長すぎます(もちろん小説などでウダウダ煮え切ない心境を描くという狙いで、わざと長すぎる文章にすることはありますが)。
基本的には長くとも80字以内で収める。これを目標にしてください。
ポイント2 会話文を入れよう
会話文のない文章は、それだけで堅苦しく感じられます。事実、理屈っぽくなりがちです。逆に会話文が頻繁に入っていると、それだけで読みやすそうに感じられるものです。
そのあたりのことはフェイスブックなどの「文章系のSNS」をやっている方ならわかっていただけると思います。たとえば冒頭の一文が【昨日の晩、帰ってくるなり夫がこんなことを口にした。】。そのあとは基本的に会話文で夫とのやりとり。そして最後は【なあ、夫。いい加減しろ!】でも、【ちょっと夫に惚れなおした。】でもいいのですが、そこだけは普通の文で結論を書いて終える。
そんな文章はついつい読んでしまいますよね。なんだか漫才の掛け合いのように見えるからでしょう。
逆に配偶者のやりとりを、延々と地の文(会話文でない普通の文)で説明した文章は読みたくなくなるものです。
会話文が効果的なのは、まず「パッと見ただけで読みやすそうに見える」から。さらにもう一つ重要なのは「臨場感あふれる文章になる」からです。
ぜひ会話文を入れてみてください。
ポイント3 一つ文に同じ単語は使わない
一つの文の中に同じ単語は使わない。これは基本中の基本です。できれば前後の文でも避けてください。
ただしそのとき書いているテーマのキーワードに関しては避けられないこともあるでしょう。たとえば「この街のおいしいアイスクリーム店」というテーマであれば、「アイスクリーム」という言葉の多様は避けられません。これを無理に「氷菓」とか「氷菓子」とか別の言葉を使うと、逆にわかりづらい文章になります。
ただし「アイスクリーム店」であれば、重複を避けられます。「ショップ」「店頭」「お店」などが使えますね(次の文章は、私がこの記事のために書いた文章です)。
(例)
次に紹介するアイスクリーム店は○○○○です。このアイスクリーム店の外観はピンクのパステルカラー。ひとたびこのアイスクリーム店の中に入るとまるでグリム童話のお菓子の家の世界です。そしてアイスクリーム店イチオシの一品はダブルチョコレートファジ。
↓
次に紹介するアイスクリーム店は○○○○です。外観はピンクのパステルカラー。ひとたび店内に入るとまるでグリム童話のお菓子の家の世界です。店長イチオシの一品はダブルチョコレートファジ。
ポイント4 必要要素は入っているか確認する
書き慣れていない人の文章は独善的になりがちです。ちょっと以下の例を見てみましょう。
(例)
10月になるとブリスベンのあちこちでジャカランダが開く。春を告げる花だ(そう、南半球にあるオーストラリアでは、日本とは季節が逆転するのだ)。いっせいに咲き、風で大量に散る花ということで、「桜みたいなものだ」と喜ぶ現地在住日本人もいるが、私はちょっと違うと思う。
というのはこのジャカランダ、10月に咲き始めてから12月まで延々約2ヶ月咲き続けるのだ。咲き始めてから2週間で散る桜とは開花期間がまったく違う。
桜の良さは儚さだ。晴れやかさの中に隠された切なさと慎ましさだ。
一応北半球と南半球の季節の違いを入れて、それなりに気を使った文章ですが、いくつか決定的に足りない情報があります。ジャカランダが「一年草ではなく木に咲く花」である点と、「青紫色の花びら」を持つ点です。
前者は桜との比較でなんとなく想像がつくかもしれませんが、後者はこちらもまた桜からの類推で「淡いピンク色の花びら」を想像する人が多いでしょう。
このように「何か足りない情報はないか」「日本でこの文章を読んでいる読者は理解できるか」、推敲時にはよく目を光らせてください。
ポイント5 話があっちこっちに行っていないか確認する
たとえばある店の紹介するとき。「場所はどこか?」「コンセプトは?」「人気料理トップスリーは?」「予算は?」「客層は?」など、順を追って書けばいいのです。ところが急に前の話に戻ったり、「人気料理トップスリー」の第3位と第2位の間に突然「客層」の話が入ってくる人がいます。これでは読者が混乱するだけです。
ポイント6 文章は「削るもの」と考える
基本的に文章は増やすよりも削ったほうがずっとシャープになります。たとえば二千字という指定のある原稿だとしたら、千字から増やすよりも三千字から減らすつもりで、まずは勢いにまかせて書いてみてください。
その後、推敲で減らせばいいのです。
ポイント7 最初の一文と最後の一文はビシッと決める
これはじつはものすごく大事なポイントです。「何事も初めが肝心」とか「第一印象が大事」といいます。そして「終わり良ければすべて良し」という言葉もあります。文章も同じです。最初と最後が重要です。
最初の一文が印象的であれば、「読みたい」気分になります。どんな話なのか期待に胸を膨らませます。逆に平凡であれば、「読むに値しない」と判断されるかもしれません。
最後の一文がかっこ良く決まっていたり、素晴らしい余韻余剰があったりすれば、「読んでよかった」という感想を持ちます。それは「この人の文章を次も読みたい」という気持ちにつながります。
最初と最後の一文は、本当に重要です。何度も書き直して、納得ができるものにしてください。
ではどんな出だしとまとめの文がいいのか? どうしたら書けるのか?
これはここで例を挙げるよりも、みなさんがお好きな小説ならエッセイなりをいくつもご覧いただくのがいちばんです。きっと珠玉の出だしとまとめに溢れていると思います。
一つだけ忠告しておきます。長くなり過ぎないこと。短い文でビシッと決めてください。それだけでその文章全体が見違えるほど良くなります。
繰り返します。最初の原稿は、ただの原石にすぎません。
【文:海外書き人クラブ 柳沢有紀夫】
(「海外在住ライターを使ってみたい」と思われている方。「海外在住ライターになりたいと思われている方。耳寄りな情報があります。ぜひこのページの下のほうまでご覧ください)
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