あなたはキリンのそばで寝たことがありますか?
「ここはアフリカじゃねえぞ」というブチギレ声が聞こえてきそうですが、じつはオーストラリアには、それができるところがあるんです! 今回はそこを紹介しましょう。
こんにちは。海外書き人クラブの会員、オーストラリア在住の柳沢有紀夫です。
キリンのそばで寝られる場所。それはオーストラリアの内陸部、ニューサウスウェールズ州(NSW州)のダッボーという町にある「タロンガウェスタンプレインズー」(Taronga Western Plain Zoo)です。動物たちを檻の中ではなく、できるだけ自然に近い状態で見せるいわゆる「サファリパーク」の一種なんですが……なんと草食獣たちが暮らすサファリエリアに沿って、キャンバス地の常設テントでつくられたロッジがあって泊まれるのです。
そういう意味では今流行の「グランピング(Glamping)」の一種とも言えますね。
今回はその「タロンガウェスタンプレインズー」を紹介しましょう。
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1 行き方
シドニーから飛行機で1時間でダッボー空港に到着。料金は片道150豪ドル(記事を執筆している2017年5月26日の時点のレートは1豪ドル=約83円ですから、12000円くらい)からのようです(時期やすでに予約している人の数などによって変動します)。そこからはタクシーかレンタカーで9.4キロ、14分です。
シドニーからは列車もありますが、乗り換えなしで行けるのは一日1便で、所要時間は6時間半弱。かなりかかりますね。まあ、途中で例の大分水嶺山脈を越えるので、それなり車窓の景色は楽しめるのかもしれませんが。ただ料金は普通席を「早割」などでない通常料金で買うと片道豪54ドル87セントとかなりお得です。そこからはタクシーかレンタカーで6.4キロ、12分です。
ちなみに車では約400キロで、休みを考慮しなくても5時間半くらいかかります。ただ、シドニーからここまでの道のりや、この周辺には見どころがたくさんあります(これから随時紹介していく予定です)。レンタカーで荒野のハイウェイを走りながら何泊かの旅行をするのも、オーストラリアならではの楽しみ方の一つで、オススメです
2 いよいよ入場
入場料はその場で買うと大人47ドル。ネットで買うと42ドル30セントと1割引き(執筆時の値段です)です。
「タロンガウェスタンプレインズー」はルートに沿って一周するタイプの動物園です。私は取材ということで、こんな電動のゴルフカートを借してもらいました(一応公道も走れるので自動車運転免許が必要です)。ただ……普通に借りると3時間ごとに69ドルします。自転車は1台15ドル。
自家用車やレンタカーでもそのまま入れますし、一周5キロ強なので徒歩でもいいと思います(車やゴルフカートだと混雑時は駐車スペースを見つけるのが逆に大変そう)。
3 動物たちの展示
モノではなく動物に対して「展示」って言葉でいいのかなあと悩んだのですが、たとえば日本で話題の旭川動物園に関しても「形態展示ではなく行動展示」という表現が使われているので、まあいいのかな? じつはペット「オーナー」という言い方も「ペットは所有物なのか……」と気になったりもします。それはさておき……。
「タロンガウェスタンプレインズー」はまさに「行動展示」で、しかも柵がないのが特徴。で、写真に撮るとこんな感じです。
「うわっ、動物と同じ平面にいるっ!」と驚かれるかもしれませんが、実際には木の柵があったり、こんな風な電流が走っていて触ると感電する線が間にあったりして……。
まあ、写真のマジックですね。
サイなんかはかなりそばから見られるのですが……。
トラやチーター、ゾウはかなり遠いゾウ……。あっ、ついオヤジギャグが。
恥かきついでに書くと、チーターのスペルは”cheater”(ペテン師、詐欺師、だますヤツ)で、「ああ、あの模様で草食動物を欺くからか」とばかり思っていたのですが、本当は”cheetah”であることをこのとき初めて知りました。
4 サバンナサファリ
とはいえ別料金を払うと、もっと近くで動物を見ることができます。それが「サバンナサファリツアー」です。
これは日本のサファリパークにもよくある「特殊なバスで動物たちのいるエリアを走る」20分ほどのツアー(ただし自家用では入れません)。これに参加すると、キリンがドアップといえる距離まで近づいてきてくれたりします。
とはいえバスが走るのは草食動物のいるエリアだけ。ライオンやトラなどの肉食動物……というか猛獣たちを間近に見ながら「ひえーっ、怖えーっ」とおおはしゃぎしたりすることはできません。少々迫力不足ではありますが、その分、動物たちのストレスは少ないと考えると、仕方がない部分はあるのかな?
迫力という意味だとやはり日本のサファリパークに軍配があがります。じゃあなんでわざわざここを紹介しているのかというと。もちろん「ここにしかないものがある」からです。
それがサバンナサファリに面したロッジ、その名も「ズーファリロッジ」での宿泊です。「ズー(動物園)」の「サファリ」ってことでしょうね。
「サバンナサファリツアー」の最中に見えてきます。
はい、ダチョウの向こうに見えるのがそれです。
5 ロッジの中とそこからの風景
私がこの「タロンガウェスタンプレインズー」に行ったのは、ちょうどオーストラリアの秋休み(というのが、だいたい2週間ほどあるのです)期間中。話を聞いたアコモデーション・マネージャーのペニー・コステロさんによると、そういう学校が休みの時期(スクール・ホリデイ)は「数ヵ月前に予約がいっぱいになる」とのことで、今回は泊まることができませんでした。
でも見てください。ロッジの中からの風景はこんな感じです。キリンとかダチョウがそばに来てくれたら、ワクワクしそうですね。特に日の入り前後とか日の出のころなんか幻想的でしょうね。
ちなみにこの「ズーファリロッジ」には「アニマルビューロッジ」と「ブッシュランド(草原または低木林地)ビューロッジ」の2種類があり、サファリに面しているのは前者だけです。
さてそのロッジの室内ですが、ダブルベッドのベッドルームの他にバスルームもあって、すごく豪華な感じです。
そして一泊の料金には夕食と朝食、さらには1日目の午後と2日目の早朝の宿泊者限定のツアーが含まれています。食事をいただくのはロッジのすぐそばにある建物の中です。
かなり豪華な感じです。
うーん、泊まりたい。取材日が予約でいっぱいであるのは承知の上で、「野宿でいいから泊まらせてもらえないですかねえ?」とペニーさんにおそるおそる訊ねてみたのですが……。
……笑われただけでした。妙にさわやかな笑顔です。
ちなみにサファリゾーンから離れは場所にあるキャンプ用テントに泊まることもできるですが、それもいっぱいでした。
こんな感じです。
6 (おまけ)日本のサファリパーク
ついでに日本にあるサファリパークについてもまとめてみました(漏れがあったらすみません)。
ノースサファリサッポロ(北海道)
「水陸両用車ジャングル体験」というのがなんだか楽しそう。
岩手サファリパーク(東北・岩手県)
サフィリパークでの「お仕事体験」ができます。「トラやライオンのお部屋に入って掃除」とか「餌やり」ができるそうですが、たのしそう……でも怖そう。
東北サファリパーク(東北・福島県)
かなりざっくりした名称ですが、福島県二本松市にあります。東北新幹線二本松駅から「塩沢温泉行き』バスで20分。
那須サファリパーク(関東・栃木県)
野生動物にエサやりをして楽しむ「体感型サファリパーク」です。
群馬サファリパーク(関東・群馬県)
ここの売りは「餌やり体験バス」と「ナイトサファリツアー」です。
多摩動物公園(関東・東京都)
「サファリパーク」とは言っていませんが、ライオン園の中を走る「ライオンバス」が完全にサファリです! 何より都立の動物園なので入場料が大人600円! とはいえその「ライオンバス」は工事のため、2016年4月1日(金)より休止中。再開時期は未定だそうです。
富士サファリパーク(中部・静岡県)
天井部分も金網張りにした「スーパージャングルバス」とか、夕闇時(4月~9月 17:30~19:30、10月 17:00~19:00)に開園する「ナイトサファリ」とか、いろいろ工夫しています。
アドベンチャーワールド(近畿・和歌山県)
「サファリパーク」だけでなく、イルカやクジラのショーがある「水族館」の部分も楽しめるのがここです。
姫路セントラルパーク(近畿・兵庫県)
「サファリパーク」だけでなく、絶叫マシーンのある「遊園地」、さらには夏はウォータースライダーなどがある「プール」、冬は「アイススケート」が楽しめるのがここです。
秋吉台自然動物公園サファリランド(中国・山口県)
窓と柵のない「写真専用カー」は、動物の撮影をしたい人にはたまらないかもしれません。
九州自然動物公園アフリカンサファリ(九州・大分県)
ここは「ナイトサファリ」があるだけでなく、「ティーピー(ネイティブアメリカンのテント)キャンプ」があります! とはいえ動物ゾーンと「隣接」している場所なので、「ライオンなどの動物の鳴き声が聞こえることも」といった感じですが、それでも楽しそうですね。
どこもそれなりに特徴がありますね。ただサファリで泊まれるところはまだないようです。
以上、オーストラリアにある「泊まれるサファリパーク」の紹介でした。
【文・柳沢有紀夫】
(この記事を書いている海外書き人クラブの紹介が、ページの一番下にあります。ご発注やご入会をお考えの方、ぜひご覧ください)
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