原石である草稿を、宝石に輝かせる推敲講座。2回目は「文頭」と「文末」のチェックポイントをお伝えします。
こんにちは。海外書き人クラブお世話係の柳沢有紀夫です。
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1 接続詞を極力減らす
段落の最初の単語が必ずと言っていいほど接続詞。……そういう文章を書く人はかなりいます。特に頭のいい……というか勉強が得意だった人に多いようです。というのは接続詞を多用すると、ものすごく論理的な文章を書いている気分になれるからです。
でも読んでいるほうからすると、「なんだか理屈っぽい文章だなあ」。だんだん読むのが嫌になってくるものです。
試しに一度書き上げたあなたの文章から、接続詞をどんどん抜いてみてください。全部取れとはいいません。極力減らしてみてください。どれだけ文章がスッキリするかおわかりになるはずです。
書くときから注意する必要ありません。下書き段階では思うにまかせて、どんどん勢いで書いてください。この時点では接続詞が入っていたほうが、自分の頭のなかが整理できることもあります。
削るのは最後でいいのです。
接続詞にはいろいろな種類があります。「そして」「すると」などの「順接」。「でも」「しかし」などの「逆説」。「さらに」「しかも」などの「並列」。「または」「もしくは」などの「対比・選択」。「すなわち」「つまり」などの「説明」。「さて」「ところで」などの「転換」です。
このうちいちばん削りにくいのは「逆説」です。前の段落とは反対のことを書くからです。ここで「でも」とか「しかし」とか「ところが」がなかったら、読者も「えっ、なんで急に正反対の話になったの?」と混乱するかもしれません。
次にカットしにくいのは「転換」です。前の段落と別の話になるからです。これもないと、読者は「なんで急に話が変わったんだ?」と疑問に思うかもしれません。
結局、削りやすいのは「そして」「すると」などの「順接」、「さらに」「しかも」などの「並列」、「または」「もしくは」などの「対比・選択」の3つです。これらを中心に削ることを考えてみてください。
ただしなんでもかんでも削ればいいということではありません。たとえばあることの例を4つ挙げる際に、最初は「まず〜」で始めて、「また〜」「しかも〜」「さらに〜」と続けて、畳み掛けるという手法もあります。意識してそういう手法を用いるのであれば有効です。
要は、なんとなく入っている接続詞を取るべきということです。
2 文末の「である」は極力避ける
理由は偉そうな感じがするからです。私もライターになりたてのころの文章はそんな感じで、今読みなおしてみると「おまえ、何様?」と自分ツッコミを入れたくなります。
自己満足的な文章を書く人が結構います。自分が偉いと思っている。または自分を偉く見せたいと思っている。私はこうした文章を「来賓の挨拶」と呼んでいます。そうです、卒業式や結婚式来賓の長くて、聞く人たちにとっては関係のない挨拶です。これでは読者はふりむかないことはご理解いただけるでしょう。
偉ぶってはいけません。「読者をヨイショしてナンボ」です。
そういう意味では受験生に対して「文章のお手本」と紹介される朝日新聞の「天声人語」、読売新聞の「編集手帳」といった一面コラムは、こと記事やブログといった一般的な文章を書く際には絶対に参考にしてはいけません。ものすごく偉そうに見えるからです。記者というエリート集団かつ文章のプロが書く新聞でも、普通の記事は一面コラムとはまったく違うと文体ですよね。
ではなぜ「天声人語」や「編集手帳」はあの文体でいいのかというと、「記者の中でもかなり地位の近い論説委員のような人が新聞社を代表して自社の説を伝えている」という暗黙の了解があるからです。ある意味で「紙面上の演説」ですからあれでいい、いや、あれがいいのです。
それを一般の人がやると、単に偉そうな、空気を読んでいない文章になります。
もう一つ真似をしてはいけないのが司馬遼太郎さんの文体。七十歳以上の年配の方でやってしまう人がときどき見受けられます。
司馬遼太郎さんの文章が悪いと言っているわけではありません。あれが許されのは、「司馬史観」などという言葉が生まれるほどある種の権威となった巨星だからです。
3 同じ文末にならないようにする
まずは例を挙げてみましょう。
朝、会社に行きます。上司や得意先の無理難題を聞き、できの悪い部下のサポートをながら、案件を次々とこなします。
お昼になったら自分へのご褒美としてちょっと奮発しランチを食べます。
午後もやるべき仕事をバッサバッサとこなします。そして定時までに山のような仕事をやり終え、ダラダラと残業に突入する同僚たちを尻目にサッと帰宅の途につきます。
デキる男アフターファイブが始まります。
ツッコミを入れたくなりませんか? 「小学生の作文かよ!」と。
でもこんな風に困惑される方もいるかもしれません。「ですます調」なら「です」と「ます」の2つがある。「である調」でも2つあるが、さっき「である」を避けろと書いてあった。残るは「だ」しかないではないか。
いいえ、だいじょうぶです。「と言える」「断言できる」「想像するに難くない」など様々な言い換えがあります。また少し言い切りのニュアンスは減りますが、「だろう」「かもしれない」と言い換えると、むしろ文章が柔らかくなり押し付けがましさも減ってきて効果的です。
4 体言止めも効果的
ひとつ前の項で語尾に変化をつけると書きましたが、じつはこれ、「である調」ではカンタンですが「ですます調」では結構難しいもの。たとえば先ほど挙げた「と言える」「断言できる」「想像する」を「ですます調」にすると、「と言えます」「断言できす」「想像します」と、すべて見事に「〜ます」の形になってしまいます。
そこで利用したいのが体言止め。「〜ます」や「〜です」の連発を避けるだけでなく、文章にある種のリズムをつけてくれます。
一つ注意していただきたいのは、体言止めの連発は避けるということ。通常は2文連続では使わないと覚えてください。
ただしたとえば「古都として栄えた京都。商都と言われる大阪。開国以来港町として賑わってきた神戸。」といったように列挙するときは例外です。
5 語尾にカタカナは使わない
まずは例を挙げてみましょう。
楽しかったヨ
ビックリしたネ
だからサァ
そうだよねェ
これは年配の方に多い特徴です。おそらくお若いときにこういう書き方が流行ったのでしょう。
流行に文句をつけるつもりはありません。最近でも「チョーうざい」とか「ムッチャキモい」とか、「正しい文法」とは言えないカタカナを形容詞の前につけるというパターンが流行っています。
でも文末をカタカナにするのは過去の流行です。逆にいえばこういう書き方をすると、非常にジジ臭く・ババ臭く感じられるものです。
今回は「文頭」と「文末」の推敲について書きました。次回はいよいよ、最も難しい文中の推敲についてです!
【文:海外書き人クラブ 柳沢有紀夫】
(「海外在住ライターを使ってみたい」と思われている方。「海外在住ライターになりたいと思われている方。耳寄りな情報があります。ぜひこのページの下のほうまでご覧ください)
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