【災害対策】洪水と床上浸水のあと何をすべきか2~大切なものは頭と心の中にある

洪水後のエアコン室外機

経験者が語る床上浸水のあと、実際に何をしたか、何をすべきか、何を思ったか」。2回目の今回は洪水が来るという知らせを受けて事前に一時避難していたゴールドコーストから、様子を見に一度戻った日のありさまです。

こんにちは。海外書き人クラブお世話係、オーストラリア在住ライターの柳沢有紀夫です。

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1 わが家のある通りにもどった瞬間、現実を知る

テレビで「水が引いて、清掃作業が始まっている」というので、避難先のゴールドコーストから、一度家に戻ってみることにしました。浸水していれば、必要なものを買って明日からの清掃の準備をしようと考えていました。
前回の74年の洪水の記録によると、わが家は「庭は浸水したが、床上への浸水はなし」とのこと。
今回の洪水ではブリスベン川の水位が最高に上がった時点でも前回以下だったとのことで、「床上には浸水していないのではないか」と期待していました。
その一方で、自分の住む地区の名前が「非難がひどい地域」としてテレビで挙げられているので安心もできません。
いずれにせよ、「浸水していても落ち込まず、浸水していなくてもはしゃがないように」と、自分にも家族にも言い聞かせて数日振りのわが家に向かいました。

ゴールドコーストから我が家までの一時間半ほどの道のりでは、浸水している道路を迂回したこともあり、被害はあまり見られません。テレビに映される画像が遠い国の話のように思えました。
ところが家へ向かう最後の角を曲がり、自分が住む通りに入った途端、現実を知らされました

水はすでに引いていました。でも自宅ある通りには路上駐車の車があふれています。路上にはウッドチップや木の枝といった「浮遊物」の名残が落ちています。歩道の芝生は泥をかぶり、あちこちに家具や本、いや、家具や本だったものなどが山積されています。
自分の家が浸水したのは明らかでした。

洪水後の庭

水が引いたあともプールの水はこのように泥水。芝生も泥で茶色になっている

 

2 床上1メートル浸水が判明

家に着くと、浸水の高さが予想以上だったことを思い知らされました。
家の外壁についている浮遊物の名残は、ドアノブの上、高さ1メートルほどのところまでついています。その下は泥がつき、その下はきれいな白い壁。見事なツートンカラーです。

洪水後の外壁は見事なツートンカラー

洪水後の外壁は見事なツートンカラー。昔の東海道線や横須賀線を思い出した。呆然とすると人はどうでもいいことを考えるのか、はたまた私だけが現実逃避癖があるのか

「浸水してもせいぜい10センチ程度だろう」と予想したのに、被害はずっと大きかったようです。

とにかく中の様子を見よう。そう思ったのですがなぜかなかなか鍵が開かず、家に入れません。洪水の何らかの影響でしょう。
窓から見ると、私の書斎のデスクの上に置いていた本はほぼ床に落ち、泥だらけになっていました。「まさかここまではこないだろう」と二階に上げるのを怠ったためです。
冷蔵庫や洗濯機も倒れていました。

仕方なく鍵屋さんを呼びましたが、来てくれるまでの間、茫然として何もしないわけにはいきません。とりあえず家の外壁やガレージから掃除を始めてみることにしました。
あちらもこちらも泥がわずか5ミリほどですが堆積しています。幸い水道水は通っているので、「洗い流す」の最初の作業です。

 

洪水後のガレージ。本来は灰色のコンクリートだが、泥が堆積してこんな色に

洪水後のガレージ。本来は灰色のコンクリートだが、泥が堆積してこんな色に

庭の散水用のホースとモップで作業を始めたところ、知らない20代前半の青年が水を高圧で噴射する機械を持って来て、「これで洗い流してあげるよ」と言ってくれました。通りの反対側にある家の知り合いで、被災していない地域からその機械を持って助けに来てくれた人でした。
彼以外にも15歳くらいの少年が来て、「何かお手伝いすることはないですか。僕はこの通りの上のほうに住んでいて、浸水しなかったので」と来てくれたり、小さい子を三人連れた女性が、「手伝うことはないですか。ダンナは別の家の手伝いをしていますが」と言ってくれたり、他にも多くの人が手助けを名乗り上げたり、ホースやモップを貸してくれたりします。
本当にありがたいことです。
オーストラリアの人たちは昔から互助精神が高いと言われていますが、今回の洪水は地震などと違い、すべての家が被害に遭ったのではないからかもしれません。実際、わが家の右隣は高床式だったので、ギリギリまで水は来ても浸水はしなかったそうです。前の家も同様でガレージまでは来たけれども、家には来なかったようです。

 

3 被害状況を確認

1時間半後に鍵屋さんがやってきて、ようやく家に入れました。そして私たちが見た光景……。

洪水後の家の中

洪水後の家の中。泥が堆積。真ん中の白い物体は倒れた冷蔵庫

洪水後の家の中

洪水後の家の中。水に浸かってボロボロになったマッサージチェア

洪水後の家の中

洪水後の家の中。右奥で倒れているのは洗濯機。左の台の上に非難させておいた衣装ケースや段ボール箱も、洪水で浮かんで床に落ちた

本が散らばり、冷蔵庫や洗濯機が倒れていて、まるで震災に遭ったときのような光景でしたが、今回はさらに、何もかも泥だらけで水浸しです。特に、本などの紙類は水を含んで重く、かつもろくなっていました。こうなるともう捨てるしかありません。

ざっと被害を見積もってみたところ、こんな感じです。

  • ・本500冊
    ・冷蔵庫(水に浸かったのでおそらく使用不能)
    ・洗濯機(同)
    ・マッサージチェア
    ・スーツ5着(クローゼットにかけていたが浸水)
    ・シャツ20着
    ・その他衣類
    ・寝袋
    ・テントなどのキャンプ用品
    ・エアコンの室外機4機(注 このときはダメだと思ったのですが、あとでチェックしてもらったところ3機は使えました)
    ・プールの水循環器
    ・プールの水の入れ替えと場合によっては改修

果たして何百万円の損害になるのか……。

洪水後の家の中

洪水後の家の中。階段の下の倉庫。いろいろなものが水で膨らんでしまい、なかなかとりだせない

階段の下の倉庫にもいろいろ入っていますが、まだ手を付けていないので、何が被害に遭っているかわかりません。

洪水後の家の中

洪水後の家の中。デスクの上に避難させて書籍もすべて水に浸かり、ほとんどが床に散乱

そのほかにも他人にとっては価値がないけど、私がコピーライター時代につくったポスターを集めた筒や新聞広告を集めた作品集も水に浸かり、捨てざるをえません。

 

4 モノを失くして得たもの

多くのものを失いました。
自分の作品集にも、読んだ本にも多くの想い出があります。でも、泥だらけになり、水をたっぷり吸いこんでボロボロになったそれらを一輪車をつかって通りに捨てに行きながら(後程市役所が回収に来ます)、私はこんな風に考えることにしていました。
「自分は生きている。家族は無事だ。そして、本当に大切なものはすべて頭と心の中にある」と。
失ったものを嘆いていても始まりません。私には頭が残されているのだから、損害はこれから仕事をして取り戻せます
私には心があるから、失くしたものでも、いつでも記憶の中でよみがえらせることができます
だいじょうぶです。
本当に大切なものはすべて頭と心の中にあるのです。

とはいえ、被災後の生活は思いのほか長くなりそうです。

【文と写真 柳沢有紀夫】

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