カナダの西海岸にあるバンクーバーは「アートの街」として知られ、美術館や小さなギャラリーが街を彩り、多くのアーティストがここに住んでいます。
現地在住歴約2年の芸術愛に燃える海外書き人クラブ会員であるAyakaが、バンクーバーの美術館で見た展示内容とともにおすすめの美術館７軒をご紹介します。
1. 西カナダ最大規模「バンクーバー美術館（Vancouver Art Gallery、通称：VAG）」
バンクーバーで芸術を楽しむなら外せないのがバンクーバー美術館、通称VAG。ここではカナダ出身の有名アーティストから国際的に高く評価される外国人アーティストまで、多様なアートが展示されています。
1931年に設立され、1983年に現在の建物である石造りの重厚な建物に移転オープン。敷地面積は西カナダ最大の15,300平方メートルを誇ります。
展示内容は定期的に変わるため、何度訪れても新鮮な芸術に触れることができます。展示物が多彩で、一つの展示を何回も訪れたくなることもあり、バンクーバー滞在中は年間パスの購入をおすすめします。
特に印象に残ったのは「Fashion Fiction」展（2023年10月9日まで開催予定）。
この展示では世界中のトップファッションデザイナーによるコレクションが展示され、伝統文化、SF、最新技術、持続可能性など幅広いテーマがアートに昇華されています。また、川久保玲さんや三宅一生さんなどの日本人デザイナーの作品もあり、同じ日本人として誇らしくなりました。
2. 北西海岸先住民アートが堪能できる「ビル・リードギャラリー（Bill Reid Gallery）」
ビル・リード（1920〜1998年）は、カナダ北西海岸先住民ハイダ族の最も有名な芸術家の一人。ビル・リードギャラリーは、2008年にビル・リード財団によって設立され、北西海岸先住民のアートに特化したカナダ唯一の公立ギャラリーです。
伝統的なハイダ族のビル・リードの作品だけでなく、現代の北西海岸先住民アーティストたちの多彩な作品も堪能できるため、一見の価値があります。
訪れた日には、幸運にも観光客団体がいて、スタッフによるアート解説を聞くチャンスがありました。
ビル・リードに感銘を受けたのは、まず、彼が欧米のジュエリー制作技術を学び、金や銀細工を行った唯一の北西海岸先住民ハイダ族のアーティストであること。そして、彼は幼少期に先住民文化とほとんど接点を持たず、アナウンサーとして成功していました。しかし、23歳のときに母親の故郷を訪れ、祖父からハイダ族の伝統的な彫刻技術を学んだことが、彼のアーティスティックな転機となりました。以降、アナウンサーとしての活動と並行して、ハイダ族の芸術に没頭しました。
3.美しい建築にも注目「ポリゴンギャラリー（The Polygon Gallery）」
1981年に設立され、2017年に美しい新しい建物に移転したポリゴンギャラリーは、カナダ西部最大の非営利写真ギャラリー。カナダ出身のアーティストによる現代アートがメインで展示され、特に写真や写真を用いたアートに焦点を当てています。
私の訪問時には、カナダ人アーティストであるスティーブン・シアラーの作品が展示されていました。
彼は1968年にニューウェストミンスターで生まれ、絵画、図面、写真のコラージュ、テキストを用いた作品で知られています。彼の作品は思春期の反抗、10代の不安定さ、サブカルチャー、政治的な活動主義、国内建築の歴史などをテーマにし、独自の表現方法でこれらの要素を組み合わせています。
4.ダグラス・レイノルズギャラリー（Douglas Reynolds Gallery）
ダグラス・レイノルズギャラリーは、北西海岸のネイティブアートを専門としたギャラリーで、1995年に設立されました。
ディレクター兼オーナーのダグラス・レイノルズは、北西海岸のネイティブアートに関する20年以上の経験を持つアート愛好家。彼の目利きの鋭さにより、高価値な芸術品を見つけることができます。
このギャラリーでは、歴史的に評価の高いアーティストから現代の有望な若手アーティストまで、北西海岸先住民のアートを幅広く展示しています。ビル・リードの作品だけでなく、ロバート・デビッドソンなど、カナダでも名高いアーティストの作品も見学できます。
さらにこのギャラリーで展示されている作品は全て販売されており、バンクーバー在住の富裕層や訪れる観光客にとって魅力的なギフトとなっています。
5.圧倒的な情報量「UBC人類学博物館（Museum of Anthropology、通称：MOA）」
UBC人類学博物館、通称MOAは1927年に設立され、ビル・リードの有名な作品がシンボルとされています。
MOAでは、北西海岸の先住民族の歴史的なアートや世界中の芸術と文化を展示しています。ここには約50,000点の民俗学的資料と53,000点の考古学的資料が収蔵されており、地元の住民から観光客まで、カナダの歴史的な芸術に触れる絶好の機会を提供しています。
私自身もMOAを訪れ、展示物の多さに圧倒されました。数え切れないほどの展示物の中には、それぞれの背後に歴史と文化が宿っており、一つ一つを深く理解するには十分な時間がかかりました。
2023年は貴重な歴史的芸術品を保護するための大規模な耐震工事が行われ、博物館は閉館していますが、2024年に再オープンする予定です。
6.モダンアートの代表「コンテンポラリーアートギャラリー（Contemporary Art Gallery、通称：CAG）」
CAGは1971年に設立され、非営利の公立アートギャラリーとして、カナダでも有数の現代アートギャラリーの一つ。CAGは主に地元のアーティストを支援し、国内外のアーティストの作品を展示しています。
このギャラリーは、バンクーバー市の社会計画局によって発足し、初めはバンクーバーのアーティストが6か月間の雇用を受け、展示用のアートを制作していました。その後、1996年にアーティストたち自身の運営に移行し、公立アートギャラリーとして独立しました。
私がCAGを訪れたとき、アレックス・モリソンという英国出身のカナダ在住アーティストの展示が行われていました。彼の作品は、サブカルチャー、活動主義、反抗、国内建築の歴史、前衛的な美学などをテーマに掲げ、英国とカナダの文化的要素を融合させたもので、訪れる者に新しい視点を提供します。
7.中国とバンクーバーの歴史を学べる「グレーターバンクーバーの中国文化センター（Chinese Cultural Centre of Greater Vancouver）」
チャイナタウンに位置する中国文化センターは、1973年に設立され、1980年に一般公開されました。中国系コミュニティとカナダの他の文化グループとの理解と友情を促進・深化させることを目的としています。
センター内には1階と2階に分かれた展示スペースがあり、1階では中国系カナディアンが所有していた写真や日常品が展示。これらの展示品は主に1800年代から1900年代にかけて、中国移民の生活様式を示しています.
以上が「バンクーバー在住ライターによるおすすめ美術館7選」です。バンクーバーの多様なアートシーンからインスピレーションを受け、さまざまな芸術を楽しむことができることでしょう。
（文・写真／AYAKA）