日本ではスペインバルの人気が今でも続いていますね。今回はバスク地方から、本場のバルの楽しみ方をお伝えします。
こんにちは。海外書き人クラブ新会員、スペイン在住のフォトグラファー兼ムービーカメラマン小松麻美です。
実際スペインにはたくさんのバルやカフェがあるのですが、その土地によって少しずつ違いがあるのです。中でも、スペイン北部の「バスク地方」は独特のバル文化があります。
今回は「ピンチョス発祥の地、美食の街」などと呼ばれるバスク地方でバルを楽しむポイントを紹介します!
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1.スペインバルはタパスだけじゃない
日本のスペインバルのイメージというと小皿料理のタパスとお酒でちょっとずつ色々なつまみを楽しむという感じでしょうが、バスク地方のバルではタパスを楽しんでる人はあまり見ません。
タパスの代わりに食べられているかのが「ピンチョス」。「Pinchar=刺す」が語源なのですが、それぞれのお店が工夫を凝らして作った料理をパンの上に乗せて爪楊枝のような串を刺してあるものです。
カウンターに既に並べられていて、種類によってはお願いすると温めてくれるお店もあります。人気のお店では次々に新しいピンチョスが補充され、「今度のそれはなに!?」とお客さんの視線が集まります。
2.バスクの人たちのスタイルに合わせてゆったりまったり楽しもう
日本ではコンビニのおでんや回転寿司のように衛生的にどうだとか、埃をかぶっていないかなど色々気になることがありそうですが、バスクの人たちはあまり気にしません。
繁盛店ではピンチョスの回転も早いですし、小さなバルで常連さんばかりのお店では、特に取り分けてもらうこともなくカウンターに並ぶピンチョスを手づかみで取ってそのままパクパクなんて人も見かけます。
会計は「これも食べたよー」と自己申告のときもあります。
お客さんと店員さんの信頼関係が成り立っていて、知らない者同士でも気軽に会話に参加しあうことができる人柄の人が多く、日本の下町の居酒屋さんにいるような感覚を味わえます。
3.そういえばバスクにはパエリアはない
スペインと言えばパエリア!と連想してしまいがちですが、バレンシアやカタルーニャ地方の主に地中海地域の郷土料理で、北部のバスク地方にはパエリアはありません。
生まれも育ちもバスクのとある女性がこんな話をしてくれました。
「私はいろんなバスクの伝統的な料理が作れるけど、そういえばパエリアは作ったことがないわ! その代わりと言えるのかはわからないけど、アサリが入ったおじやのようなものはあるわよ。シンプルな塩味でアサリの出汁が効いていて、パエリアのようにお米を大量の油で炒めないからヘルシーよ!」
4.メニューは見ない。自分の感覚に従おう!
多分メニューはどこかにはあるのだろうけど、写真はなく説明文があるだけなので、どんなものなのか想像するほうが大変! 何を食べたいかは実物を見てそのときの感覚に素直に従って決めましょう。
おいしそうだけどこれ何?というものばかりですが、名札が付いているときもあるし、ないときは店員さんに聞けば教えてくれます。
種類が豊富すぎて、たまに店員さんも「何だっけこれ?」というときもありますが、口に入れてみればわかる! おいしそうだったらとにかく食べてみましょう。きっとおいしいから大丈夫です!
5.オーダーするときは上手に自分をアピール
しかしその実物を見るのにも、オーダーをするのにも人気のお店では一苦労するでしょう。人だかりの中をかき分けなければならないときもあります。
列を作って順番にというルールももちろんありません。
店員さんの動きをよく観察して、熱い視線を送って、一瞬でも手の空いた瞬間に上手に捕まえましょう!
6.「1ピンチョ、1ドリンク」そして次のお店へ!
ワインならグラス一杯、ビールなら小さなグラスビールに1ピンチョが基本のスタイルです。
このセットが終わったら、次のお店に行くのです。そしてまた違うピンチョスを楽しんでまた次のお店へ。これがバスクでのせんべろはしご酒スタイルです!
ですが、無理をしてすべてのお店でこのセットで頼む必要はありませんよ。飲み物だけやピンチョスだけもあり。自分の気の向くままに自由に過ごすことが重要です。
街やお店によっては、決まった曜日にハッピーアワーの様なお得な設定をしているところもあります。普段よりちょっと小さめだけど、「1ドリンクで1ピンチョス無料!」など。街がハッピーアワーを定めている日には、平日でも通りでたくさんの人たちがはしご酒を楽しんでいます。
ちなみに、スペイン語でビールは「セルベサ」と言いますが、バスク地方ではグラスビールを「スリト」、1パイント(568ml)の大きいビールを「カニャ」と言います。ぜひバスクスタイルでオーダーしてみましょう!
7.支払いは割り勘。細かい勘定など気にせず友との時間を楽しもう!
混雑しているカウンターで一人ずつ支払いをしてたらいつまでたっても乾杯ができません。仲のいい友達同士では最初に少しずつお金を出し合って、お会計担当になった人がまとめて支払いをするのがバスク流です。
残ったお金を持ってまた次のお店へ行き、足りなくなったらまた少しずつ補充します。
当然割り勘になりますが、そこは気にしないようにしましょう。なんといってもバスクのバルはお酒もピンチョスも他の有名な都市に比べたら圧倒的に安いです。
特にバスク人男性と飲むときはこのスタイルにするのが賢明です。なぜならバスクの人たちは人情深い人たちが多く、大概奢ってくれてしまいます。
レストランで後会計のときも、気が付いたら支払いを済ませてしまわれた!なんてことも多いのです(同じスペイン人男性同士でも違う地方出身の人がしみじみとこのことについて語るほど、バスク男は人情深いで有名)。
オレがオレが!と支払い合戦をすることにならないようにみんなで仲良く出し合いましょう。
8.冬でも外! テラス席が空いてない? 気にしない!
日本で今、喫煙の問題は盛んに話し合われていますね。海外の多くの国と同じように、スペインではレストランなどの場所では屋内の喫煙が禁止です。
同時に、たくさんの人が犬を連れています。基本的には犬の入店を断っているお店が多いので、喫煙者や犬連れの人は自動的に外で飲みます。
しかし、そうではない人たちも外で飲むのが大好き! 真冬でも立ったり座ったりしながら赤ちゃん連れでもなぜかたくさんの人が外で飲みながらおしゃべりします。
雨の多いバスク地方ですが、一瞬でも止めばどこからともなく人が湧いてきてあっという間に通りはいっぱいになります。
特にバスクではテラス席が空いていなくても大丈夫です。グラスを片手に目の前の公園や通りで飲んでいても誰にも怒られません。バルが何軒も並んでいる通りなどでは、誰がどのお店のお客さんなのかわからないくらいです。
9.テラス席チャージを取られない
多くの大都市ではテラスでお茶をしたり食事をしたりする際には、テラス席料金が取られることがあります。例えばカタルーニャ地方のバルセロナのあるカフェではコーヒー一杯が1.40€で飲めますが、テラス席で飲むと1.60€です。
しかしバスク地方でテラス席チャージを取られることはほとんどありません。というか私はまだ取られたことがありません。
席がなくても外で立って飲むくらいですし、お客さんは自由気ままに出たり入ったりします。お店の人もどこで飲むのか聞いてきません。
10.ピンチョスだけじゃない! 変わり種バルにも行ってみよう!
街にはキラキラしたピンチョスが並んだバルが数えきれないほどあります。そんな中で生き残るためには同じネタではだめだ!というバルも近年では増えてきています。
とあるバルはチーズに特化したお店。以前はピンチョスを置いていたそうですが、数あるバルの中で人気を得るのは大変! 店主の息子さんがお店を切り盛りするようになったときに大きく方針転換して、普段手に入らない珍しいチーズを揃えて地元の人たちを楽しませてくれています。
写真のジャガイモの入ったオムレツはスペインで「トルティーヤ」と言いますが、このお店ではできたてを出してくれます。ピザのように中身やトッピングを決めて、その場で焼いてくれるのです。
でもおっきなトルティーヤが丸ごと出てくるので大人数で行きましょう。
他にも、若者に人気なのはピザバル! 厚紙の上にピースに切ったピザを乗せて提供していて、立ったままでも食べられます。
サンドウィッチ専門のバルもあり、ピンチョスのようにカウンターにぎっしりサンドウィッチが並べられています。
11.バルは地元の社交場。もう一軒行く? 最後にもう一軒!
バスクの人たちはランチや夕食の前に近所の馴染みのバルで一杯!というのが大抵の流れです。クリスマスや年末年始などは、実家に帰省した家族が一同に集まり、子供からお年寄りまでたくさんの人と犬でバルが賑わいます。
毎日顔なじみの友達と話して気分がよくなったらもう一軒! そんなことを繰り返しながらバスクのはしご酒の時間はゆったりと過ぎていきます。
バスクの人たちはとてもフレンドリーで、情に厚い人たちです。ぜひ自分の馴染みの店とお気に入りのピンチョスを見つけて友達と語らい、一味違ったスペインを楽しみましょう!
まとめ
- スペインバルはタパスだけじゃない
- 細かいことは気にしないバスクの人たちのスタイルに合わせてゆったりまったり楽しもう
- そういえばバスクにはパエリアはない
- メニューは見ない。自分の感覚に従おう!
- オーダーするときは上手に自分をアピール
- 1ピンチョ、1ドリンク。そして次のお店へ!
- 支払いは割り勘。細かい勘定など気にせず友との時間を楽しもう!
- 冬でも外!雨が止めば人が湧いてくる。テラス席が空いてない?気にしない!
- テラス席チャージを取られない
- ピンチョスだけじゃない!集客への工夫を凝らした変わり種バルにも行ってみよう!
- バルは地元の社交場。食事の前に一杯。もう一軒行く?最後にもう一軒!
以上、スペイン・バスク地方でのピンチョスの楽しみ方でした。
【文と写真・小松麻美】
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