経験者が語る「床上浸水のあと、実際に何をしたか、何をすべきか、何を思ったか」。7回目の今回は「領事館の対応」と「電気技師」について書きます。
こんにちは。海外書き人クラブお世話係、オーストラリア在住ライターの柳沢有紀夫です
1 かなりさびしかった領事館の対応
人づてに聞いたのですが、今回(2011年1月)のブリスベンの洪水に関して、ブリスベン領事館では「邦人の被害者なし」と発表したとか。
領事館のみなさん、間違っていたら、ゴメンナサイ。
ただ……私も私の知り合いも、領事館から個別に確認の連絡を受けたという人はいません。被害の連絡がなかったから、被害者はない、と考えたのかもしれませんが、「便りがないのは元気なしるし」は災害時には成り立たない話です。
大使館や領事館の仕事の一つに、確か「邦人の安全を守る」といったことがあったはず。一人ひとりに連絡を入れ、安否と被害状況の確認をするべきではないでしょうか。
じつはブリスベン領事館があるビルも浸水して、入れなかったようです(私たちも数日前、念のため被害状況を連絡しようと思って電話したのですが不通でした)。
それは同情に値しますが、だからと言って、確認作業を怠っていいということでないはずです。
ブリスベン領事館が機能しないとしても、キャンベラの大使館やシドニーの領事館が代わりに確認作業をすることはできるはずです。それを怠っているのは許されないことですし、もしも本当に「被害者なし」というウソの発表をしたのであれば、実際に被害者になっている私は憤りさえ感じます。
死んでもいないし、ケガもしていないので、「犠牲者」ではないです。でも床上1メートルも浸水していれば、立派な「被害者」ですよね、きっと。
たとえばみなさんが「電化製品や家具があれこれダメになって、家の一部も壊れて、数日間停電を余儀なく慣れているとしても、死んでもケガしてもいないのだから、あなたは被害者じゃない」と言われたら、きっと腹が立つと思います。
もちろん、被害者面したいのではありません。ただ今後、海外で起こる災害に対して、各国の大使館や領事館、いや外務省そのものにきちんとした対策を取ってもらいたくて、みなさんにお知らせしました。
いや、今、この洪水で、私たち以上にひどい被害状況で、しかも英語が苦手で、同胞の手が差し伸べられるのを待っている日本人が本当にいないのかも、とても心配です。
これは日本の地方自治体も同じです。
日本で起こるどんな災害でも、被災地には日本語が不自由な方もたくさんいます。「日本語で連絡が来ないから」と言って見捨てないでください。
2 かなりトホホな電気技師
停電生活も一週間になりました。
じつはすでに電気技師には来てもらっていて、後は電力会社に通電してもらうだけの状態です。そして昨日、私も妻も留守にしていたときに電力会社の人が来ました。ところが証明書が二枚必要なのに、その前に私たちの家に来た電気技師に「この一枚の証明書だけをブレーカーのボックスに入れておけばいい」と言われていたので、書類不備で通電してもらえませんでした。
作業に絶対必要なプラグを用意してこなかったりと、今回の電気技師は本当にトホホです。
あっ、それからもう一つ。一か所に四つある照明用のスウィッチが、他の三つは上に押すと付くのに、なぜか一つだけ下に押すと付くところがあって、ついでにそれも直してもらうことにしました。
「お安い御用だ!」と請け負ってくれたのはいいですが、あとで確認してみると、なぜかスウィッチが一つだけ横向きに。以前よりもさらに変な状態になっています。
ちなみにその電気技師への支払いは下記の内訳でした。
- テスト代 200ドル
- ブレーカー代(水につかっていたため) 300ドル
- 労賃 80ドル×7時間 560ドル
- コンセント代 15ドル×6個 90ドル
- エアコン室外機のチェック代
と言った感じで、合計970ドル。これに消費税10パーセントが加算され、総支払額は1067ドル、日本円にして8万円強。かなりの出費ですが、必要なことなので仕方がありません。
ちなみに隣人が教えてくれたのですが、前回の74年の洪水のときには、洪水そのものでよりも、その後の感電で命を落とした人のほうが多かったそうです。オーストラリアの電圧は240ボルトということもあるかもしれませんが、日本のみなさんも気をつけてください。
尊敬する自動車評論家の故・徳大寺有恒さんの名言に、「金で買える安全は買え」というのがありますが、今回の電気技師への出費もまさにそういうことだと思います。
とはいえもう少しまともな人が来てくれたらなあ……。
【文と写真 柳沢有紀夫】