ライターのみなさん。特に海外在住ライターのみなさん。あなたはもっとスキルアップしたいですか? それとも今のままでいいですか? 前者の方はぜひこの記事を熟読してください。
こんにちは。海外書き人クラブお世話係の柳沢有紀夫です。
今までのべ500人ほどが海外書き人クラブに入会してきました。その中でグンと伸びて、自分の本を出せるようにまでなった人もいます。一方、ライターとしてはうまくいかなくて、退会・廃業した人もいます。その差はどこにあるのか。原稿のやりとりを繰り返しながらそばで見てきた私が、両者の違いからライターとしてのレベルアップに絶対必要なポイントを伝授します。
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1 書きあげた原稿を「幽体離脱」してチェックする
一つの原稿を一気に書き上げたとします。「ああ、終わった。ビールでも飲もう」という気持ちになるのはわかります。だけどそれは「終わり」ではありません。「始まり」なのです。ようやくスタート地点に立ったのです。
これから先、あなたには「推敲」という作業が待っています。つまり原稿の見直し兼書き直しですね。
この推敲には2つ、大きな意味があります。
1つめは「得意先に最高のものを納品する」ということ。言うまでもなくいいものが納品されれば得意先はうれしい。「次もあの人にお願いしよう」ということになります。
つまり原稿はあなたにとって最高のプレゼンテーションマテリアルであり、営業ツールなのです。
2つめは「推敲はスキルアップにつながる」ということ。前回の【ライターのレベルアップに絶対必要な4つのポイント】で「編集者に直していただいた原稿は宝物。文章読本などに挙げられている添削例のように赤の他人が書いたものではなく、あなたが心血注いだものだから」と書きましたが、それと同じです。自分で書いたものだからこそ、ピカピカに磨き上げる気にもなりますよね? ……いや、ならないという方は、この先は読んでも無駄です。
さて、この「推敲」作業をするときの注意点。それは「幽体離脱」することです。一般的な言葉だと「客観的に見ること」ですが、あまり臨場感がないので、私は「幽体離脱」という表現を使っています。
さきほど書いた通り、原稿はあなたが心血注いだもの。だけどその強い思い入れのまま推敲すると……「ああ、素晴らしい文章だ。完璧だ」と自画自賛で終わってしまいかねません。
一歩引いて、一生懸命頑張って書いたあなたの文章を審判する神の視線でチェックしてみてください。
大きなところでいえば、「このテーマで執筆依頼からずれていないか」「この話は読者を満足させるか」。細かいところなら、「てにをは」や「主述のずれ」「誤字脱字」「文章のリズム」などがあります。
意外とおろそかになりがちなのが、「この言葉は読者にわかるか」という視点でのチェックです。たとえば私も含めた海外在住ライターがやりがちなのは、「ピッキーなセレブのための、エクスクルーシブなエクステリア」といった表現。……今、この文章を客観的に読んでいるあなたは「外資系ごっこかよ」とか、「帰国子女ごっこかよ」とツッコミを入れたくなったと思いますが、いざ自分が書いているときにはこんな「日本の読者には伝わりにくい言葉」を頻発させている可能性があります。
だから意識して「幽体離脱」してチェックする必要があるのです。
※今の「ピッキーなセレブのための、エクスクルーシブなエクステリア」という表現、外国語が好きなオシャレ志向の女性誌なりアリかもしれません。そうした読者ごと、媒体ごとの使い分けも必要です。
2 「お金を払っている人は誰か」を考える
「ライターは好きなことを好きなように書ける」と思ったら大間違いです。といっても「書きたくないものを書いている」という意味ではありません。書きたくないものを書いて、いい原稿などできません。それが「おもしろいなあ」なのか、逆にジャーナリスト系の人だと「これは許せない」なのかわかりませんが、いずれにせよ、興味を持ったことを書きます。
ただし、編集者が求める内容かつ形式で書く必要があります。ギャランティーを払ってくれているのは編集者なのですから。お金をくれる人を喜ばせる。それが仕事というものです。
そして編集者が求めているものとは、すなわち読者が求めているものだからです。彼らは常に読者の欲求を満たすことを考えています。そうしないと雑誌が売れなくなったり、ウェブのビューが減り、自分たちが生活できなくなるからです。
そもそも文章は誰のために書くのか。「自分のため」という人は、日記でも書いていてください。SNSでイタい自慢話に終始していてください。
「編集者とそのむこうにいる読者のことを考えられる」というのは、ライターにとって必須のスキルです。
3 「日本語」をアップデートする。浦島太郎にはならない。
これは特にわれわれ海外在住ライターが気をつけなければいけない点です。
【編集者が語る! 海外ライターが絶対注意すべき7ポイント】の回で大塚智美さんが「この前、日本に帰ったのはいつですか?」と書かれていますが、「この前、日本語を読んだのはいつですか?」と疑問に思うほどの文章に出くわすことすらときどきあります。
死語を平気でつかっていませんか?
それよりも多いのがまるで昭和の中期のような漢字の使い方をする人です。「漢字が多いほうが高尚に見える」と思われているのかもしれませんが、今は「読みやすさ」を重視して、漢字を極力開く時代です。もしもあなたが「勿論」「所謂」「貴方」「貴女」などという言葉を漢字で書いてきたら、編集者は一発で「ああ、この人は日本の文章を読んでいないか、日本の常識を気にしていないか、その両方かだ。いずれにせよ、プロ意識に欠ける人だなあ」と判断するはずです。「出来る」も避けたほうがいいし、「美味しい」も古い感じがします。
大衆小説でも実用書でもいいので、一度最近の本を「どんな漢字が開かれているのか」という視点からチェックしてみてください(純文学は作家のこだわりが前面に出るのであまりおすすめしません。「読みやすさ」が大切なラブストーリーがいいと思います)。
4 あなたのライターとしてのゴールはどこにあるのか?
自分のライターとしてのゴールを常に意識してください。きちんとした目標がある人は努力できます。ゴールを見据えている人はがんばりが利きます。
そのゴールは「最終ゴール」である必要はありません。ゲームでいえば「ステージクリア」みたいな話でいいのです。
私の場合、オーストラリアに移住してフリーランスのライターおよびジャーナリストとして食べていこうと決めたときの最初のゴールは「本を出す」でした。本好きだった私の子どものころからの夢は「本を書く人になる」だったので、まずそれをクリアしようと思ったのです。
約2年後にその目標を達成できたときに設定した次のゴールは「連続して本を出す」です。一冊だけ本を出して満足な人もいるでしょう。だけど私は、書きたいことがたくさんありました。それに子どものころから「本を書いた人」になりたかったのではなく、「本を書く人」になりたかったのです。継続的に。
2冊目の本は最初の本の3ヵ月後、3冊目はその5ヵ月後に出て、その後もいくつもの本が出ています。
その次に設定したゴールは……まあ、私の話を延々と書き連ねる必要はないのでやめておきます。
ただそのゴールをやみくもに目指せばいいというわけではありません。頭を使いましょう。たとえば私の最初の「本を出す」というゴールだったら、たとえコラムや記事の原稿を編集者にけちょんけちょんにけなされても「これも本を書くというゴールにたどりつくための修行」と思うことができます。その他に何が必要か。いろいろありますが、全部言ってもつまらない。ここでも「幽体離脱」をして考えてください。
お互い頑張りましょう! 次のゴールを目指して。
※今回の前編である
および
もぜひご覧ください。
【まとめ】
- 原稿を書きあげたら「幽体離脱」。客観的視線でチェックする
- お金を払っている編集者とその向こうにいる読者第一に考える
- 「日本語」をアップデートする。漢字は開く。死語は使わない。
- ライターとしてのゴールを定めれば努力もできるし、がんばりも利く
【文:海外書き人クラブ 柳沢有紀夫】
(海外20ヵ国のライターが力を合わせてできた本の告知が一番下にあります。ぜひご覧ください)
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