アルゼンチン共和国の首都ブエノスアイレス。南米文化とヨーロッパ文化が入り混じるノスタルジックなこの街で、世界中の人を虜にするアルゼンチンタンゴが踊られているのはご存知ですか?
今回はアルゼンチンタンゴに魅せられて、35歳で脱サラ、タンゴを学ぶために移住したアルゼンチンタンゴ講師。海外書き人クラブ会員、アルゼンチンのブエノスアイレス在住AKANEがご紹介します。
アルゼンチンタンゴとは?
「黒い猫のタンゴ」「だんご三兄弟」などでタンゴの音楽を耳にしたことがある人もいるかもしれませんね。
その名の通り、アルゼンチンで生まれたタンゴです。しかし、アルゼンチンの国土はとても広いので、首都ブエノスアイレスまたはラ・プラタ河の河口付近の踊り(ウルグアイで生まれたとも言われるため)と言えます。アルゼンチン全土で言えば、実はタンゴよりもフォルクローレの方が国民にとってより身近な踊りです。
ウルグアイとアルゼンチンの間を流れるラ・プラタ河の河口にある首都ブエノスアイレスの港で、下層階級の貧しい船乗りたちが日々のうっぷんを晴らすために踊り始めたと言われるタンゴ。この踊りが時代を超え、ヨーロッパの社交界で人気となり、逆輸入されてブエノスアイレス発祥の踊りとして注目されるようになったのは1910年頃。アルゼンチンの政治的歴史にも影響され、何度も下火になりながら、200年という短いアルゼンチンの歴史の中でも重要な文化として今に残ります。
日本からみて、ちょうど地球の反対側にあるアルゼンチン共和国、ブエノスアイレスに来たらぜひアルゼンチンタンゴの世界を覗いてみてください。
今回は、その理由をご紹介します。
理由1:ユネスコに認められた世界無形文化遺産
2009年、タンゴは国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産のリストに追加登録されました。
無形文化遺産は、形のない、民族文化財やフォークロア、口承伝統などの文化財が対象です。日本だと、和紙や和食が無形文化遺産として登録されています。
つまり、ブエノスアイレスは世界遺産であるアルゼンチンタンゴの聖地です。
タンゴ愛好家が一生に一度は行きたい!と願う、そんな場所です。
理由2:ブエノスアイレスの歴史と文化
ブエノスアイレスは南米屈指の大都会です。近年はブラジルのめざましい発展に後れをとっていますが、それでも大都市に変わりはありません。
スペインやイタリアといったヨーロッパからの移民によって作られた街は、南米のパリと言われるほど美しい建造物で溢れています。
今も現役で使われるこの美しい建造物の中で行われるタンゴのダンスパーティー「ミロンガ」は、夜11時から2時が一番盛り上がります。
着飾った大人の社交場として、密接に抱擁しながら踊るタンゴは、日本人にとって異文化そのもの。ぜひ本場の踊りを堪能したいですね。
理由3:タンゴは世界のパスポート
アルゼンチンタンゴは、今や世界中で踊られる踊りです。
毎年8月に行われる「アルゼンチンタンゴ世界選手権」では、世界中のタンゴ愛好家をブエノスアイレスに集め、500組前後のカップルが選手権に挑みます。
(コロナ禍で2020年、2021年は時期をずらし一部オンライン化)
タンゴ愛好家の中には、世界中で開催されるアルゼンチンタンゴのイベントを目当てに世界中を旅行する人もいるほど。
例え、言葉は話せなくてもタンゴを踊れば世界中の人と友達になれるチャンスがあるのです。
理由4:観光の楽しみをマシマシにするタンゴ
ブエノスアイレスに観光で訪れたのなら、タンゴを楽しむ方法がたくさんあります。さまざまなレベルで受けられるタンゴレッスン、毎晩開催されるダンスパーティーの“ミロンガ“、タンゴ用のドレス、靴、スーツのお買い物、プロのダンサーが踊るタンゴハウス、そしてタンゴの音楽を楽しむカフェや劇場。
タンゴ愛好家の中には、毎年数ヶ月タンゴを堪能するためにブエノスアイレスに滞在する人も少なくありません。
理由5:アブラッソの秘密
アルゼンチンタンゴは、2人で抱擁して踊る踊りです。
決まったペアで踊ることもありますし、その日、その時出会ったばかりの人と抱擁して3〜4曲踊ることもあります。
抱擁することで「オキシトシン」という幸せホルモンが分泌されます。このホルモンは自然免疫力を始め、多幸感やストレス軽減してくれると言われています。競技ダンスでもタンゴは踊られますが、身体の上体部分を抱擁しているのはアルゼンチンタンゴだけ。踊りながら癒し効果を期待できます。
おまけ:恋が生まれるかもよ?
その日、その瞬間にあったばかりの人と抱擁して2人だけの4曲を踊るタンゴですから、そこから恋が生まれることだって。
私と主人は、ブエノスアイレスで受けたタンゴレッスンで出会い、結婚しました。タンゴを踊ると世界中の人と出会い触れあう機会があるので、素敵な出会いもあるかもしれませんよ。
いかがですか。ブエノスアイレスでタンゴを踊りたくなりましたか?
アルゼンチンの首都ブエノスアイレスに来た時はタンゴの世界を覗くべき理由をご紹介しました。
この記事がきっかけでアルゼンチンタンゴに興味を持っていただけたらこんなに嬉しいことはありません。
ぜひ、30時間以上かけて辿りつく地球の反対側に来る際には、ノスタルジックで官能的なアルゼンチンタンゴを楽しんでみてくださいね。
(文・写真 AKANE)