完成当時には絶対存在しない「宇宙飛行士」がなぜ?「サラマンカ大聖堂」のレリーフの謎に迫る【スペイン在住ライター直伝】

スペインにあるサラマンカ大聖堂。大人気の定番観光地ですが、なんと大聖堂を飾る彫り物の中に建設当時は存在していなかった「宇宙飛行士」の姿が描かれているのです! 単なる偶然か。または宇宙人の仕業か。はたまたタイムスリップしてきた未来人からのメッセージなのか。

スペイン・サラマンカ在住20年以上、海外書き人クラブ新会員の上村めぐみがこの謎に迫ります。

サラマンカにはなんと大聖堂が二つある!

サラマンカ大聖堂

本題に入る前にまずはサラマンカ大聖堂についておさらいしておきましょう。

サラマンカには旧大聖堂と新大聖堂の二つの大聖堂があります。12世紀から13世紀にかけて造られた旧大聖堂はロマネスク様式でしたが、手狭になった旧大聖堂からもっと大きな大聖堂を作ろうと16世紀にゴシック様式、ルネサンス様式等が折衷された新大聖堂が作られました。

当時の習慣は旧大聖堂を取り壊しその跡地に新大聖堂を建築していましたが、ただでさえ手狭になったから新しい大聖堂が必要となったわけで、新大聖堂が建築中はどこでミサを挙げればいいんだ!と困ったサラマンカの人達は、旧大聖堂全体を取り壊さず旧大聖堂にくっつけて新大聖堂を造ることにしました。

現代とは異なり16世紀当時の大聖堂建築とは街を挙げての一大事業。その上、建築期間が半端ない!1513年に建築が始まり1733年に完成したので、200年以上もかかったことになります。確かに200年も待っていられないですよね!笑

 

宇宙飛行士のレリーフは新旧どちらの大聖堂にあるの?

サラマンカ大聖堂

サラマンカの大聖堂は新旧二つがくっついていて、スペインの大聖堂の中でもかなり大きな大聖堂です。ちなみに大聖堂の中ではスペインで一番高い大聖堂で110メートルもあります。現在のビルだと30階くらいのものです。現存する日本の木造建築で最も高い東寺の五重塔が55メートルでその倍の高さになるのでかなり高いですね。この威風堂々としたサラマンカ新大聖堂に宇宙飛行士のレリーフは施されています。

サラマンカ新大聖堂はチュリゲレスコ様式とも呼ばれる銀細工様式(プラテレスコ様式)の飾り彫りが所狭しとばかりに施されているのが特徴でもあり見どころでもあります。

様々な宗教的を具象化したその飾り彫りは見る人を飽きさせないものですが、なぜそんな中に「宇宙飛行士」はいるのでしょうか?

その「宇宙飛行士」はプエルタ・デ・ラモス(Puerta de Ramos)と呼ばれる入口の飾り彫りの中にいます。

サラマンカ大聖堂

そして次にお見せするのがその「宇宙飛行士」のレリーフです!

サラマンカ大聖堂の壁画に描かれた宇宙人

日本の遮光器土偶が「宇宙人に見える」とか「宇宙服みたいだ」とか言われることもありますが、こちらは「見える」とか「みたいだ」というレベルではなく、まごうことなく「宇宙飛行士」!

先ほども書いたように大聖堂の完成は18世紀。それなのになぜ宇宙飛行士がいるのか。その理由です!

 

不思議なモチーフが彫られた理由とは?

サラマンカ大聖堂

1993年に「ラス・エダデス・デル・オンブレ (Las Edades del Hombre)」という展示会がサラマンカ新大聖堂で開催されましたが、プエルタ・デ・ラモス入口部分の劣化がひどかったために修復されることになりました。

丁度前年1992年にスペインで初めて宇宙飛行士の候補となるペドロ・ドゥーケ (Pedro Duque) 氏が選出されました。スペイン中で話題になり、このスペインの歴史的瞬間を証明するという意味で宇宙飛行士が選ばれたそうです。

というのも、スペインの石工達は建物建築や修復に携わる際、その時代の歴史的瞬間を彫り物のモチーフによって証明することが伝統的に行われていました。そのためこの修復工事に携わった石工ミゲル・ロメロ (Miguel Romero) 氏が20世紀を象徴するもの、スペイン初の快挙となる初めての宇宙飛行士候補が選ばれた国民的歓喜の歴史的瞬間を証明するものとして宇宙飛行士の姿を彫ったという訳です。

 

まだまだある不思議なモチーフ

宇宙飛行士の他にも不思議なモチーフがプエルタ・デ・ラモス入口部分には彫られています。それは、コーン入りダブルアイスクリームを食べている悪魔!!

サラマンカ大聖堂に描かれた「アイスクリームを食べる悪魔」

 それもその悪魔の顔がとっても漫画チックで見ているだけでクスッと笑いが出てきます。まるで悪魔が街のアイスクリーム屋を襲撃し、お目当ての味のアイスクリームをまんまと奪って誇らしげに笑っているような、そんな場面を想像してしまいます。

サラマンカ大聖堂

宇宙飛行士やアイスクリームを食べる悪魔と同じエリアには、スペインオオヤマネコ、闘牛でお馴染みの雄牛や、ザリガニ、コウノトリ、ウサギの姿も彫られていて子供たちと一緒に見つけるのにもってこいです。ちなみに、サラマンカではザリガニ、コウノトリ、ウサギは水・空・大地を表す生き物だそうです。

 

遊び心満載の石工達の彫り物

サラマンカ大聖堂

厳粛かつ荘厳な大聖堂の入口に、こんな楽しいモチーフが彫られているのは意外ではないでしょうか。たとえ修復工事によって新しく加えられたモチーフとは言え、日本では考えられないような自由な発想ですよね。伝統を守りながらも新しいことを加えていく柔軟さに敬嘆させられます。

今回はサラマンカ新大聖堂のプエルタ・デ・ラモス入口にある不思議なモチーフを紹介しましたが、実はこの新大聖堂の他の入口にも様々な彫り物があり、その一つ一つを注意深く見てみると、300年以上前の石工達の茶目っ気たっぷりな遊び心一杯のモチーフが見つかります。スペインのサラマンカにいらした際には是非自分だけの「発見」をお楽しみください。

最後に一つアドバイス。「発見」に夢中になって上をずっと向きすぎて、首が痛くなるのでご注意を! 夜寝る前に忘れずに首のマッサージをされることをお薦めします。

(文・写真 上村めぐみ)

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