先日の【あなたは食べられますか? 世界のおもしろお菓子17選】に続き、今回はおもしろドリンクの特集。その数、なんと19。ドリンクは当然ながら液体なので変わった形状のものはなく、見た目のインパクトはそれほどでもないのですが、その分ひとくち飲んだら驚愕しそうなものがたくさん集まりました。
こんにちは。海外書き人クラブお世話係の柳沢有紀夫です。
今回はアジアからスタートしましょう。
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1 カラフルさの正体は? 「エス・ドジャー」(インドネシア)
インドネシアには、さまざまなコールドドリンクがありますが、多くはココナツミルクベースで、氷やアイスクリーム、フルーツ、緑色の細長いゼリー(まるで虫のよう)、タピオカなどが層状になったものをスプーンで混ぜながらストローで飲みます。
名前はいろいろとあり、しっかりとした区分があるのかインドネシア人でも微妙ですが、ジャカルタのある中央ジャワでは、es dogerというのが一般的。ココナツミルクにピンク色のシロップを加えたものが好まれ、緑色と白とピンクのコントラストが初めて見ると、「何?」と不思議になります。
味は、とても甘く、ピンクシロップはストロベリーでもブルーベリーでもなく、どろっとして、例えるならば、胃の健診の際に飲むバリウムのような味。しかし、当のインドネシア人は大好きで、食事のあとのデザートなどとして、よく飲まれています。
(インドネシア在住 さいとうかずみ)
2 見た目は普通なエナジードリンク「Hemaviton」(インドネシア)
インドネシアでは、昔よりジャムーというハーブを使った(煎じた)飲み物を薬のようにして飲まれてきました。漢方のようなもので即効性はありませんが、症状がある時に続けて飲むことで回復に向かうとされ、今でもジャムーを服用する人もいます。そんな背景からか、インドネシアには病気になる前に防ぐサプリメントや強壮剤のようなものが多数売られています。
中でもこのHemavitonは長いこと人々に愛されてきた独自のドリンク剤。タウリン、高麗人参、ビタミンなどを一度に摂ることができます。しかしオロナミンC的な味に親しんでいる日本人やredbullを飲んできた外国人からすると、このHemavitonは高麗人参の味が強烈。しゅわっとした炭酸の爽快感はなく、やや「ねっとり」した「強烈な」濃い味で、慣れないうちは1本飲み切るのになかなか時間がかかります。
でもインドネシアではコンビニには必ずおいてあり、値段も約50円と安いため、(ちょっと力が出ないな)などと感じたときに気軽に飲むことができます。
(さいとうかずみ・インドネシア在住)
3 出どころがなんとも香ばしい「Kopi luwak(ルアークコーヒー)」(インドネシア)
インドネシアはコーヒーが有名ですが、その中でも「ルアークコーヒー」は最高級のコーヒー。ルアークコーヒーはジャコウネコにコーヒーの生の実を食べさせて、フンからその豆を回収し、洗って、乾燥させ、焙煎したコーヒーです。
コーヒーの種である豆は、ジャコウネコのお腹を通過することで特別な発酵をすすめ、他にはないかぐわしい味と香りがつくとのこと。インドネシアにはその名も「kopi luwak」というレストランもあり、1杯約800円程度で本場ルアークコーヒーを飲むこともできます(ちなみに日本の一流ホテルで飲むと、1杯数千円!)。
(インドネシア在住 さいとうかずみ)
4 ママ嫌、パパ嫌、みんな嫌な「パパイヤの葉のジュース」(マレーシア)
実は、わたしはこのジュースを飲んだことがありません。というのは、パパイヤの葉のジュースは市販されておらず、自分でジュースを作った人によると、とても青臭い上に、むかむかするほど苦いと聞いたからです。
では、なんのためにそんなものを飲むかというと、治療のため。インドの伝統医療アーユルヴェーダで、デング熱やがんの治療に処方するといい、インド系の住民が暮らすマレーシアでもよく知られた民間療法なのだそうです。
蚊が媒介するデング熱は、マレーシアでは年間十万人以上がかかる病気です。珍しい病気ではありませんが、ウイルスが血小板を破壊してしまうため、子どもやお年寄りなど抵抗力が弱い人や、劇症の場合は、命にかかわることもあります。治療は、病院に入院して解熱剤を投与しながら経過を見守ることになり、特効薬もまだないため、薬効は証明されていない民間療法に頼る人もいるわけです。
作り方は、新鮮なパパイヤの葉を選び、硬い茎を除いて水と一緒にジューサーにかけるとできる、どろどろした緑色の液体を一日に何度か飲むだけ。
……と書くと、ひどく簡単なようですが、一口飲むのもやっとというほど苦いので、数日続けて飲むのはかなりの苦行のようです。
パパイヤは、マレーシアでもよく出回っているフルーツです。普通は実を果物として食べますが、果実や葉をとった後に出る白い乳液には、たんぱく質を分解するパパイン酵素や、椎間板ヘルニアの治療に使われるキモパパインも含まれるので、製薬原料にもなっている、とのこと(『東南アジア市場図鑑 [植物篇]』弘文堂 参照)。
地元では、パパイヤの葉から抽出した成分の錠剤やカプセル、お茶なども売っています。
(森純・マレーシア在住)
5 発酵臭とケモノ臭の最強ハーモニー「ドュエ・チャル」(トルクメニスタン)
トルクメニスタンの伝統的な飲み物です。ラクダの乳を発酵させたものに水を混ぜた、乳製品。発酵しているための酸っぱい香りと、ラクダの乳独特の獣臭さがうっすら香り、日本人の多くには苦手と思われる味わいです。が、慣れると暑い時期に肉料理と一緒に欲しくなります。
(トルクメニスタン在住 ギュルソユ慈)
お酢のパワーで夏バテ解消! 「ピクルスの漬け汁」(トルコ)
ピクルスをよそった小鉢に残った汁をちょっと飲む……というようなものではなく、ピクルスの漬け汁を立派なドリンクとして販売しています。屋台でそれを専用に売っていたり、ピクルス屋さんで汁だけ注文してカウンターでカップで飲むことができます。
初めて飲むときは喉が焼けそうに感じますが、野菜の汁とお酢のパワーで夏バテに効果があり、慣れてくると体が欲するようになってきます。
(トルコ元在住 ギュルソユ慈)
6 どす黒いドリンク「シャルガム・スユ(ビーツと黒人参のジュース)」(トルコ)
ビーツの一種シャルガムと辛い黒人参の汁を塩と混ぜ、発酵させた、どす黒い紫色をしたドリンク。辛いものと辛くないものがあり、辛いものは唐辛子のピクルスの汁を加えてあります。これも喉が焼けるように強い味ですが、慣れると病みつきになります。ケバブ料理と一緒に食べるのが合うとされています。
(トルコ元在住 ギュルソユ慈)
7 キビの甘酒「ボザ」(トルコ)
まさにトルコの甘酒。キビなどの穀類を発酵させてできた、白くドロッとした少し甘い飲み物です。まさに食感も味も、そして栄養やビタミン満点で子供や妊婦さんにもオススメなところまで甘酒に似ています。お好みでシナモンをふりかけて飲むのがトルコ流。
(トルコ元在住 ギュルソユ慈)
8 トロッと甘い「サーレップ」(トルコ)
トルコの「伸びるアイス」は知っている方が多いと思いますが、サーレップは伸びるアイスの原料である蘭の根から作った粉末(サーレップ)を使った暖かい飲み物です。トルコではスイーツ屋さんで、夏のアイスの時期が終わると提供され始める、冬の風物詩的な存在です。
少しトロッとして甘く、ミルキーな味わいで、シナモンをふって頂きます。原料の蘭は地中海地域でしか生息しない希少な品種で、その根の粉は「金と同等」と言われるほど高価なため、現在出回っている伸びるアイスや飲み物のサーレップは、実はほとんど人口の香料で作られています。
(トルコ元在住 ギュルソユ慈)
次はヨーロッパに飛んで、オーストリアからのネタです。
9 アルコール度80%の国産ラム「シュトロー 80」(オーストリア)
Stroh社のアルコール度数80%のラム酒は、1900年のパリ万博で金賞を受賞した歴史と伝統あるお酒です。実際にそのまま飲むと、薬のような味がして飲めたものではありませんが、クリスマスの時期に、プンチュ(蒸留酒、スパイス、砂糖などが入った甘く温かいお酒)の材料として活躍するほか、ケーキの風味づけや、フルーツを漬ける際に使われます。
80%の強さのアルコールは、火を近づけると炎が燃え上がります。その青白い炎を楽しむための、特別なクリスマスパーティーもあるんですよ。(←次項のFeuerzangenbowleに詳細あり)
(オーストリア在住・ひょろ)
10燃えるお砂糖「フォイヤーツァンゲンボウレ」(オーストリア)
フォイヤーツァンゲンボウレは、クリスマスパーティーの主役とも言える飲み物です。
友人や家族が集まり、蒸留酒、スパイス、砂糖などが入った甘く温かいお酒「プンチュ」が煮え立つ鍋を囲んでクリスマスパーティーをするのが、オーストリア人の大切な時間。そのプンチュ鍋に彩りを添えるのが、「アルコール度数80%のラム酒に浸した砂糖の塊」です。
このラム入り固形砂糖を鍋の上にセットして火を点けると、神秘的な青い炎が燃え上がり、パーティーは大盛り上がりです。
下の鍋のプンチュには、ラムの風味だけでなく、燃えた砂糖=キャラメルの香ばしさが加わり、独特の味わいは格別です。
(オーストリア在住・ひょろ)
11 ワインの発酵途中を楽しむ「シュトルム」(オーストリア)
シュトルムとは、ぶどうジュースがワインになる途中のドリンクです。発酵中ですので発泡していて、アルコールも入っていますが、ぶどうジュースのように甘みがあり、「アルコール入りぶどうジュース」といった味わいです。
発酵段階によって味や発泡具合、アルコール度数も少しずつ異なり、ジュースに近いものからワインに近いものまでいろいろです。まさに生きているドリンクですね。
この飲み物は、9月から10月にかけてのぶどう収穫からワイン醸造完了までの季節限定モノ。オーストリア人はこぞってワイン居酒屋に出かけ、ぶどう畑を見ながらシュトルムを楽しみます。
白ワインが有名なオーストリアですが、赤やロゼのシュトルムも運が良ければ出会うことができますよ。
(オーストリア在住・ひょろ)
12 濃厚贅沢な「マリア・テレジア・コーヒー」(オーストリア)
コーヒーとカフェの街ウィーンには、ハプスブルク帝国の「女帝」マリア・テレジアの名を冠したコーヒーがあります。
隣国イタリア仕込みのダブルエスプレッソの上には、濃厚なクリームがたっぷり。さらにその上から、甘みと酸味がきいたオレンジリキュールをかけた、大人のための贅沢なコーヒーです。
大きなグラスに入ってきますので、見栄えもよく、濃いコーヒーと強いリキュールは、寒い冬の冷え切った体を温めすぎるほど温めてくれます。
(オーストリア在住・ひょろ)
13 左党のための「ビールのアドベントカレンダー」(オーストリア)
クリスマス前になると、チョコレートやお菓子だけでなく、変わったアドベントカレンダーが店頭に並ぶオーストリア。そんな中でも、毎日違うビールが楽しめる「ビールアドベントカレンダー」はお父さんたちに人気です。
ビールメーカーが発売しているものは、通常のビールの他に、黒ビール、ハーフ&ハーフ、ヴァイツェンビール、アルコール度高めのボックビール、ラードラー(ビールと炭酸飲料を混ぜたもの)などの種類が楽しめるほか、ビールグラスやロゴ入りグッズが出てくる日もあります。
クリスマスが終わってほしくないくらいですね。
(オーストリア在住・ひょろ)
14 モーツァルトを聴かせてつくる「モーツァルトリカー」(オーストリア)
モーツァルトリカーは、オーストリアが生んだ神童モーツァルトの名を冠した、チョコレート味のアルコール飲料です。
ザルツブルクにある工場では、製造過程でこのドリンクにモーツァルトの音楽を聞かせているそうですよ。
ボトル色によって味が異なり、チョコレートクリーム、ホワイトチョコレートクリーム、ブラックダークチョコ、チョコレート蒸留酒などがあります。
(オーストリア在住・ひょろ)
次はヨーロッパから飛んでオセアニアの「オーストラリア」です。
15 この毒々しさは何である? 「コーディアル」(オーストラリア)
“コーディアル”とは? とネット検索すると、「身体にいい健康的な飲み物」という情報ばかりが引っかかってきます。
本来のコーディアルとは薬草などの成分がブレンドされた飲み物のことで、薬用飲料やリキュールなどのアルコール飲料を示すことが多いそうです。
しかしここオーストラリアでは、一般的に子どものいる家庭で「コーディアル」と言った場合には、人工的な色のついた甘味料たっぷりの液体のことを指します。日本のかき氷のシロップのような原液がプラスチックのボトルで売られていて、それを水で希釈して飲むのです。
薄める前のコーディアルはとにかく毒々しく、例えば緑色をした定番の「ライム」のそれは、どこからどう見てもその昔日本のあちこちで見かけた液体手洗い用洗剤のよう…。
一応「身体にはあまりよくなさそう」という認識はあるのか、小学校の催しや誕生会などで子どもたちにふるまわれるコーディアルは、水を多めに使ってかなり薄めてあることが多いのです。
それはただの薄い色水といった風情で美味しくもなんともないのですが、親切な方がたまに「大人用」に濃いめに作ってくださることがあり、甘すぎる上に人工的な味と見た目に、何とも言えない複雑な気持ちになります。
なお、オーストラリアで販売されているコーディアルには、フルーツやハーブなど自然由来のものを使った、ガラス瓶入りの高級志向のものあります。
それらは大人が飲むことが多いように見受けられ、日本人の私から見ると、そういうものこそ子どもたちに飲ませたらいいのに……と思ってしまいます。
(オーストラリア在住 のぎた京)
16 レモン風味が快感! 「インカ・コーラ」(ペルー)
ペルーでもっとも人気の炭酸飲料といえば、なんと言っても「インカ・コーラ」。老若男女、これさえあればもうハッピー!というくらい愛されています。
そのあまりの売れ行きに、コカ・コーラ社がインカ・コーラの製造元であるリンドレイ社を買収してしまったほど。微炭酸で甘いレモン風味、日本人でも癖になる人続出です。
(原田慶子・ペルー在住)
17 紫色の正体は? 「チチャ・モラーダ」(ペルー)
ペルー原産の紫トウモロコシを煮出して作る「チチャ・モラーダ」は、ペルー伝統の飲み物。風味付けにパイナップルやりんご、シナモン、クローブなどを加え、仕上げにレモンをひと搾り。
ポリフェノールの一種であるアントシアンをたっぷり含むため、特に女性にオススメですが、市販のチチャ・モラーダには砂糖がたーっぷり入っているのが玉にキズ。美容効果を望むなら、自分で作ったほうがいいかも?
(原田慶子・ペルー在住)
18 スーパーフードならぬスーパージュース! 「キヌアジュース」「マカジュース」(ペルー)
栄養価満点のキヌアやマカを使った健康ドリンク。フルーツを煮だしたものにキヌアやマカを加えた庶民の飲み物で、栄養価は抜群。朝夕になるとシンプルなサンドイッチとこれらのジュースをセットで売る屋台が街角に登場するので、ぜひチャレンジしてみてください。
初めて飲むのにどこか懐かしい。そんな優しい味わいのドリンクです。
(原田慶子・ペルー在住)
19 不思議な組み合わせ「ミントティー with 茹でアーモンド」(リビア)
革命および内戦前のリビアに住んでいた時(2008~2011年)、かの地で初めて出合った飲み物があります。それは、ミントティー with 茹でアーモンドです。ミントティーといってもグリーンティーとのブレンドで、砂糖たっぷりで甘いお茶なのですが。そこに、あらかじめ茹でて皮も剥かれたアーモンドを食べながら飲みます。おやつ感覚で満足感もたっぷりです。
私はレストランで食後のミントティーを注文した時、お店のスタッフが「アーモンドも入れる?」と提案してくれたことで初めて出合いました。けれど思い返してみると、その店以外では飲んだことがありません。そして同じく北アフリカのモロッコやチュニジア、エジプトを旅行したときにカフェでお茶を沢山飲みましたが、アーモンド入りのお茶には出合ったことがありませんでした。
英語で検索するとチュニジアや他のアラブ圏でも一部存在することは確認できましたが、あまりメジャーなカフェメニューではないのが伝わってきます。もしかしたらカフェなどで飲むものでなく、家庭で贅沢に楽しむ飲み物なのかもしれないですね。
(元リビア在住 倉田直子)
以上、「世界の不思議なお菓子」でした。食指が動いたものはありましたでしょうか?
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日本から見たらビックリの世界各国の小学生の日々を、平均3ページほどの短さでてんこ盛りにしました。子どもたちが海外や国際社会に興味を持つきっかけになってくれればと願っています。
※昔子どもだったみなさまも、お楽しみいただけると思います!
(まとめ 柳沢有紀夫)
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